MagnifiqueDawn

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最近の記事

実存

入学当初には既に垣間見、結局は卒業間際にラスボスとして顕現した論理命題。 遍く現象を手掛かりに実存を洗い出そうとしたが、叶わず。 今思うに最も重要な概念は、その実存と現象の影を行き来する事象の点滅。 総て物事は出現と消滅を繰り返すという捉え難さ。 瞬きするような間隙に潜む小さなエントロピー。 #随筆

    • No.15 苦痛と悲哀と甘美の想い

      大学生の頃、美しさについて勉強していた夏がある。ノスタルジアという言葉を耳にするといつも、私は「美学」という講義を思い出す。 美学の巨匠である教授曰く、Nostalgiaとは17世紀においては病気と見做されるものであったという。 ギリシャ語のNests(故郷への帰還)とAlgos(痛み、悲しみ)の合成語であるNostalgia(独語)。 それは「帰郷痛」と訳され、芥川の短編でも綴られた。 ノスタルジアとは、現実の苦痛を前提とした想像上の甘美さ。 ノスタルジアとは、決して

      • No.14 花束

        『花束』2019年2月頃 僕の心にあなたの眼差しが泳ぐ。 僕の夢にあなたの眼差しが泳ぐ。 冷たい風が心地よくて、温かい雨が懐かしい。 あなたの語る山が雅で、あなたが待つ海の白さが美しい。 頬に照る夕日は艶やかで、その瞳にひかる宇宙が愛しい。 登りきった先の窓からは青い地球のかけらがのぞき、 振り返った踊り場には、命の始まりが静かに広がる。 あなたは朝早く起きるのが好きで、僕は朝に眠るのが好きだけど、 あなたの故郷に鳴くさえずりを聴くため、あなたと朝露のそばを歩きたい。 #

        • No.13 雨は歓んだ

          『雨は歓んだ』2017年10月頃 雨は歓んだ。繰り返し彩られる悦楽に。 手のひらで世界を転がす自分の器用な才覚に。 支配的に踊り子を糸で弾く実感に。 馨(かおり)と愛し愛される肉体の確かさに。 それからまるで唾液を幾度となく転がすように酩酊した。 世界にエゴイスティックな八角の花を撒き散らす中毒に。 鳥になって勝ち誇ったその絶景に。 #詩 #雨 #快楽 #優劣 #錯覚

          No.12 心の港

          随筆『心の港』2019年3月頃 パリに行って私がしたこと。 それは日常そのまま。街の音に耳を澄ませ、街角の風に身を寄せて、手元で新しい言葉、新しい物語を紡ぎ続ける。贅沢な過ごし方だねと言う。それでもパリを背にした日常の営みは、私の手を経由し、私の内部から初めて出会う彩りの数々を引き出していった。その言葉と物語を宝箱のように持ち帰り、情熱に滾るこの胸が復路の空からパリを慕ぶ。 ノートルダム大聖堂。ある日この下に座り込み、夙夜ペンを走らせた。中に入ることは無く夜は更けてしま

          No.12 心の港

          No.11 パープルアイ

          『パープルアイ』 瞳から時おり 紫の雫 希望に満ち溢れる 懐かしいプラネタリウム 大空に並ぶ青写真 絶望しかねない未来に 塗りつぶされる空想 2人が出会った日本橋 完熟した夢に飲み込まれ 一段飛ばしに火に入る若さ にぎった拳に詰め込まれた光 宇宙空間で引き裂かれるふたり 映写機との間で無限の往来を繰り返す心 夏の日に 互いのすべてを思い出す2人 おもちゃの地球に立ちあがる 夕日が差した日本橋 大蛇のように這い回る夜 逃げ惑う星々 2045年未来構想 宇宙の隅々へ架か

          No.11 パープルアイ

          No.10 夕陽のミザンセーヌ

          『夕陽のミザンセーヌ』 通学列車の窓の外 流れゆく景色の先に 夕陽の輝く海がある 美しい岬 美しい灯台 私の想像では 聖なる海にカモメはいない ただ弾けるピアノ音のように 空が鳴いている 砂浜に差す夕陽はどこか懐かしさに満ちている 安らぎとドラマティック 夕暮れになると私を誘う静かな世界 記憶の底で響くオルゴールのような存在様式 そんな憧憬よりも速い速度で 私をさらってゆく特急列車 夜の橋を渡る 摩天楼を浴びた私と鉄の重い響き 脳裏の景色を掻き消す乱暴なモダンジャズ

          No.10 夕陽のミザンセーヌ

          No.9 19歳の夏

          『19歳の夏』 雨が降る台北の街 息が詰まりそうな異国の午後に 僕たちは狭い部屋から外を眺める 燻んだ小さなビル群が曇天を支え 朱色のカーテンに彩られたこの窓辺で 静かな映画の音だけが二人の緊張を代弁していた 雨の止んだ17時 出掛けたいと言ってリップを塗った彼女につられ じっとり汗をかくような 八月の二週目 日の沈んだ小さな繁華街 アイアンブルーの夜風に吹かれて 僕たちは 若い胸の高鳴りに 耐えきれず 恥じらわず 全力疾走で 初恋のようにアンバランスなアクセルで

          No.9 19歳の夏

          No.8 甘い葉の記憶

          『甘い葉の記憶』 美しさが問題視された昼下がり 彼女は妖しく髪を掻き上げ 大胆不敵に二度回った 私は8年前の駅のホームに降り立ち 出会った日の夕景に手を翳す オレンジ色の泡となって消えていく彼女 予告の無い南風が 私から涙を奪う #詩

          No.8 甘い葉の記憶

          No.7 神でもない

          同じ空を飛ぶのはいいけれど、お互いの翼を捕えてはならない。 浮気について 浮気しないことを相手に求めることって、すごく「甘え」な気がしています。 恋人って、自分の保護者じゃないし、神様でもなければ牧師さまでもない。 ただ自分の人生を、一番高い頻度で支えてくれる人だと思う。 それでもただの一人の人間だし、私と合同ではない自分自身の人生を持った、一人の人。 「恋人として寄り添い合うもの同士は、全生涯を以って、自分のためには相手を傷つけてはならない」 なんて、ちょっと禁

          No.7 神でもない

          No.6 死について

          『死について』2019年9月 眠りと死は似ている だから夢から覚めたときは少し悲しい まだ人生の途中だったね この心地よさが死ではなく 小さな眠りだったなんて ひとつぶの涙 霞んで遠ざかる さっきまでの場所 現実的にはアンバランスな夜空 また安らかな時間に戻るまで 暗い部屋を照らして 一杯の水で喉を潤して 死のときまでは #詩 #死

          No.6 死について

          No.5 あなたを好きになることが

          『あなたを好きになることが』2019年春頃 あなたを好きになることが 桜並木の下で 新しい家にときめき 新しい風にときめき 新しい声にときめくことであるならば 私はあなたを想って 花になりたい あなたを好きになることが 青い潮風の前で 大きな船におどろき 大きな雲におどろき 大きな手におどろくことであるならば 私はあなたを追って 鳥になりたい あなたを好きになることが 金木犀の香の中で 暖かい詩にやすらぎ 暖かい光にやすらぎ 暖かい瞳にやすらぐことであるならば 私は

          No.5 あなたを好きになることが

          No.4 核融合、自己組織化する宇宙

          人間と地球と宇宙には似ている部分があるね。 そりゃ地球だって人間だって、宇宙の一要素なんだもの。 中学か高校くらいの時から、ときどき「自分は何のために生まれてきたのか」を考えて、よく悲しくなった。ひと一人は、どれくらい瑣末な存在なのだろう?私の人生にはどれほどの意味があるのだろう? そんな卑下な問いが、自分を何かへの使命感や憧れに駆り立てた。いや、みんなそうなんじゃないかな。意味のある何者かでありたいんじゃないかな。 そんな想いへの祈りと支えのつもりで、私は詩を書くし、映

          No.4 核融合、自己組織化する宇宙

          No.3 モンタージュ

          夏の到来を鐘で知らせるような、澄み渡った空。カフェの窓際に座って読書をしていた。PM06:30。 葉の陰から差しこむ夕日に突然、私は既に失った碧き少年時代の彩りをみた。悪気もないその燦然とした夕陽に透かされ、私は詩を綴った。 『終息』 ありとあらゆる詠嘆をも枯れた荒野にて 曇天の雨を鏡に 失った良心の数をかぞえる 葉の陰から覗く少年時代は既に いとも冷厳に打ち砕かれた 肩を横切る鳥々の賛歌は 絶望のなかに凍結され 惨烈に刻印された 春の好奇心 夏の戸惑い 秋の慈しみ

          No.3 モンタージュ

          No.2 せかいをのぞく

          10歳の誕生日には顕微鏡を、 11歳の誕生日には天体望遠鏡を、 12歳の誕生日にはカメラをもらった。 誕生日のプレゼントは予算内で希望を伝えておける。本格的なカメラを欲しがった私は両親に価格交渉をする。 (何と可愛気の無い子供だ!) しかし12歳の子供に大きな予算は与えられない。 どうしてもカメラが欲しい私は 「27枚撮りの写ルンですを12個ください」という。 そうして12歳のわたしは、せかいを "324回" きりとる力を得た。 学校には持っていけないので、1年かけて家

          No.2 せかいをのぞく

          No.1 わたしのおもちゃ箱へ

          7月14日深夜 書きたいことは山ほど溢れる。覚書や詩、そして不完全な戯曲の多くは書き貯めていても光浴びず。あとはSNSで日常の感動や、作品批評、社会批評を無い頭なりに表現していたかも。 正直とても無造作で無意識的で粗雑な癖のようだった。それは見つけた蝶を虫籠に入れ続けるように。それとも見つけた宝物をおもちゃ箱に投げ入れていくように。 ところで、それをなんとなくnoteにしてみようかなと思った。しかしこれが難しいな。文章の性っていうのは読者次第なところがあるから。 愛

          No.1 わたしのおもちゃ箱へ