No.10 夕陽のミザンセーヌ

『夕陽のミザンセーヌ』

通学列車の窓の外 流れゆく景色の先に
夕陽の輝く海がある
美しい岬 美しい灯台

私の想像では 聖なる海にカモメはいない
ただ弾けるピアノ音のように 空が鳴いている
砂浜に差す夕陽はどこか懐かしさに満ちている

安らぎとドラマティック
夕暮れになると私を誘う静かな世界
記憶の底で響くオルゴールのような存在様式

そんな憧憬よりも速い速度で
私をさらってゆく特急列車
夜の橋を渡る 摩天楼を浴びた私と鉄の重い響き

脳裏の景色を掻き消す乱暴なモダンジャズ
停車駅から流れ込む栄光やプライドの交響曲

愛しい瞳のように語りかけてくれた壮大な海
水平線に溶けていく言葉のダイアモンド

家なき私の帰る場所
世界の端ばかりを歩いて来た日に辿りつく岬
鬱屈とした世界で失った碧さを探し回る人々
風と美しさ、心の海、夕暮れのミザンセーヌ


#詩 #海 #夕陽 #記憶 #時間 #空間

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?