![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/13151858/rectangle_large_type_2_60b5845aa421a5155d2d5b953facaea0.jpeg?width=1200)
No.3 モンタージュ
夏の到来を鐘で知らせるような、澄み渡った空。カフェの窓際に座って読書をしていた。PM06:30。
葉の陰から差しこむ夕日に突然、私は既に失った碧き少年時代の彩りをみた。悪気もないその燦然とした夕陽に透かされ、私は詩を綴った。
『終息』
ありとあらゆる詠嘆をも枯れた荒野にて
曇天の雨を鏡に 失った良心の数をかぞえる
葉の陰から覗く少年時代は既に いとも冷厳に打ち砕かれた
肩を横切る鳥々の賛歌は 絶望のなかに凍結され 惨烈に刻印された
春の好奇心 夏の戸惑い 秋の慈しみ 冬の慟哭
真夜中に翔ける憧憬 報われぬ邂逅 モノクロの夜明け
あなたの手が届かない
あなたの声が届かない
父の名前が分からない
母の顔が分からない
おわり
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?