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【BL二次小説】 可愛いヒト②


今「まだ頭がクラクラしてます」



映画鑑賞後、荒北と今泉はハンバーガーショップで食事をしていた。


荒「すげェ迫力だったろ」

荒北はご機嫌だ。



今「映画というより、アトラクションでしたね。遊園地のシーンでは本当にジェットコースターに乗ってるみたいに椅子が傾くし。大砲の音は肋骨に直に響くし……」


今泉はベプシを一口飲んで、瞳を輝かせて言った。


今「すごく……すごく面白かったです!」


荒「そォか」

荒北はニカッと笑った。


今「!」



荒北さん。

このヒト……。

こんな無邪気な笑顔、するんだ……。



荒「オレぁ普段はアニメなんか観ねェんだけどヨ。これは昔の実在の戦車がリアルに活躍するし、内容がめちゃくちゃ硬派なンだよな」

荒北がダブルチーズバーガーを頬張りながら語る。


今「ええ!全然萌えアニメなんかじゃありませんでした!緻密な戦略性スポ根です!」


今泉は拳を握りしめ、まだ感動が冷めていないようだ。


荒「わかってるじゃナァイ今泉チャン。そう、これはスポ根映画だ」


今「オレ……、もう一度観たいって思いました!」


荒「へェ」

荒北はそれを聞いて、頬杖をつき微笑んだ。



荒「嬉しいなァ。今泉チャン誘ってホント良かったァ」



── ドッキン! ──



今泉は荒北のその笑顔を見て、さっきのアトラクションのように胸に衝撃を受けた。

まだ映画の余韻が残っているのだろうか。

いやしかし、さっきは肋骨に響いたが、今のはもっと胸の奥だった ──。


今泉は自分の顔がどんどん紅潮していっていることに気付いていない。



荒北さん……。

やっぱりこのヒトは、全然怖くなんかない。

こんな面白い作品を教えてくれたし、映画も食事も奢ってくれたし……。



荒「メカがさァ、男の子心をくすぐるって言うかさァ、米軍のスーパーギャラクシーなんかさァ……」



映画について饒舌に語る荒北を、今泉はポーッとなって見つめ、呟いた。



今「可愛い……」



荒「エ?」
今「はっ!」

今泉は慌てて口を手で押さえた。



荒「可愛い?スーパーギャラクシーが?」

今「あ、いえその……」


荒「……まァ、見ようによっちゃア可愛いとも言えるかなァ。ぽってりしてるしなァ」



オレは!

何を言ってるんだ!

2歳も年上のヒトに!

可愛いだなんて!

失礼じゃないか!


混乱する今泉。





今「ご馳走さまっした!」


食事を終え、ハンバーガーショップを出た所で今泉は90度の角度で腰を曲げ荒北に礼を言った。


荒「どーいたしましてェ。ンじゃ、またなァ今泉チャン」


手を振りながら別れを告げる荒北。


今「荒北さん!」

荒「ン?」



思わず呼び止めてしまった今泉。

別れが名残惜しい。



今「……今日は、楽しかったです!」



荒北はニッと白い歯を見せて笑った。


荒「オレもだヨ」



手を挙げて背を向け、エスカレーターを降りて行く荒北。


今「……」


今泉は去って行く荒北の後ろ姿を、上階からいつまでもいつまでも見つめていた。




荒北さん……。

次は、次はいつ会えるんだろう。

箱根は遠い。

次のレースはいつだったっけ……。



こんな気持ちになるのは生まれて初めてだった。

友達の少ない今泉だが、友達とは違う感情を確かに実感していた ──。




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