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映画「過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家・森山大道」監督日記㉘ ~最終回「写真とは、想い出です」
撮影が終わる、ということ2018年の正月から始まった撮影は
2019年の正月に終わりました。
ドキュメンタリーの撮影とは不思議なもので
ある時、「よし、これで撮影終了だ」と思う時が訪れるのです。
それは何も特別なイベントや出来事を撮り終えた瞬間ではなく、
ある時、何の脈絡もなく監督(撮影者)の頭の中で
「はい、カット、OK!」と声が響くのです。
それは、例えば画家が絵を描き上げるとき
「よし、これ
映画「過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家・森山大道」監督日記㉖ ~長者ケ崎に行ってみませんか?
一卵性双生児…大道さんと中平さん中平卓馬。大道さんの”魂の聖域”。
大道さんと中平さんは
「一卵性双生児」とからかわれるほど
いつも一緒でした。
しかし中平さんはある時病に倒れ、
それまでの記憶と言葉をすべて失ってしまいました。
記憶を失ってからの中平さんは
大道さんのいる場所に出没しては
アポロキャップを前後逆にかぶり、
首からカメラをぶら下げて
ニコニコとしていたそうです。
森山大道さんと過ご
映画「過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家・森山大道」監督日記㉔ ~「今現在の森山大道」を描くこと
ドキュメンタリーの定石からの逸脱「にっぽん劇場写真帖」の一点一点を
照合検証し、再構築していく。
そんないわば”森山大道解体計画”は、
大道さんの深い深いところに
立ち入っていくことになりました。
そしてついには大道さんの”魂の聖域”にまで
足を踏み入れるようになっていきました。
僕は興奮していました。
この映画は「写真家の記録映画」ではなく
「写真家の魂の物語」になるに違いない。
僕はそう確
映画「過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家・森山大道」監督日記⑲ ~「にっぽん劇場写真帖」復活計画
構成なんか作らないぞ!はいいけれど…あえて構成を作らずに、
大道さんをひたすら記録し続ける。
事前に構成台本を作ってしまっては
それ以上の映画にはならない。
作り手の想像を超えるドキュメンタリーにはならない。
だから黙々と淡々と記録していこう。
記録の先に見えてくるものに
じっと目を凝らし、
耳を澄ましてみよう。
これから起こる物語の微かな予兆を
決して見逃さないよう
感覚を研ぎ澄ましておこう。
映画「過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家・森山大道」監督日記⑱ ~テーマやコンセプトを捨てること
大都会を徘徊する男二人森山大道さんと僕。
二人だけの映画撮影、
マンツーマンの収録が続きました。淡々と、黙々と。
撮影がスタートした当初、スナップ中の大道さんは
「あの…これ、なんか喋った方がいいですか?」
と僕と映画のことを気遣って言ってくれました。
「いえ、何も喋らなくても大丈夫です」と僕。
すると大道さんはホッとしたように笑うのです。
「そうだよね、スナップ中、普通は喋んないもんね。
映画「過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家・森山大道」監督日記⑯ ~録画ボタンをいつ押すかという問題
電源は常時ON!しかし大道さんの常時スナップ臨戦態勢に備えるために、
僕のムービーカメラも常時電源ON。
あとは録画ボタンをポンと押しさえすれば
いつでも大道さんのスナップを収録できます。
もう3~4秒かかるカメラの立ち上げに
焦ることもイライラすることありません。
大道さんのスナップワークに
こちらのムービーワークが間に合わない
ということも理論上はなくなりました。
常時スタンバイでどんどんバッ
映画「過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家・森山大道」監督日記⑮ ~大発見⁉森山大道は何とカメラの…
スナップワークに追いつかない!森山大道さんのスナップに同行させていただき
ムービーカメラを回し始めた僕でしたが…。
早くも壁にぶち当たっていました。
大道さんのスナップワークに
僕のムービーワークが追いつかないのです。
コンパクトカメラをプラプラさせながら
悠然と街を歩く大道さん。
何かに反応し、
そこにスーッと近づいていきます。
「お、きたきた」と
ビデオカメラを起動させる僕。
しかし、僕のカ
映画「過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家・森山大道」監督日記⑬ ~21世紀の森山大道はチーターです
2018年の森山大道、変わらないことと変わったこと僕が初めて
森山大道さんのスナップ現場を目撃して
はや20数年。
2018年正月、
大道さんの制作風景を
20数年ぶりに再び見つめ撮影しながら
僕は猛烈に感動していました。
この人はどうしてこんなに変わらないんだろう。
普通これだけ時間が経っていれば
容貌風貌はもちろん、
撮るモチーフも撮る内容も、
スタイルもメソッドも、
少しは変わっていそうなも
映画「過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家・森山大道」監督日記⑫ ~1995年の森山大道スナップ現場
まるでタイムスリップ2018年1月。
20数年ぶりに目の当たりにする
大道さんのスナップワーク。
それはかつて僕が目撃したものと
まったく変わっていませんでした。
歩いてパシャリ、
立ち止まってパシャリ、
また歩きだしてパシャリ。
1995年に僕が目撃したのとまったく同じ。
まるで…
タイムスリップしてしまったかのようです。
1995年の森山大道1995年秋。
初対面の大道さんに
「あなたの
映画「過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家・森山大道」監督日記⑪ ~ふたりだけの静かなクランクイン
静かなクラインクイン2018年1月。
いよいよ映画の撮影が始まりました。
普通、ドラマや映画が始まる時は
撮影安全や大ヒットを祈願して
スタッフ・出演者一同で神社にお参りしたり、
それぞれスピーチやご挨拶を披露したりと、
何かと大々的なセレモニーが
あったりするものですが…
本作のクランクインは
僕と大道さんだけのひっそりとしたものでした。
実に静かな静かな撮影スタートだったのです。
それはこん
映画「過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家・森山大道」監督日記⑨ ~森山大道、かく語りき
一人で撮るならいいですよ「森山大道さんの映画を作りたい」
ダメ元でお願いをする僕に対して、
大道さんは
いたずらっ子のような顔をして言うのです。
「大所帯の撮影隊がくっついてくるなら
はっきりお断りです。
…でも、あなたが、
自分一人で撮るならいいですよ」
ニヤッと笑う大道さんの顔を見つめて、
僕は呆気に取られていました。
はい?
僕は、プロのカメラマンではなく
演出家でありプロデューサーで