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変わりゆく街、そのままの記憶〜地元札幌ひとり旅日記・前編

夫の7連休が決まったのは2ヶ月ほど前のことだった。
息子(小3)はまだ夏休みに入る前の7月上旬。

学校あるから家族旅行も無理だし、中途半端な時期だなあ。なんかもったいな。


いろいろ考えたのち
私はダメ元で聞いてみた。

「ひとりで札幌帰ってもいい?」



家族(実家)といろいろあり、もう2年半地元に帰っていなかった。

上京してからこれまで、多くて年4回、最低でも夏と年末の2回は帰郷していたくらい地元ラブな自分にとって、2年半も帰られない状況はもう限界だった。

ふとした瞬間に
「札幌帰りたいよーーー!うわぁあああ!!」って大声を出して暴れたくなるくらいに。(暴れてはいない)

ずっとタイミングを見計らっていたけど、学童のお迎えもあるし、夫が休みじゃないと私はひとりになれない。たぶん、今がそのときかもしれない!



「ひとりで札幌帰ってもいい?」

「いいよ」

あっさりOKをもらい、決まってしまったひとり帰郷(ひとり旅)。


すっかり何をやるにもどこに行くにもこどもを優先する生活に慣れてきた頃、
"自分が"会いたい人に会うために、やりたいことをやるために、ひとりで札幌に帰る。

ひとりで帰るからには最安で行きたかったから、LCCのサマーセールで航空券を手配し、ホテルは土日だったからか想像以上に高く、結局ゲストハウスのようなドミトリーのホテルを予約した。去年できたばかりの綺麗なホテルだ。

36歳(子持ち)が、ドミトリーに泊まるって。遅咲きバックパッカーか。
でも実は憧れがあったから、ちょっと夢が叶って嬉しい。

そんなこんなで、あっという間にその日を迎えた。


7月某日

息子と夫にバイバイして、ひとり成田空港へ向かう。息子はママと離れても平気なタイプなので1ミリも寂しがる様子はないし、むしろなんかふたりとも心なしか嬉しそうだ。(気のせいであってくれ)

なにこれ!京成成田スカイアクセス線の車内が人生ゲーム仕様になってる。壁にはでっかいマスが。なんだかワクワクする!


peachで自動チェックインを済ませ、まだ時間があるのでお昼ごはんを食べようと国際線ターミナルのレストラン街へ。

スーツケースをカートに積み上げた外国人がたくさんいた。免税店を通ったときのようなきつめの香水の香りが鼻を抜ける。懐かしい。海外のにおいだ。

何を食べようかとウロウロしているうちに、あれよあれよと時間が経ち、どこも結構並んでいたのでもうマックでいいや!と少し離れたマックへ向かうとマックが一番混んでいた。みんなマック好きだね。やめよう。

ただ時間をかけて国際線ターミナルをうろついただけの人になってしまった。

お昼ごはんは売店でなんとかしようと諦め、国内線ターミナルへ戻り、とりあえず保安検査場へ向かい、機内に持ち込む手荷物の重さチェックをする。

今回は預け荷物なしの安いプランにしたので、機内に持ち込む手荷物が7キロまでと買いてあった。

なので極力最小限の荷物にし、圧縮袋でギュウギュウにしてボストンバッグに詰めてきた。
友達へのお土産ももちろん事前に入れてきた。

朝体重計で測ったときは6キロちょっとだったので大丈夫。

すると、「そちらのトートバッグもお乗せください」

うん?この普段使ってるやつ…?あ、手荷物の合計…ってコト?

盲点だった。
普段荷物を預けないなんてことないから、慣れてなかった。

えっこれ大丈夫?

ふたつ乗せると、測定器には8.7kgの文字。
時が止まった—————

「これだとオーバーしているので、恐れ入りますが預けていただけますか?もしお持ち込み希望の場合は、7.9kgまでであれば大丈夫なのであと800gほど減らしていただければ」

それならあと800gなんとかしてみせます。

減らしてみてます手荷物を。
通ってみせますセキュリティ。(語呂がいいな)

まず、飲みかけのペットボトルのお水があったのでそれを真っ先に取り出す。さようなら。

8.3kg。

使いかけの安い日焼け止めもまた買えばいい。さようなら。

8.2kg。

あと少しだけどもうこれ以上捨てられるものはないよ、おしまいか?と思っていたところ、哀れに思ったのかスタッフさんが
「お財布やスマホはポケットに入れてもOKです」と助け舟を出してくれた。

本当に!?

ラッキーなことに履いてるパンツには小さいながらにポケットがあった。
そこにスマホとお財布を突っ込んだ。
いや、お財布に関しては全然入る大きさじゃないので、かろうじて4分の1入ってるかな?というバランスだった。積丹の岩くらい絶妙なバランス。

写真はじゃらん様より拝借


ついでにしれっとお尻のポケットにキーケースを入れた。

7.9kg。

コングラチュレーション!!(拍手)

というわけで無事にゲートをくぐった。
旅はじまる前から汗かいたー。別にたいした金額じゃないんだけどね。
思いっきりオーバーしてたらちゃんと払うけどね。(強がりじゃない)


離れたところにあるPeachの搭乗口に到着し、小さな売店で駅弁を買おうと思ったら、売り切れ!Oh・・・

しょうがないのでチキン南蛮おにぎりと、その場で作ってくれるかけそばを頼んだ。

なんで焦りと暑さで汗ダーダーの中アツアツのかけそば頼んじゃったんだ。そういう気が狂った行動しちゃうのも、旅の醍醐味です。(そうですか?)

食べ終わると一息つく間もないまま、搭乗。

LCCはバスで機体まで行くことが多い


飛行機の座席は、通路側だった。
隣の人は長袖長ズボンにブランケットを膝にかけている。私の薄着とはえらい違い。先ほどのかけそばはこの人が食べるべきだったかもしれない。

車、バス、電車、飛行機・・・乗り物に乗ると麻酔銃を撃たれた毛利小五郎のようにすぐに寝てしまう私は、パラパラっと機内誌を読んだあと、気づいたら離陸前には既に眠りの小五郎になっていた。

ハッと目が覚めたら新千歳空港へ着陸していた。あれれ~?


預け荷物がないのでするっと到着ロビーを出ると、「久しぶりー!会いたかったー!」と抱き合っている人たちがいた。

「私もすぐにそうなります」と思いながら、ようこそ北海道への文字入り広告を横目に、すぐさま札幌行きのJRへと急いだ。

意外と広がってないICカードエリア


雨予報の札幌だったけど、ギリギリ曇天だった。
音楽から浸りたいタイプなので、MEGARYUのROOTSを聴きながら車窓からの街並みを見つめ、非常にエモい気持ちになった。

どれくらい経つだろうあれから
最後に帰り過ごした日から
走馬灯のように浮かび上がる日々
色褪せないで今も残る
誰にもある自分だけにとっての
懐かしい風景
ふと見たことあるような場所で
一人たたずんで
遠い目をして
戻せない時間の流れ感じながら
忘れそうだった
生まれ育ったあの町の香り思い出す

歌詞

途中、工場に描かれている「北ガス」のマークや「サッポロビール」の文字などにいちいちうわぁ〜〜と反応していたら、あっという間に40分が経っていた。

札幌駅に近づき降りる準備をしながら外を見ていると、エスタがあったところがぽっかりなくなっていて愕然とした。

妙に見通しの良い景色に「えっ・・・」と思わず声が出そうになる。


私の帰っていない2年半の間で4プラ、パセオ、エスタ、pivotなどがなくなったことは知っていたけど、実際目の当たりにしてさみしい気持ちがこみあげた。

時にはほっぺタウンのフルーツケーキファクトリーでケーキを買い、
時には学校帰りフレッシュネスでくっちゃべり、
時にはナムコでプリクラを撮り、
時には札幌ら~めん共和国でラーメンを食らったエスタ。

エスタのユニクロは1フロアの売り場面積が世界一だったらしい。今はどこが一位になったんだろう。


JRを降りて地下鉄南北線へ向かうと、激混みな上に浴衣の人がたくさんいた。なんだなんだ、お祭り?
あとから知ったけど、その日は真駒内の花火大会の日だったらしい。へぇ、それも私知らない。豊平川の花火大会しか知らずに育ちました。

地下鉄に乗ると、車内はギュウギュウに混んでいるのにぽっかり空いている空間があった。

ああそうだ思い出した。
札幌では優先席に誰も座らないんだった。

上京してびっくりしたことのうちのひとつが、
優先席に普通に人が座っている、ということだった。
すぐに慣れたけど、札幌にいた頃は“優先席は対象者以外は座らないもの、もし無視して座っている人がいたら白い目で見られる”という認識だった。

東京では対象者がいれば譲らなければいけないけど、普通に座ることもできるのは人が多いからかなと思っていたら、どうやら札幌のほうが珍しいようで。

調べてみたら優先席ではなく今は専用席と表記してあり、そのスタイルは全国で札幌だけらしい。知らなかった!

(さっきからちょいちょい札幌の小ネタ挟んでごめんなさい。進みます。)


今回のホテルは狸小路にあるので、大通駅で降りた。おなじみのヒロシにグッときた。定番待ち合わせスポット、あの頃のまま。

ヒロシ前

たかが2年半ぶりで浸りすぎでは?と思われるかもしれないけれど、私にとって2年半はすごくすごく長くて、何度も帰りたいと感傷的になっていたもんだから、いちいち浸るには十分なのだ。


ついでにヒロシの横にある喫茶店もそのままだった。一度も入ったことはないけれど。


今回泊まるのは狸小路のメガドンキからすぐそばのこちら。

HELIO HOSTEL SAPPORO

エリオホステル

一階はカフェと共用スペースになっており、誰でも利用可能。

ドミトリーだけどカードキーをかざさないとフロアにすら入れないのでセキュリティは安心。

(公式サイトより)

こんな感じで二段になっている。
私は下の段だった。
寝台列車みたいでワクワク!

小柄な私(154cm)ですら、立ち膝で頭がついちゃうかなってくらいの高さだったので、大きい人は注意かも。

荷物を置いて少し休憩したら、約束してた専門時代の友達に会いにダッシュ!


今日会う子は、去年出張で横浜に来てたときに会えたので約1年ぶり。
それでも、再会のときは「わーっ!!久しぶりーー!」と自然と抱き合ってしまう。嬉しさ爆発。

お店の予約時間まで1時間ほどあったので、それまで適当にお店に入って時間を潰すことに。

入れなければそのへんのベンチでもよかったし、喋れればどこでもよいと思ってたけど、無事入れたので一杯だけ乾杯。

大葉ゆかりレモンサワー
アボカドとサーモンのユッケ

予約していたお店でいっぱい食べたかったのでここは前菜ってことで。

ニュー花園という台湾のレトロな雰囲気を感じる屋台のようなお店だった。
一品ずつしか頼んでいないので良いか悪いかは判断できないけど、さくっと時間を過ごすのにはよかった。


向かう途中、近道だから!と抜けた道が狸小路市場というところだったんだけど、隠れ通路みたいでよかった。この右に少し見えてる「めんめ」というお店もその子のおすすめらしい。

そして今回すごーく楽しみにしていたお店はここ!!!

maze

友達が見つけてくれたんだけど、週末はおそらく予約必須。

和食をベースに世界の料理を融合させた、モダンな居酒屋。こちらも去年できたばかりらしい。

重厚感のあるドアを開けると、焼き場のまわりにLの字のカウンター。洒落とる!

北海道らしくハスカップサワーで乾杯。

お通しのとうきびの冷たいスープ

お通しからもう既においしくて感動していたら、
やってきた一品めでもうやられてしまった。

お刺身盛り合わせ

・真鯛昆布〆 みかんポン酢
・レモン〆鯖
・本鮪の炙り~海苔オリーブソース~

お魚が…全部おいしい…(涙)
しあわせすぎて、大事に大事に食べた。
感激してたら友達に「よかったねぇ」と言われた。

肉巻きエシャレット串

エシャレットがシャックシャク!
これめっちゃ好きだった。

牛肉と舞茸の土鍋ご飯

すごい量だったので、ふたりして「いやー多いなぁちょっとこれ、食べれるかな?!」って言ってたのに、気づいたら完食してた。するするいけた。残してしまったらもったいないなと思っていたのに。

まるでフリのようになってしまった。

ただ、このあとまだ何か頼もうと思ってたけどさすがに満腹で追加できなかった。米はお腹にくる。
気になるメニューがたくさんあったので、絶対にまた来たい。

使われてる器も素敵だなと思っていたら、やはりすごくこだわってるらしい。

フードメニュー見てみろ、飛ぶぞ(食う前に?!)

店員さんも気さくで良い人だった。ほどよく気さく。ちゃんと距離感をわかってくれるタイプの気さく。

最後に飲んだmazeジュース、何が入ってるのか聞いたのに忘れてしまったけどブレンドしているようで、飲んだことのない味でおいしかった。

口にするもの全部おいしいってもうどういうこと。


ごちそうさまでした。

お店を出ると、時刻は22:30。
もう遅いというのに、夜のすすきの散歩に付き合ってくれた。

NIKKAの看板のあるこの風景を見ると、札幌だ!っとテンション上がるようになってしまったのはきっとここを離れたから。

住んでいた頃なんてただの景色だったのに。

大きな交差点で、ストリートミュージシャンがaikoの花火を熱唱していた。
素人のカラオケ?ってくらいあんまりうまくなかったけど、信号待ちの人たちを巻き込んで盛り上がっていた。みんな酔っ払っていて楽しそう。

花火大会だったからこの選曲だったのかな。

すすマ(すすきのマック)は健在

セコマ(北海道のコンビニ、セイコーマート)で飲み物とメロンソフトクリームを買い、また少し狸小路をブラブラした。

思い出話も最近の話も。5時間くらい喋り倒してもまだ足りない。

また絶対にすぐに会おうね!と言いながら別れ、私はホテルへと帰る。

部屋に戻る前に、買っておいたメロンソフトを食べるためにまっすぐラウンジに寄った。

全然溶けていなくて、
それを見てここは東京ではなく札幌なんだと実感した。

涼しくて最高。

22時以降はスタッフも退勤し、無人となる薄暗いラウンジ。
独り占めと思いきや他に一人宿泊客がパソコンでひっそりと仕事をしていた。

こんな夜中にひとりで静かにソフトクリームを食べるおもしろい状況。変な感じ。


自分、何者だっけ。
仕事も家庭もあるのに、この瞬間は歳も肩書もまっさらになったような、もしくは時間が巻き戻されたような不思議な感覚になった。

私は誰?
何色の何?(ヒルナンデス)

食べ終えたら急いでシャワーを浴びにいく。
0時回ってたにも関わらず、いくつかあるシャワー室がほぼ埋まっていて、みんなYOASOBIしてたんだねぇと勝手に親近感。

宿泊者は海外の人が多いかと思いきや普通に日本人の方が多かった。
Creepy Nutsのロン毛のかたに似た人が隣で髪を乾かしていて、脳内でブリンバンバンボンが大暴れ。

そそくさと寝る準備をして寝床に入る。
めっちゃ静かで物音をたてないよう細心の注意をはらう。

ゴミ箱に捨てそびれたメロンソフトのゴミをビニール袋に入れて枕元に置いておいたら、私のボックス内だけ甘ったるいメロンの香りに包まれた。

私は今後メロンの香りでこの日の夜のことを思い出すことになるかもしれないな、とぼんやり考える。

ゲシゲシと蹴られずに寝られる快適さと、かわいい汗ばんだ寝顔が隣にいないさみしさを半分ずつかみしめた。



つづく。

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