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ベンチャーキャピタルの投資哲学とは?(ANRI 代表パートナー 佐俣アンリ氏/Morning satellite July,2024)

独立系ベンチャーキャピタル ANRIの代表である佐俣アンリさんのスタートアップ投資の哲学について解説する。

佐俣さんは、慶應大学卒業後、リクルートにて2年半のキャリアを過ごし、27歳の若さでANRIを創業したバックグラウンドを持つ。

そのANRIは、スタートアップ企業18社に投資し、UUUMやラクスルなどが上場を果たし、20倍のリターンを獲得した。彼は、”未来を創ろう、圧倒的な未来を”というビジョンを持って仕事に取り組んでいる。

そんな彼が、悔しさを感じているのはモデルナ。創業10年目でコロナワクチンを開発し、世界を救った会社であり、なぜこの会社に投資選択できなかったのかと。

▪️成長する起業家の見極め方

まず、ベンチャーキャピタル(VC)とは何かについて解説する。VCはスタートアップ企業とお金の出し手(投資家)を繋ぐ仕事である。このお金を出し手というのは、機関投資家が中心であり、年金機構、保険会社、銀行などを指す。

それらから、投資資金を預かり、スタートアップ企業に投資する。その会社の事業が成功し、上場もしく上場企業に買収された際、増加した投資資金を機関投資家にお返しする。このサイクルを回すのがVCの仕事である。

ANRIでは、現在総額750億円以上のfundを運用し、総業もないスタートアップを中心に280社以上に投資している。その中で、2015年4月に設立された家電レンタル事業のレンティオを紹介する。(知人の紹介、家電レンタルへの期待値の高さ)

▪️投資先① レンティオ

以下の写真は、投資会社の創業時のオフィスとなる。町中華もしくは事務所の居抜きであることが見てわかる。

投資をする際に、必ずオフィスを見るべきと考える。清潔であるか、どういう基準で選んでいるか、無駄に格好良い高い場所を選んでいないか?など。
私は、レンティオのオフィスを見た際、この会社は成功すると自信を感じた。なぜなら、物理的な格好良さに拘っておらず、レンタルビジネスを理解し、商品の出し入れが容易な主要道路沿いに面した1階を選択し、オフィス=倉庫にした経済合理性である。

レンタルビジネスは、
⑴ 商品の購入
⑵ お客様に送付
⑶ お客様から返却
⑷ 商品の掃除、メンテナンス
⑸ 商品を倉庫に戻す

オペレーションが非常に面倒であることを事前に理解し、全ての商品に細かくナンバリングを行っている。とは言え、創業期は月の売上100,000円で、スモールビジネスとしてやりたいと言っていたが、絶対に成功出来るとお伝えし、投資させていただいた事例である。

現在10年目を迎えたレンティオは、現在社員は約110名、月間利用者数は14万人以上となった。事業内容は勿論だが、オフィスというのは経営者の性格や思考が出ると感じた事例である。

▪️投資先② GITAI

以下の写真は7年前、誰でも簡単に部品を買えて作れるロボットである。これを作ったCEOである中ノ瀬氏は、自信に溢れた様子で佐俣さんへ紹介した。そんなGITAIに1.2億円投資することを決めた。

理由として、中ノ瀬氏にはビッグピクチャーと行動力があり、彼は偉大な起業家になるか?真顔で詐欺する人かは当時分からなかったが、何かをすると思って投資したら結果的に大成功した。

それは2016年7月から開始した宇宙用作業ロボットの研究開発・製造である。今後、宇宙にはロケット開発により、行くことは容易にはなるものの、被ばく線量の問題で何度も宇宙にはいけないという制限が出てくる。つまり、人がすべき作業以外は全て機械だけがやる時代が来ることを想定し、自動で動くロボットを作成した。

現在は、GITAIの強みであるロボットアームの強さを活かし、月面ローバーや宇宙での船外活動まで幅を広げている。投資家としては、7年前に見た、誰でも簡単に作れるロボットを見て、初期段階から投資できるかが主戦馬である。また、皆さんにも問いたい、同じ立場だったら投資出来るかどうか。

▪️投資する決め手とは?

会社(ANRI)のバリューとして大事にしていることは、不確実性を愛するということである。成功確率を真剣に議論するなら投資はすべきでは無い。なぜなら基本的にはスタートアップは失敗することが殆どであるため。

投資先の一つであるLuupは、挑戦の最中である。無理な可能性も高いが、法律が変われば、電動キックボードが若い人たちの新しい足になる。そして駅から徒歩15分という概念が消え、全てが駅近という時代に近づく期待を持っている。

投資は、どんなに頑張っても最後は独断と偏見で決めなければならない。なぜなら、起業家には、見えているものの、言語化出来ない未来設計があるためである。その景色を、投資家は追いついていけないケースもあるため、起業家が何を考え、どんなタイプかを判断することが極めて重要となる。

▪️成長の可能性を感じる人とは?

賢さが大切だと思う。賢さは要素の因数分解だと認識している。例えば、事業を成し遂げたいとき、どういうパラメーターが存在するのかを正確にバラバラに出来る人が重要である。逆にこれが出来ないと、同じ失敗を繰り返す。

経営は意思決定の連続であり、スタートアップは急成長を狙うと失敗する。大切なことは、失敗しないことではなく、同じ失敗を繰り返さないこと。つまり、このパラメーターが駄目だったから変えるという賢さを持つことが起業家には必要である。私自身は投資をする中で、一番最初に見ている点とも言える。

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