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こころに関わるもろもろのこと

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こころに関わる仕事をしているからこそ語れる言葉を、少しずつ紡いでいけたらいいなぁと思っています。
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記事一覧

父は半透明

父は半透明

今朝方、猫にご飯をあげたあと、ついつい二度寝をした。
その時に夢を見た。

60代ぐらいの父だろうか。
赤い地のネルシャツを着て、少し気難しい顔をしている。
葉書よりも小さいサイズの、いつも愛用しているノートを見ながら、なにやら考えている風情。
今よりも若くて、今よりも髪が黒くて、今よりもしっかりとしていた、思い出の父。

父は、父が書斎としている部屋の、机の前の椅子に座っている。
父が仕事部屋に

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読書ブログの思い出

読書ブログの思い出

本を読み、その感想をブログに書く。
それを始めたのは、いつだっけ。
パスワードも忘れてしまいそうと思いながら調べようとしたら、一年以上更新していないのでロックされていた。
これを機に思い切って削除することにする。
ちょっと寂しいけれど。

noteも、このサービスが終わってしまえば、私の書いた文章も消えていく。
そう思えば、もう少し、気楽に言葉をつづってもいいのかもしれないなあ。

読書をブログを

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2年ぶりの夏

2年ぶりの夏

全力で夏ばてに向かって疾走している。
夏って、こんなに暑いものだっただろうか。

7月に入った途端の猛暑と、雨が降ったかと思えば豪雨。
この不安定な天気のせいで、汗びっしょりになる日と頭痛になる日が交互にくる。
こころなしか食欲も落ちてきたように感じるのに、体重が落ちないのはなぜだ。

きっと、自炊をしている人は全国で感じていると思うのだけれども、暑い台所で、熱い火を扱うのが億劫で仕方がない。

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父はオーパーツ

父はオーパーツ

今月は、私が風邪を引いた。高熱を出したのは1日だけだったが、咳発作が続いた。
昨年のコロナ罹患や間質性肺炎を思い出したが、三週間してやっと落ち着いてきた。

一緒に住んでいるので、家族も同じく、父は発熱し、母は咳を患った。
父は発熱時に立てなくなり、救急搬送してもらい、そのまま、今も入院している。
初めて、付き添いで救急車に乗った。自分が搬送された以外では、初めてだ。
電話で救急車をお願いするのは

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夜が明けると

夜が明けると

夜が明けると、太陽が大地を焼く。
日が沈むと、人はほっと一息をつく。
夕暮れが一日の始まり。
 
おいてかないで。
 
小さな声が聞こえた。
生まれたての子猫のような小さな声だ。
頼りなくて心細い、返事を期待していないような小さな声だ。
 
おいてかないさ。
 
真っ黒な大きな大きなオオカミは、優しい音色でうなった。
かつて、人の言葉がわかるように、大きな大きな獣たちが生み出された。
世界から動物

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「光る君へ」の中の直秀の面影

「光る君へ」の中の直秀の面影

大河ドラマ「光る君へ」。
今年は例年以上に、しっかりと大河ドラマを観ています。
もともと、平安時代というイメージが好きでした。
それは、大和和記さんの「あさきゆめみし」や田辺聖子さんの「おちくぼ姫」、氷室冴子さんの「ざ・ちぇんじ!」などが育んでくれた愛着です。

これを書いている現在、直秀ロスに兼道ロスが重なって、やはり最後に残る推しは実資様などと考えたりします。
とはいえ、5月12日放送の第19

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ふりそそぐ

ふりそそぐ

あっという間に満開の手前にまで、花開いた桜を眺める
つぼみの濃い色も可愛らしく、日に日に開いていく様子を見るのが好きだ。
咲くのが早いのはこの辺り、本数が多いのはこの辺り、よく通る道で憶えている通りに視線を向ける。
今年は寒いからと油断していたら、ある日、はっとするほど存在を訴えて来た。

木によって花期が違うのは、いい。
一斉じゃないところがいい。
だから、長く花を楽しめる。
全部、同じ種類じゃ

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みかんとアサリ

みかんとアサリ

パートナーがみかんを向いてくれた。
そこまでしてくれなくていいのに。自分でできるよ。
笑いながら受け取った。
ありがたいのと、申し訳ないのが半々で。

昨年の抗がん剤治療の副作用で、右手の親指と人差し指の爪は青黒く変色した。変形は中指まで及んだ。
左手の親指や、両足の親指など、四肢の爪はどれも変形し、淡く茶色がかったが、右手の爪が一番ひどい。
時間が経つにつれて爪ものび、今は親指の根元は健康的な色

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謝罪と時制

謝罪と時制

ごめんなさい、という言葉を考えていた。
この言葉には時制がない。
現在のことについて謝る時には用いるが、過去のことについて謝る時にはどう言うべきか。
そんなことから、考えてみた。

謝る表現にはいくつかある。
「ごめんなさい」「すみません」「申し訳ない」など。
ごめんなさいと述べることが謝罪であって、「すみません」は頭を下げているだけで謝罪ではないと、子どもの頃に言われたような記憶がある。
そこを

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ギリガン「ケアの倫理」の補助線としてのフセイン『「女の痛み」はなぜ無視されるのか?』

ギリガン「ケアの倫理」の補助線としてのフセイン『「女の痛み」はなぜ無視されるのか?』

今年になってから3人でグループDMをしていた。コールバーグの「正義の倫理」とギリガンの「ケアの倫理」について語るつもりで、コールバーグを理解してもらうために私がカントから始めてしまったものだから、カントのア・プリオリの用語の説明あたりで有耶無耶になってしまった。
メンバーの1人がよんどころのない理由で立ち去らざるをえなくなり、そのままになってしまったことが残念な、穏やかで知的な場所であった。
残さ

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孝行娘になりたかった

孝行娘になりたかった

1回目のBEP療法の入院から退院した日が、ちょうど、母の日だった。
前後して、Twitterを見ていると、さまざまなカーネーションや芍薬の美しい花がアップされていた。羨ましかった。
この数年、私はいつも決まった花屋さんで、芍薬のアレンジメントを母に選ぶ。
その花屋さんも数年前に火事にあって苦労されたところで長い付き合いであるから応援したい。しかも、いつも素敵なアレンジメントを提案してくださる。

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物語の途中で

物語の途中で

子どもの頃から本を読むので大好きで、先を知りたくて急いで文字を追ったものだった。
先が知りたくて、先が知りたくて、結末が気になって。
大好きになった登場人物たちが幸せになるのを見たくて、読んでいたのだと思う。

だけど、結論部分を先に読むのは好きではなかった。
それは、紆余曲折の末にたどりつく、一番のお楽しみのところ。
そこを知ってしまうと、読む価値が無くなるとさえ、思っていた。

最近になって、

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母に頭をなでてもらった

母に頭をなでてもらった

50歳を過ぎて、母に頭を撫でられることがあるとは思わなかった。

抗がん剤治療が終わったのが11月。
一ヵ月した頃から髪が伸び始めたので、年が明けての1月だったか、2月になってからだったか。

風呂上り、洗面台で化粧水などを使っていると、母が私の頭を見ていた。
髪の長さは5mmぐらいには伸びていた。地肌が見えて、全体に青っぽく見える頃合いだ。
そう。まるで、昔の野球少年のいがぐり頭のような、そうい

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頭の中のセルの話

頭の中のセルの話

忘れ物と失くし物と落とし物が得意で。
遅刻と迷子も得意。

そんなことを堂々と言うと怒られることも多いのだが、こと、忘れ物に関しては、いくら気をつけてもなくならない。
小学生の頃からの常習犯で、担任を何度も困らせてきた。
担任が忘れ物の罰として掃除を提案した時に、「なにを忘れているかわからないけれども、今日も多分、なにか忘れていると思うので」と先に掃除をするような子どもだった。
…可愛げがないとも

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