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作詩-言葉たち-vol2

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#雨

「次は春色の傘を掲げて」

今日は一日中、
断続的な雨
しとしと しとしと
思い出したように降り続いた

曇天の雲間にわずかに射す太陽も
微笑むことなく行ってしまった

重たい雲は目蓋を腫らして
涙模様の街を見下ろした

ぽつんと浮かぶ傘の色は
悲しみめいたブルーみたいで
後悔滲むパープルのようで
じつは怒りにも似たマゼンタ

気づけば雨はいなくなり
人色ばかりが行き違う

場違いな傘を畳みたいのに
空はまだまだ晴れていない

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寂しさのしずく

隣にいる人すら
意味を持たぬほどの
寂しさがこぼれでるときがあるの

紫いろの夜は
差し伸べられる手すら厭わしくて
すくいあげられることを望んでいない

闇にも呑みこめない雫を
熱く濡らしては
絞りだせない声を滲ませる

今夜は
孤独なほど寂しくなくなるから
どこまでも一人にして頂戴

世界に別れを告げて
一人 待ち侘びる雨音は
月光の音色よりピアノらしく寂しく響くのでしょう

透明にしすぎた寂し

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涙雨を抱いて

大気に孕まれた水が
空気の境を這い出してくる寸前
空があついねずみ色を帯びる
きっともう涙腺は限界なんだ

それでも泣けない君の背を
風があたたかく撫でてゆく

生温い風はヒトの不快指数を上げるけど
赤ん坊が泣くのは当然のように
悲しみを抱えきれない涙が産声をあげるのだって
当然じゃないか

涙を拭ったりなんてしなくていいよ
ただ 今は泣けばいいよ
寄り添う腕はそこにあるから

たくさんのものを見

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ささやかな聲

足りない足りない
乾いてゆく地面が

足りない足りない
雨が降らない

曇り空の下で
虚ろな水琴窟の
細やかな聲がないている

横たわっても
聴こえない
清音は
体の奥から響くのね

言葉を為さないせせらぎが
自分の奥に消えてゆく

このおもてを沁み出でて
溶かした氷よ
零れておいで

何が痛みか忘れる前に
愛しい想いがしおれる前に
愛することを怖れぬ前に

あなたに逢いたい 逢いたいのです
砂漠

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変わらないこと

臆病なままでも世界に触れる
怖がりな冬を眠ってすごしたくなる
時折訪れる春の陽気に
少しだけ誘われてもみる

一日一日が四季
一時一時が季節
心が揺れ動くままに雨が降り
夜より昏い夕立が降る

抜け殻より軽い中身の身体が
風に飛ばされても
石より重い心が
陽射しに安らげなくても

一日一日が四季
一時一時が季節
心が揺れ動くままに夜を思い
月の光だけがやさしさになる

燈火でありたい
何を見失って

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春の雨が近づけば
空気もやさしくなるようだ

雨の帳に包まれて
微睡むベッドに横たわると
そっと揺られてゆりかごのよう

雨が奏でる旋律に
この身をすべて預けたら
たとえ体が冷えたって
きっとあたたかいんだと
願ってる

雨のぬくもりに
気づけたなら
どこか愛しい夜になれるね