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最近の記事

あなたがいなくても社会は回るけど

夫と出会った25才の頃のわたしは廃人だった。電車に乗って、ふつうに生きてる人を見るだけで高熱を出した。 心因性発熱。適応障害。鬱病。 そんな羅列でカテゴライズしないでよっていう意地だけは残ってて、1回で病院へ行くことを辞めた。治したところで社会に不要であることは変わらない。 大学のほとんどの人達をブロックして、全てのSNSを消した。貯金がなくなったらこの世界から消えればいいと本気で思って、半年間一度も街から出なかった。 ・ 「合わないなら仕事なんて辞めればいいよ」

    • 踊るんだよ、この街で

      「下手に出過ぎじゃない?相手によっては苛立ちそうだよ」 最近出会う人たちはやさしい。だって厳しいことを言ってくれる。それは私のことをちゃんと見ていてくれた証だ。どうでもいい存在に何も言わない。だって自分自身がそうだから。 「そうだよねえ」 ホッピーを飲みながら私はとても笑っていた。ずっと気になっていた居酒屋のもつ煮は美味しくて、久しぶりのベットはふかふかで、握り返してくれた手は温かかった。たまにこういう時間を過ごすのも悪くないなと思った。 ・ それにしても。好奇心は

      • 記憶の片隅に在る言葉たち

        「結婚したみたいだよ」 帰る前に大学時代の友人が言った。付き合って4年。別れて5年。哀しくはなかった。彼が幸せでよかった。心からそう想った。 彼は私を一度振った。繋ぎとめて最後は私が振った。あの人にだって同じことをした。どれだけ最低な人間なんだろう。自分だけが傷つきたくないなんて、この世界で一番の我儘だ。だからもう二度と恋なんてしない。 - 「心に残り続ける瞬間とか、ふとした時に美しいと感じる景色とか。それは目に見えない人たちからのメッセージなんじゃないかって」 2

        • 男たちと言葉の散文

          「結婚したみたいだよ」 帰る前に大学時代の友人が言った。付き合って4年。別れて5年。哀しくはなかった。彼が幸せでよかった。心からそう想った。 彼は私を一度振った。繋ぎとめて最後は私が降った。あの人にだって同じことをした。どれだけ最低な人間なんだろう。自分だけが傷つきたくないなんて、この世界で一番の我儘だ。どうかあの日々の記憶が霞むくらい、幸せになって下さい。 - 「心に残り続ける瞬間とか、ふとした時に美しいと感じる景色とか。それは目に見えない人たちからのメッセージなん

        あなたがいなくても社会は回るけど

          やさしさなんて、愛なんて

          やさしくされると困ってしまう。 見た目も中身もやさしさに値する人間じゃないことを自負しているから、せめて相手の体だけは満たしてあげたいと思う。それができたら「ああ私、今日も生きててよかったんだな」って、信じることができる。 それなのに。 また会いたいとか、待ってた、好きだ、なんて言われると困ってしまう。期待に応えなきゃって思う。そういう時ってたいてい上手くいかない。相手を満たすことができなかった自分は消えたくなる。 本当にごめんなさいって心から思って、想って、伝えてし

          やさしさなんて、愛なんて

          月曜日の速度

          月曜日から青空だとうれしい。昨日までのモヤモヤがかんたんに吹き飛んでしまう。 暗い色の洋服を選んで、PCバッグを背負って、満員電車に乗って、早歩きで会社を目指す。久しぶりの社会の速度はものすごく早く感じて、この速度で毎日歩き続けてる周りの人達がすごいなあと思った。 貞操観念の欠如と比例して向上したコミュニケーション力が活きている気がする。相手の目を見ることや、話すスピードがゆっくりになったような。初対面から他人に嫌われなくなってきたような。うん、悪くない。 かと言って

          月曜日の速度

          モネの夕空の下で

          30歳になったらどんな扉も開けられるようになった。貞操観念の欠落とコミュニケーション力の向上は比例していることにも気づいて、歳を重ねるのもいいかもしれない、と地下と地上を結ぶ電車の中でぼんやり思った。 新宿、六本木、上野、五反田、いくつかのそのための空間。肌の触れ合いほど満ち足りる行為はない。どこまでも頭の中を空っぽにできる。そして最後にやってくるのは圧倒的虚無感。 「わたし、何やってんだろ」 そう感じて独り笑いした時が、いちばん生きていることを実感する。だってときどき自

          モネの夕空の下で

          明日を包んで東京

          溢れるほどの水を注いでいるのにコップが満たされない。これが年齢のせいだと云うのなら、わたしはこの先どうなってしまうのだろう。 昔みたドラマの東京は宝石よりも美しいものだった。明かりが灯るビル街。化粧を直してヒールを鳴らす。待ち合わせ場所にはスーツの男性。手をつないでおしゃれなお店に。おつかれと言い合ってビールで乾杯。そんな大人になることが夢だった。だから18で地元を出た。 だけど現実は私服勤務で、化粧をしない日の方が多くて、靴はぺたんこで、街は若者で溢れていて。スーツの男

          明日を包んで東京

          生活と場所

          明日、というより今日から生活、生きる活動を再開するとここに宣言。 家にいない人を好きになることについて本気で考えるつもり、だったのにたった1分46秒で放棄した。そう、最近は考えることから逃げている。考えなくてもなんとかなると気づいてしまうと生活も滞るらしい。 何も生み出さないで、ただ時間が過ぎてゆくことほど無駄な生き方はないとわかっていたからnoteを始めたのに。最近は文章を書く気持ちがちっともない。なんのためにSNSを続けるのかわからない。もはや他人を意識して書くことに

          生活と場所

          最低の誕生日

          泣きながら 30歳の誕生日を迎えた 自分で自分をバカだと思った だけど耐えられなかったのだ、どうしても 掃除して料理を作ることなんて 感謝されるほどの行為じゃない だって自由な時間があってストレスなし そんなのフルで働く男性と比べるにも値しない 結婚して正社員を辞めただけで 私個人としてはうれしかった 夫の生活の支えになれたら幸福だった だからお金も休日も頼らないと心に決めた それなのにどうして夫は 高級なプレゼントなんて選んだのだろう 見合う女じゃない だってちゃん

          最低の誕生日

          思うままに正直に

          電話をした翌日の、昼間の喫茶店でこの手紙を書きます。コーヒーしか注文していません。完全にシラフです。だから思うまま正直に書きます。重いかもしれません。途中で嫌になったら捨ててください。 ・ 傷つけてごめんなさい。本当に、本当にごめんなさい。 好きでした。今も好きです。会っていない時どれだけあなたを思い出したことか。一緒に行ったところをどれだけ愛おしく想ったか。素敵なものを見つけていつも一番に頭に浮かんだのはあなたでした。 メールが届くと笑顔がほころびました。突然会える

          思うままに正直に

          あなたがいないこの街には

          こどもの頃から 治らない私の性質のひとつ 一瞬でもダメだと思ったら すべてがダメになってしまうこと 自己中心的でわがまま わかっているのだ 29年も生きたのだから わたしはきっと変わらない 変わる気持ちさえ見当たらない 身体だって言うことを聞きやしない 愛されないよう回避することだけが 私ができる唯一の特技だったのに 履き違えられてしまったのは大きな失態 だからごめんなさいと言い続ける あなたが忘れてくれるまで 喫茶店でコーヒーを飲みながら 江國香織の言葉にただ夢中 寒

          あなたがいないこの街には

          月のように遠いことばを

          会いたいよりも ごめんの3文字が欲しいだけなのに きっとわたしは 冷たい生きものに分類されるのだろう この世界はそういう風にできているから 「ばかなの?」と 布団の上にスマホを投げつけても 拾うのは自分ほど虚しいことはない 仕事があってよかったと心底思う 余計なことを考えずに済む きらいな残業もこんな日はよろこんで いやだよ また同じ思いするの つらいよ 想像以上にかなしくなるのよ だから私から近づかない たとえ明日世界が滅亡するとしても あなたからその3文字が届くま

          月のように遠いことばを

          それだけの愛

          平日に 早起きして 山手線にゆられれば わたしは社会のひとりになれる 渋谷で降りて坂をのぼり パン屋と本屋に寄って 青山の街をのんびり歩けば ちょっとおしゃれなわたしになれる オーケーストアで 安いからとたくさん買って 両手にぱんぱんのエコバッグを持てば まるでわたしは理想的な奥さんになれる 家事を終えて じぶんのために紅茶をいれて 部屋にオレンジのライトを灯せば だれにも思い出されない透明な存在になれる ここにいれば 靴を履かなければ 愛なんて知らないわたしでいられ

          それだけの愛

          いいな、にんげんみ

          自分で言うのもなんだけれど 誰かと会った時の 私は本当に話すことがない 話したいことがない、が正しいかも いいものを発見すると Instagramのストーリーに投稿して それだけで満足してしまうし いやなことがあると noteで文章を書いているうちに 心が静まって元通りになる コンテンツの中にいる自分が きっとわたしであって にんげんみ、ないなあと思う 心から想うことは 平仮名で書きたくなります わたしとか、すきなひと、とか ひとりで街を歩く マスクをつけていても

          いいな、にんげんみ

          心に雪が降るような

          音のない空間や人がすきです しんしんと心に雪が降るような 感覚に陥って落ち着くことができる ・ カレンダーをめくり星の数を数えたら ほとんど顔も声も覚えていなくて 記憶に残っているのは僅かな人たち 生き物というよりやさしい雪のような人たち 雪は溶けてなくなる いつかなくなるものに 期待はしないけれど また春がやってくると思うと だいじょうぶな気がしてくる ・ しずかな音楽を流して ベランダの縁側に腰掛けて 紅茶を飲む、そんな冬の日

          心に雪が降るような