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やさしさなんて、愛なんて

やさしくされると困ってしまう。

見た目も中身もやさしさに値する人間じゃないことを自負しているから、せめて相手の体だけは満たしてあげたいと思う。それができたら「ああ私、今日も生きててよかったんだな」って、信じることができる。

それなのに。

また会いたいとか、待ってた、好きだ、なんて言われると困ってしまう。期待に応えなきゃって思う。そういう時ってたいてい上手くいかない。相手を満たすことができなかった自分は消えたくなる。

本当にごめんなさいって心から思って、想って、伝えてしまって店を出た。まだ雨が降っていたから傘を差した。なんと折れた。買って2か月のお気に入りの傘だったのに。ふんだりけったりすぎて独り夜道で笑った。

やさしくされると困る。愛されると疲れる。どうしてわたし、こんなに壊れてしまったんだろう。人と話しても泣かない自分になりたかったのに。相手を否定せず、受け入れるわたしになれたのに。昔よりぜんぜん、嫌われないのに。

それでもやさしい人に抱かれるしあわせ、やさしい人が喜ぶ姿を見るしあわせ、そういうしあわせを味わったら、辞めることなんて出来ないんだと思う自分だから救いようがない。

とにかく身軽でいたい。明日は何をしようかなって考える余裕が欲しい。今はただそれだけ。

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