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【蔵出し編】昔出会った器をゴソゴソと⑩

雪氷の彼方で出会った奇跡の青い湖。

最近、有名な二人の登山家が
かえらぬ人となりました。
かえらぬ、と書いて良いかどうか
随分迷いましたが、状況を伺うと
これはもう、ということで。
心からご冥福をお祈りします。

個人的なお話で恐縮ですが、
私、登山家や冒険家の方の番組や映像を
見るのが結構好きで。
このお二人の映像もよく拝見していました。

お二人が撮影した貴重な映像を拝見することで、
お二人が見た景色や感動を追体験できたような
気がしていましたが、
実はまるで違うんでしょうね。

そのためにすべてを掛けて、
様々なリスクを承知で山に挑んでいた。
その結果ですもの、私のような傍観者から
何も申し上げることはございません。
今まで本当にありがとうございました。
そしてお疲れさまでした。

静と動、生と死、すべてを飲み込む白と青。

今日この器をご紹介しようかと
まじまじと見直したときに、
ふとそんなことを思い出しました。
すみませんね、しょっぱいイントロで。

さて今回の作家さんですが、
奈良県で活動中の森信博さん、晶子さんご夫婦。
ぎゃらりー山百、という
アトリエ兼ギャラリーを構えておられます。

ただし申し訳ない、
おそらく間違いないとは思いますが、
しっかりとした確認は取れていません。
ひょっとしたらごめんなさい、です。

で、ここからようやく本題の器です。w
私が登山家の映像を思い起こしたとおり、
外側は黒い岩肌に張り付いた雪氷のよう。
濃淡を見せながらザラザラと、
鋭くも柔らかく、美しくも気高く、
触れる者の意志を試すように。

そして呑み口の稜線を超えた途端、
内側は深い深い青の世界。
奇跡のような静けさを湛えながら、
生々しくすべてを飲み込み、
湖底へと沈めてしまうように。

そう、なんとなくではあるけれど、
単に器の内外のコントラストが美しい、
などという印象ではなく。
ある種の覚悟というか潔さとか、
そんな意思を問われているような
気がしてならなくて。

彼方と此方。
少々冒頭のお話を引きずっているのか、
それともお盆という時節のせいか。
あらためてこの器を眺めていると、
そんな気分にさせられたのです。

自然は、土は、こんなにも愛おしく残酷だ。

器の高さは約70mm。
きっぱりと自然の雄大さを感じさせながらも、
手捻りならではの、歪で波打つような
フォルムが、逆に自然の生々しさや
ダイナミズムを感じさせてくれます。

いかんいかん、今日はダメですね。w
いくら書いてもこんな調子に終止しそうです。

実は親族の一人が重い病に罹っており、
今日もそのお見舞いに行ってきたもので。
少々感傷的な文章になったことをお許しを。

私たちは他人の生死において、
常に傍観者であるしかないのだけれど、
やはり生きていてほしいという願いだけは
捨てきれないのかもしれません。
いや、捨てたくはないのです。

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