松波 慧(マツナミケイ)

エッセイと小説を書く人。 ゆるくのんびりnoteを堪能しています。 基本流し書きです。

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【備忘録】人形町〜日本橋蛎殻町〜日本橋高島屋 ①

仕事に疲れ、 思いつきで京急に乗る。 横浜から特急で品川までは30分ほど。 途中川崎、多摩川を渡れば蒲田。 東京の下町を通り、 高架になりごちゃついた生活感のある街並みから、一転高層のビルが立ち並ぶ。 品川は建設ラッシュらしく、 コロナ前よりも更地の砂利が目立つ。 品川から泉岳寺より浅草線に乗り継ぎ、 人形町まで行く。 古くからある街並みに老舗の看板が目につく。 今はどこのデパートにもある今半や、酒悦 など昔からある店が並ぶ。 祖母が まだ存命だった頃、 散歩ついでに

    • 鰻屋の今昔(いまむかし)

      木挽町のビルの狭間にその鰻屋は今でもある。 私が知っている限り店主は三回変わり、 初代と今の店主が縁戚関係にあるのか、 徒弟関係にあるかは知らぬ。 銀座の外れにあるこの店は、 そこそこの値段で鰻重を出す。 鰻重を頼むと奥で職人が炭で焼いてくれる。 椅子に深く腰掛け、濃いめの茶をすする。 見渡すと、年配の夫婦、 仕事先の取り引き相手か数人の紳士たちのテーブル、若い女性を連れてきた初老の男のテーブルなどがある。 おばさんのひとり客は珍しいのか、店主の妻は時折物陰からちらりと見て

      • 岐阜に至る② 足跡を辿る旅 〜国分寺、見なくなった光景。

        祖父が亡くなったのは確か昭和54年の 5月と記憶する。 それは明け方で静かな最後だった。 肝臓がん末期の痛みは酷く、壮絶だと聞いていたのに、その顔は微笑み、どこかホッとしたのを覚えている。 数年前に母方の祖父を亡くしていたので 身内の死は初めてではなかったはずなのに、 わたしはひどく打ちひしがれた。 まだ幼く、たまにしか会わない母方の祖父は 美しい思い出しかなく、 彼の人らしい生臭さを知らぬまま別れた時と違い、喧嘩もし、本気で怒られ、 いい意味でも悪い意味でも 肉親の奥に

        • 岐阜に至る ①新宿の病院で。

          昭和30年の武蔵国分寺の一坪はいかほどだったのか? 祖父は思い立って100坪ほどの土地を購入し、 こざっぱりとした平屋を建てた。 駅からはゆうに20分はかかり まだ都内に勤めていた祖父は 片道1時間の通勤で この終の住処を得た。 当時家のまわりは見渡す限り草地。 原野が広がり、遠くに駅の光、 西には北府中の東芝があるのみだった。 まさに田舎の一軒家。 安いとはいえ、家人にとっては いささか迷惑な引越しだったに違いない。 当時、祖父は父の実母とは違うひとと暮らし、やがてそ

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        【備忘録】人形町〜日本橋蛎殻町〜日本橋高島屋 ①

          調味料入り紙袋

          昔、料理の本を作っていた。 編集プロや出版社でアシスタントをして、 撮影もすれば皿のコーディネートもし、 記事も書けば、取材にも行った。 まだフードコーディネイターなどおらず、 編集が大方のことをしていた。 撮影は1日に大量なカットを撮る。 駆け出しの仕事は 前日にレンタルスタジオから借りてきた皿を 数枚料理ごとに並べ、先生の判断を仰ぎ、 順番に準備すること。 そこで担当ベテラン編集者から 痛烈なダメ出し食い、 憔悴しながら 次の憔悴を生まないように 必死で料理ごとのス

          鶏の境界線。

          母は5人兄妹の2番目。 男3人、女ふたりの長女である。 9歳離れた妹である叔母は、 天然ボケの母とは真逆の性格で、 とにかく堅実、努力家、なかなかのチャレンジャーでもあった。 人生で何回か仕事を変え、その度に資格を取り地道にコツコツとやる叔母は子供の頃から ちょっと歳の離れた憧れの姉のような存在だった。 戦後すぐの生まれで食糧状況が悪い中、 取り立てて好き嫌いはないようだが、 唯一叔母が苦手なのは鶏である。 どんなに小さく切ってあっても 鶏を見つけ出して上手に避けて食

          反則、場外乱闘な父

          父とはよく性格が似ている。 似てる奴ってのは、 たいがい、ちょっと苦手なもの。 仕事も同じ系統、考え方や性格も同じだけど、 なぜだかお互い認めてるようで認めてないようで、深いところでは認めているような、不思議な関係。 ま、そんなんだから、会えば四六時中もめる。 どんなことでもテキトーな母がいなければ うちは大変な事になっていた。 ただ、娘に対する愛情は有り余るくらいあるようで、それが悲しいくらい空回りして 口をついて出てくる言葉はいつも辛辣。 おいおい!って思うことも

          プレゼント。

          ある日のこと。その日は誕生日。 無意識に仕事も入れて、いつものように通勤路を行く。 狭い小道の向こうから、気づけばいつもの大型犬の彼女と、隣で紐を持ついつものおじちゃん。 「おはよう。今日も元気そうでなにより」と心の中で思い、すれ違おうと思った瞬間、 あ! ワンちゃんのほうからゆっくりとわたしに近づき、 「撫でていいよ」の急接近。 「え!いいの?」 そのまま恐る恐る彼女の頭に手を伸ばし、その毛並みにはじめて触れる。 撫でることしばしのモフモフタイム。 おお、なんと

          お休み、るるる。

          noteを数ヶ月休んでしまった。 本業がたいへん過ぎたのも原因だが、 心理的にのんびり何か書こうと思わなかったこともある。 ここ数ヶ月、自分なりに働き方というものを考えバランスを取りつつ 休みの取り方も考えつつ、今日に至る。 ここ数ヶ月忙しい中わたしを支えたのは 配信のドラマ、サブスクの音楽。 海外ドラマ、アジア系映画、BSなどなど。 そこにはたくさんの人生や 生き方や考え方があり、 いくつもの人生を擬似体験し 登場人物に思いを馳せることがてきる 特殊な環境下が広がって

          おじさん考。

          わたしは年齢は50代。 あと数年で還暦を迎えるおばさんである。 おっさんで言うと、 あなたの会社にもいる窓際の(物理的な意味ですよ)部長さんと同じ年齢である。 別におじさんで例えなくてもいいが、そのくらい「隔たり」があるということである。 会社に行くとほぼ年下。 娘より若い子もたくさんいる。 こちらとしては楽しいが、あちらはとても気を遣っている。 わかる!昔そうだったもの。 当時は、上司が歩み寄るほど 距離感が難しかったもの。 それをようやく思い出したわたしは、最近は無理に

          仕事を複数もつと、人生がやわらかく進化する。

          娘の結婚を機に、ひとり暮らしになった。 終の住処ではないが、 間取りにはこだわった。 とにかく第一条件は、 ワンルーム!この一択である。 郊外の比較的安めの土地に大きめの部屋。 そこを家具の配置でいかようにも 変えて住んでいく。 もちろん生活インフラは固定だが、 季節や自分の生活スタイルによって 間取りのレイアウト変更を自在にできるのが、 ワンルームの利点である。 ここまでこだわったのにはふたつの理由がある。 ひとつはわたしの仕事だ。 娘が社会人になったタイミング

          仕事を複数もつと、人生がやわらかく進化する。

          おばさんの心配ごと。

          今年は数十年に一度の稀にみる悪運気らしい。 ヤバい年周りになるぞと年のはじめに言われた。 あまり気にはしていないのだが、 一度調べはじめると、 ま、普通に気になる。 この大凶は2024年の半ばまで続くそうで、 なるほどねぇと我が行く末を遠目から心配している。(どちらかと言うと対岸の花火のような。) そもそもあらゆる占いとか、 そういったもののすべてが、 【大凶】、【大殺界】、【数十年に一度の魔の刻】ですとなると 人はどちらかというと冷静になるものである。 確かに今年は

          おばさんの心配ごと。

          昭和生まれは、パンデミックに弱い?

          ちょうどオイルショックの頃、 わたしは8歳くらいで、 当時の母は 買い物でトイレットペーパーの包みを わたしに持たせる「儀式」に 取り憑かれていた。 元来心配性で 最初に生まれた子に死なれ、 わたしという生まれた娘は 幼少期に大病をして 母親になってからの彼女は 心配と不安と、悲劇に苛まれ、 いよいよ不安症は加速するばかりだった。 結婚時にあった容貌は、 数年で衰え、 物心ついた時には 割と貧相な母親だった。 言わずもがな、 オイルショックの頃は 極端にトイレットペーパ

          昭和生まれは、パンデミックに弱い?

          スープ!スープ!

          福岡の焼き肉屋さんが売っている テールスープと参鶏湯にハマっている。 朝が辛く、なんとか朝ごはんを食べて力を入れたいわたし。 お粥や雑炊なら カラダも温まるしお腹にも溜まる。 一石二鳥で楽をしたいわたしは、自分で作らず何か手立てはないかと思い出したのが、半年くらい前に見かけて購入した冷凍のスープ。 1人前には少しお高めなスープだけど、 お店でコトコト煮て コラーゲンたっぷりの薬膳スープは 心もカラダも芯から温まる。 そこへ冷凍ご飯をチンして加えれば 即席の「滋養」雑炊

          しんみりと飲みたい

          一人暮らしになってからちょこちょこ飲む。 友達を呼ぶときもあるし、ひとり昼間から飲むこともある。 さぁ、今日は飲むぞと決めると まずは酒の肴を決める。 かんたんな材料でサッと作れてしかも美味いもの。 わたしのお酒タイムは、 必ずキッチンからはじまる。 冷蔵庫をあけて 酒にあうおつまみ作り。 季節はずれのアボカド。 夏の初めに冷凍したものをえびとピスタチオでサラダにする。 鮮やかなグリーンと赤が 冬のキッチンにみずみずしい風を連れてきてくれる。 おなかを温めてくれ

          遅刻なしロッカー。

          うちの本社の建物はとても変な形をしている。 たぶん航空写真で見ると舟形に近い形だと思う。 なんでそんなおかしな形になったかというと、元々あったビルを中心に左右横に両翼のように建て増しを繰り返していったからだ。 しかも翼の両先端は既存にあった他社さんの建物をそのまま買い上げ、何も考えずに(そんな事はないと思うけど)繋げたという、とてもミラクルな構造になっている。 たぶん5棟ほどのビルがドッキングしているだろう会社は、使い勝手がいいように中では全て繋がっている。多少段差はある