巽 洋一

若い世代に少しでも世界をより良くして引き継ぎたい。 読んだ本、観た映画、日頃の雑感など…

巽 洋一

若い世代に少しでも世界をより良くして引き継ぎたい。 読んだ本、観た映画、日頃の雑感など。学習塾やってます。お気軽に書き込みしてください。相互フォローも歓迎。

最近の記事

渡瀬裕哉著『税金下げろ、規制をなくせ~日本経済の処方箋』

 2020年10月刊、光文社新書。  日本の国民がいかに、税金を取られ、規制にがんじがらめになっているか?を極めてわかりやすく解説してくれて、その処方箋も伝えてくれる。  すなわち、政治家に、「税金下げろ!」と、「規制をなくせ!」と、プレッシャーをかけることだと。  実際、かつてアメリカは規制だらけ、重い税金に苦しんでいた。 それをある市民グループがプレッシャーをかけることによって、税金を下げること、規制をなくす国に変わっていった、というのが著者、渡瀬氏の見立て。  僕

    • 『ネガティブな感情が成功を呼ぶ』トッド・カシュダン、ロバート・ビスワス=ディーナー著/高橋由紀子訳

       人間の文明の歴史は「不快」を「快」にする事であった、とも捉えられる。 百年、千年前を想像するまでもなく、自分の子ども時代と比べてみても生活はずいぶんと快適になった。 風呂は自動でたまってくれる、道に迷うこともなくなった、どこにいても電話をかけることができる・・・。 便利だ、快適だ・・・。  しかし、快適さが私たちを覆えば覆うほど、私たちは不快に耐える耐性が弱くなっているのではないか? 電車が数分遅れただけで、信号待ちをするだけでイライラが募る。自分の思い通りに行かないと、

      • おおたとしまさ著『ルポ無料塾~「教育格差」議論の死角』(2023年12月 集英社新書)

         最近よく耳にする「無料塾」の事が知りたくて手に取ってみたが、とても有意義な読書体験になった。 前半は具体的な無料塾のルポ、後半は無料塾を取り巻く状況を識者とともに考える。   前半の「実話編」「実例編」で、それぞれの無料塾の様子がよくわかったし、「無料塾」のジレンマ、みたいなこともよくわかった。   そして、後半の「考察編」と呼ばれる部分が、昨今の子どもを取り巻く状況を深掘りして、無料塾の意義や問題点を描き出す。 「かわいそうな子供達をボランティアで支援している」みたい

        • 武田惇志、伊藤亜衣著『ある行旅死亡人の物語』

           尼ヶ崎の小さなアパートで亡くなった身寄りのない女性は、右手の指を全損、名前、年齢、本籍もわからず、3400万円もの現金を所持していた。  身元を隠すようにひっそりと生きていたこの女性は一体何者なのか? 二人の共同通信の記者が彼女の身元を調べていく様子が描かれています。  小説のように謎はすべて解明!というわけにはいかないですが、記者、という仕事の克明な記録、と読めばすごく興味深く、文字通り一気読みでした。  

        渡瀬裕哉著『税金下げろ、規制をなくせ~日本経済の処方箋』

        • 『ネガティブな感情が成功を呼ぶ』トッド・カシュダン、ロバート・ビスワス=ディーナー著/高橋由紀子訳

        • おおたとしまさ著『ルポ無料塾~「教育格差」議論の死角』(2023年12月 集英社新書)

        • 武田惇志、伊藤亜衣著『ある行旅死亡人の物語』

          野口雅弘著『マックス・ウェーバー~近代と格闘した思想家』

            宮台真司さんが二言目には「マックス・ウェーバーが、・・・」と主に、官僚批判の文脈で引用するので、読んでみました。  19世紀末から20世紀初めにドイツで活躍した人。ドイツでより日本で受容されている、というのは面白い。

          野口雅弘著『マックス・ウェーバー~近代と格闘した思想家』

          「裏金問題」はそろそろ次のステージへ

           国会による野党の追及、メディアによる自民党批判は確かに必要だろうが、そろそろ「新たな仕組み作り」という次のステージを模索すべき時だと思う。  政治資金をガラス張りにできない政治では日本の統治を担えない(牧原出東京大学先端科学技術研究センター教授) -マル激 (videonews.com)  泉房穂氏(元明石市長)などは、政党助成金ですべてまかなえる!とおっしゃっていたが、上記のマル激では、透明性を保ち(献金額を一円まで公にし)企業献金まで視野に入れる、アメリカ的な献金制

          「裏金問題」はそろそろ次のステージへ

          石川良子、林恭子、斉藤環著『「ひきこもり」の30年を振り返る

          岩波ブックレット。引きこもり問題の現在地を知りたくて購入、早速読んでみた。  このブックレットは引きこもりに関する公開シンポジウムの記録だが、読んで一番驚いたのは、この3人の対等性だ。 高名な精神科医である斎藤環さんの意見が結論化することなく、後の二人が何なら斎藤氏を批判するという構図。 引きこもり、という病気ではなく事象がテーマなのだから、当然といえば当然なんだが、とはいえ、かなり新鮮だった.   まー大概の医者なら「俺を誰だと思ってんだ!」と言いそうなもので、本当に素

          石川良子、林恭子、斉藤環著『「ひきこもり」の30年を振り返る

          トゥキュディデス著、ジョハンナ・ディデス編、太田雄一朗訳:『人はなぜ戦争を選ぶのか』

          ギリシャ都市国家時代の歴史家トゥキュディデスの『戦史』から重要な演説を抜粋し、解説を施したもの。 トゥキュディデスの『戦史』は、アテネとスパルタが戦ったペロポネソス戦争を描いた戦記。その中で、アテネの民会での演説など、戦争に向かう記録が残されている。 直接民主政国家アテネでは、この民会が国家の意思決定機関だから、市民を説得する演説が大きな役割を果たした。 その演説は情動的と言うより、理論的、びっくりするほど理屈っぽい。 2500年も前なのに、今でも通用するほどのクオリティ

          トゥキュディデス著、ジョハンナ・ディデス編、太田雄一朗訳:『人はなぜ戦争を選ぶのか』

          菊田幸一著『新版 死刑廃止を考える』

           個人的には死刑という制度は一刻も早く廃止すべきだと思う。 遺族感情とか、国民が死刑の存続を望んでいるとか言う人もいるけれど、僕は絶対死刑に反対。  日本の刑事司法は、不透明で冤罪を生みやすい土壌があると思うし、死刑廃止は世界の趨勢でもある。   たとえば、京アニの事件の犯人の受け答えを見ても、とても未熟で幼稚で、大人になりきってないと感じさせる。彼自身も、今の時代の被害者なんだろう。 終身刑でしっかりと自分の行いの罪の深さを反省させ、自分の言葉で謝罪できるようになってほ

          菊田幸一著『新版 死刑廃止を考える』

          小澤征爾さんが、亡くなりましたね。とても、残念です。

          小澤征爾さんが、亡くなりましたね。とても、残念です。

          菊地栄治、池田賢市他『能力2040 AI時代に人間する』

           2016年の「やまゆり園事件」、学校の始業式の日に子どもの自殺が最多となる「九月一日問題」を契機として集まった能力論研究委員会の面々によるアンソロジー。  人種、性別などによる差別は問題視されるが、なぜか「能力(学力)」による差別は日々当たり前に行われ疑問にも思われない、むしろ学校という場では奨励さえされている(能力別クラス、特別支援学級など)のはなぜなのか?背景にある我々が常識としているものが実は正当性を持たないただの偏見ではないのか? できるものを賞賛し、できないこと

          菊地栄治、池田賢市他『能力2040 AI時代に人間する』

          ⑭金間大介著『先生、どうか皆の前でほめないで下さい』

           2022年刊。  目立つのが嫌い、競争が嫌い、横並び主義、・・・行儀よく性格も穏やかで人当たりもよい、一見、良い子である(大人からしたら扱いやすい様に思える)現代っ子達の生態に切り込む。 金間さんは大学の先生で観察対象は大学生。 僕が日々相手をしているのは高校生なのだけれど、合点がいくところが多々あった。   最近の子達との付き合いで日々感じるのは、それなりにコミュニケーションはとれる、何なら軽く冗談も言い合える関係なのに、そこからもう少し近い関係にはなかなかなれないも

          ⑭金間大介著『先生、どうか皆の前でほめないで下さい』

          ⑬志水宏吉著『学力格差を克服する』

           ちくま新書、2020年刊。  学力の差を縮めるのではなく、学力の低い層を引き上げる「学力保障」を掲げる教育社会学者の著作。 その考え方、研究成果には説得力がある。  それぞれの子どもを一本の木に見立てる「学力の樹」の発想はとても共感できるものだ。葉は子どもが学び取る知識、幹は子ども自身の思考力や判断力、根はそれらを支える意欲・関心・態度。知識(葉っぱ)一つ一つは取るに足らないものだが、それが総体となって人間の成長を助ける。 素晴らしいメタファーだと思える。  同和教育

          ⑬志水宏吉著『学力格差を克服する』

          ⑫宇佐見典也「電力危機」(星海社新書)

          一般人はよく知らない「電力自由化」とか、「売電の入札制度」の事など、基礎知識が身に付く。サブタイトルに「私たちはいつまで高い電気代を払い続けるのか?」とあるが、電気業界に対する批判が基調ではなく、現状を客観的に教えてくれる。 ・東電管内は、慢性的に電力が不足している状態で、これから電気代は、高くなることはあっても安くなることは無い。 ・電力の自由化は、上手くいってない。(それも電力不足の一因) 原発事故後、原子力発電が止まり、発電能力が極端に落ちている中、電力自由化の方

          ⑫宇佐見典也「電力危機」(星海社新書)

          ⑪ 飯尾潤著『日本の統治構造』(2007年)

          サブタイトル「官僚内閣制から議院内閣制へ」 世界の先進国との統治構造の違いから、日本的な統治構造の特質を描く。 アカデミックでよくある、日本の統治構造を後進的で異質なもの、という捉え方ではなく、広い視野で客観的な論述に非常に好感が持てる。 この本の中で、参議院改革について言及があり、興味深かった。 参議院の現況は、なかなか存在意義が発揮しにくく、「一院制」を主張する声もしばしば聞かれる。 さりとて、一院制にするには憲法から変える必要があり、現実的には難しい。 そこで

          ⑪ 飯尾潤著『日本の統治構造』(2007年)

          NHKスペシャル「学校のみらい」について

          昨日(1月27日土)に放送があった、「学校のみらい」という特番が非常に「攻めた」内容で良かったと思う。 イジワルな言い方だけど、安倍政権下ではあれほど萎縮していたNHKが本来の役割を思い出したというか、本来の実力を発揮したように思います。 日本には30万人にも及ぶ不登校の子どもたちがいる事、日本の教育予算がOECDで下から2番目に割合が低いこと、世界には学校という枠が合わない子のために先進的な取り組みをしている国があること、日本にも民間で取り組みをされている人もいるけど

          NHKスペシャル「学校のみらい」について