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石川良子、林恭子、斉藤環著『「ひきこもり」の30年を振り返る

岩波ブックレット。引きこもり問題の現在地を知りたくて購入、早速読んでみた。

 このブックレットは引きこもりに関する公開シンポジウムの記録だが、読んで一番驚いたのは、この3人の対等性だ。 高名な精神科医である斎藤環さんの意見が結論化することなく、後の二人が何なら斎藤氏を批判するという構図。 引きこもり、という病気ではなく事象がテーマなのだから、当然といえば当然なんだが、とはいえ、かなり新鮮だった. 

 まー大概の医者なら「俺を誰だと思ってんだ!」と言いそうなもので、本当に素晴らしいことだと思う.

 80年代だと思うが、登校拒否が顕在化した時から、不登校という言葉の方が一般化して、さらに引きこもりが顕在化していくプロセスは、ガッツリではないものの、ずっと関心の対象であった。 

この本のお陰で1980年代に不登校と引きこもりが不分別であった頃から現在までの引きこもり問題の受容史が整理できた。

 自分にもある時期、引きこもり、といっていい時期があり、「引きこもり続ける」と「引きこもりをやめる」を分けるものは何なのか?というのは長年の疑問。 自分はしたいことが見つかり、たまたま、それで自立できて今に至るが、長期化する、しないは、ほんと、小さな差の様な気もする。 ただ、出会いや外部の刺激が重要だとは思う。

 引きこもりが問題視されない社会がこの本の最終目標だけど、自分の経験ではそれは大変なことだなあと思う.何より自分が自分を肯定出来ない状況で、それを無理矢理肯定しようとすると、何かウソくさい論理をでっち上げてしまいそうだから。

 かつて、「働かないで生活できてる俺たちは勝ち組だ!」と引きこもり当事者が言う、みたいな扇情的なビデオが出回ったことがあって、当然、多くの人たちの憎悪の対象になっていた。

 ありきたりな言い方だけど、越えなければならない山はまだまだたくさんありそうだ.

 そういえば、引きこもりの人たちが和歌山県の山村で自活する、という試みがあったけど、その後、どうなったんだろう? 5年、いやもっと前か?

 


 
 


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