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『エッセイのまち』の仲間で作る共同運営マガジン

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2022年4月の記事一覧

智に働けば、角が立つ。情に棹させば、流される。

悪意なく人を傷つけてしまうことは誰にでもある。 かくいうわたしも例外ではないのだと思う。 あらゆるサークルが新入生にサークルの説明をしたり、勧誘をしたりする新入生歓迎会の最終日、友人Yのある発言に腹が立ってしまった。  久しぶりに友人に対してイラッとしてしまい、大人げない対応をしてしまったので反省も込めてそのお話。 (競技ダンスを現在やっている、もしくはやっていた方は不快に思う可能性があるのでご注意ください。) Y君は大学生活で最初にできた友人だ。 入学前の学部説明会で席

味噌汁の懐の深さ

自炊を始めてから、何と言っても衝撃的だったのは どんなものでも難なく受け入れる、味噌汁の懐の深さだった。 味噌汁と言えば、誰もがご存知の通り、日本人の朝ご飯として遥か昔から長いこと君臨してきた汁物の代表格であり、どんな和食の隣に居ても調和を乱さない謙虚さを兼ね備えている料理の一つである。 そんな味噌汁という存在を「作れるようになりたい」と思うのは割と自然な流れであり、この味噌汁を作れるようになってこそ、自炊の土俵に立ったとも言える。 と、言うわけで、味噌汁を作るにあたっ

ネイチャー×大都会で感じた存在意義

都会のど真ん中にある天王寺動物園へ行きました。 木に飛び乗ったり、グルグル大車輪したり、サービス精神旺盛のテナガザル。写真を撮ろうとした瞬間、小窓から奥へ消えて行きました。 忙しかろうが定時ビタビタであがるタイプのバイトやないねんから。 私服に着替えてから退勤押して、いつも園長とモメてそう。 波乱の幕開けです。 超ホワイト企業並みの福利厚生最初に向かったのは鳥類ゾーン。 『鳥の楽園』と名付けられた広々空間に池や川といった水辺があり、色彩豊かな植物も育っていました。

新幹線の匂い

仕事を終えて家を飛び出した。 何年ぶりのゴールデンウィークだろう。いつもは仕事があって3連休くらい。朝ニュースを見て「あ、そっか一般的には連休か」と気づく。 それが今年、7日の連休が私の元にやってきた。 い、1週間も休んでいいんですか…! チャット見ませんからね!? 胸の高鳴りと小さじ2くらいの不安が、私のお腹の奥でグツグツしている。帰ってきた時にチャットの山になってないことを祈り、駅へと向かった。 とりあえず、実家に帰ろう。 実家は埼玉県で、東京にも行きやすい。 買

海の色が青って誰が決めたの

ふと思い出した海が青じゃなかった。 透明のような、灰色のような、朝の渋谷の街並みを反射させたような。 海が青色って誰が決めたんだろう。 「青色」が生まれる前は何色だったんだろう。 目の前に行って海をすくい上げたら 手の中にあるのは透明な塩水で。 海から切り離された途端 それは水になっていた。 あなたが海を見る、時間・季節・場所・角度 色んな要素で「今の海」が見える。 心の状態も関与するのかな。 きっと、他の誰かと一緒に見ても 同じ海とは限らない。 海だけじゃなくて

江ノ電おじさんの教え

こんばんは。栗山ゆかりです。 電話で苗字を伝えると、結構な確率で「杉山様ですね」と返され、 「あっ、栗山です~。天津甘栗の栗に、普通の山です」と伝えるまでがデフォルトです。 ちなみに皆さん、天津甘栗って食べたことあります? 私は無いです。 「これまでさんざん天津甘栗にお世話になっておいて、お前・・・!」と思われた方は申し訳ありません。 決して食わず嫌いとか、中華街に恨みがあるわけではなく。 「いつか食べよう」と思ってまだ食べてないだけなのです。 こういう、 「いつか〇

何でもない私だから

 何でもないことを無性に書きたい。  何でもないエッセイを。何でもない内容を。ただの思い出や懐かしさや心にある風景を。日常の会話やオチのない下らない話を。  先日体調が悪くて休んでいた間、ツイッターを眺めながらふと思っていた。  絵の上手な人が多いなあ。  いやちがう。絵の上手な人ばかりだ。  いやいや世の中は面白い漫画も素敵で可愛いイラストも上手な文章も面白い映画もカッコいいミュージシャンも笑える芸人も、山のように、本当に山のようにいるではないか。  いやいやいや素人な

移動販売が叶えること

移動販売というと、どんなお店の、どんな車を思い出すでしょうか。 僕は、幼い頃、暮らしていた団地に賑やかなトラックがやってきて、荷台に品物が並べられていたお店を思い出します。一般的な2トントラックで、荷台がアルミでした。 だから、トラックがお店だったなんて!と、驚いた記憶の方が強いのです。何を売っていたか、何を買ってもらったかなんて、覚えていません。 大人になってから、最近の移動販売は軽トラックが主流で、スーパーなどが主体となって商品を載せて地域を巡っている、といったサー

「描く」と「書く」の境界線

中学生になるまでの10年間、絵を習っていた。いわゆるお絵描き教室。アトリエと呼ぶには技術も志も足りなかったが、パレットに落とす絵の具の色を選ぶ瞬間にわくわくしたのは今でもよく覚えている。 小さい頃から作ることが好きだった。段ボールや牛乳パックはいつも大切な遊び道具で、家族との旅先ではよく画用紙に絵を描いていた。物心ついたときには、毎週金曜日になると黄色いスイカ柄のバッグをぶら提げ教室に通っていた。スイカには、クレパスと絵の具の跡がいくつも滲んでいた。 教室は近所にある一軒

「おじいちゃんになります」

弟から電話がかかってきた。 弟は実家の近くに住んでいるため、よく1人暮らしの母の様子を見に行ってくれている。 その弟からの電話だ。 私は一瞬(良くない報せなのでは?)と、身構えた。 おそるおそる、電話に出ると、 勢いのある弟の声が聞こえてきた。 「あ、もしもし?お姉ちゃん? 俺、おじいちゃんになりまーす!!!」 「…」 「は?」 「だからね、俺がおじいちゃんになるのよー!」 こういうの…25年くらい前にも一度聞いた。 当時まだ18才だった弟が、ゲームをし

人として、一番大事だと思うこと

「人間っていうのは、誰かが喜んでくれると自分も嬉しくなるものだと思うよ、僕は」 K店長はそう言って、コーヒーカップに口をつけた。 私はメモを取りながら、じっと次の言葉を待っていた。 「人間の本質って、そういうものだと僕は思う。だから、お客さんに喜んでほしい。お客さんが喜んでくれたら、僕も嬉しい」 とてもシンプルで力強い言葉だった。 もう20年近く前、私が某カメラチェーン店の社内報制作に携わっていた時のことだ。当時、その会社は約80店舗を展開していて、私は取材でいろいろな

だから、あなたには同じものを

朝9時、チャイムが鳴った。パソコンの前に座ったままモニターの向こうに視線を移す。レースカーテンの隙間から見えたのは白い軽のワンボックスで、ちょうどドライバーが荷物を運び出しているところだった。佐川急便のお兄さんじゃない。珍しいなと思いながらインターホンに出ると、「お荷物のお届けにまいりました」という女性の声が返ってきた。 ゆったりとした動きでゆうパックを手渡してくれる配送員。失礼だけど短時間に多くの荷物を届けるこの仕事は適職ではないようだ。けれど「大切な荷物を手渡す」という

まるでプリンのよう【試行のフレンチトースト】

「できたよ」 コトンと、6歳の息子の前に皿を置いた。 目の前の皿には完成したフレンチトースト。その上にはイチゴの輪切りを乗せている。さらにそこにメイプルシロップをかけた一品。 息子は早速皿の前に置かれたフォークを手に取り、食べようとしている。 「…あ、しまった。切ってなかった」 そこでハッと気付いた。 食パン一枚のまま作っているので、まだ食べやすいようにカットしていなかった。 皿を下げようかと思ったが、息子の様子を見てすぐにそれはしなくていいと悟った。 トーストの端っこに

幼なじみを好きだったこと

ふと幼なじみの定義を知りたくなって調べているうちに、自分の幼なじみと言えそうな友達を何人か思い出した。 残念ながらそのほとんど全員が今何をしているのかわからない状態だけど、ひとりだけ消息を知っている人がいる。 その人は私が好きになった女の子でもあった。 私が6歳の時に彼女、美帆と小1で同じクラスになってから、高校を卒業するまでの12年間同じ学校へ通った。 その間クラスも同じだったのは他に3回、小6と中3と高3でそれぞれ節目の学年だったから、全ての卒業アルバムに私と彼女は