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味噌汁の懐の深さ

自炊を始めてから、何と言っても衝撃的だったのは
どんなものでも難なく受け入れる、味噌汁の懐の深さだった。

味噌汁と言えば、誰もがご存知の通り、日本人の朝ご飯として遥か昔から長いこと君臨してきた汁物の代表格であり、どんな和食の隣に居ても調和を乱さない謙虚さを兼ね備えている料理の一つである。

そんな味噌汁という存在を「作れるようになりたい」と思うのは割と自然な流れであり、この味噌汁を作れるようになってこそ、自炊の土俵に立ったとも言える。

と、言うわけで、味噌汁を作るにあたって入念な準備をするべく、最寄り駅近くにある味噌の専門店で良い味噌を購入し、一人分の味噌汁を作るのに最適な柳宗理のミルクパンをわざわざ浅草の合羽橋道具街まで赴いて手に入れた。

どこまでいっても形から入るタイプであることが
お分りいただけただろうか。

もう、ここまで来たら引き返せない。

自分は故郷に錦を飾るべく
味噌汁マスターになると決めたのだった。

そうやってマスターを目指す旅は始まったのも束の間、この味噌汁、入れる具材のレパートリーがほぼ無限であることが早々に分かった。

定番のネギ豆腐わかめなどはもちろんのこと、小松菜ほうれん草などの葉物、しめじ舞茸などのキノコ類、ジャガイモ玉ねぎなどの根菜なども、自然と味噌汁の味に馴染んでいく。

そもそも野菜と分類されるものは、全て味噌汁の具材として成立するんじゃないかと思うぐらい、何を入れようが食材の良さが引き立つ。大学サークルに在籍していたなら、百人力の存在になれるかもしれない。

個人的には、きのこ類は何を入れようが美味しい出汁が出るので、余ったら必ず味噌汁に放り込むようにしている。むしろ、料理中に余ってくれとさえ思っている。

また、あまり入れる事はないが、魚介類肉類だって当たり前にマッチするだろう。しかし、もし、そんな挑戦をしたならば、味噌汁が脇役からメインの座にまで上り詰めてしまうと言っても過言では無い。天下を取ってしまう可能性だってある。

と言うか、多分、味噌がすごいんだと思う。

あれ、何にでも合うし
どんな食材をも美味しく仕立て上げるから。

あと、もう一つ声を大にして言いたいのが、柳総理のミルクパンと味噌汁の相性がすこぶる良いということ。

ころんとしたフォルムとツヤ消しのステンレスが、味噌汁の素朴さを際立たせていて、何だか懐かしい気持ちにさせられるのだ。ザ、朝ごはん感。

この世に存在する全方向の食材に対応して、そのおおらかな心懐の深さありとあらゆる冷蔵庫の残り物を受け入れていく。

もし、味噌汁が人間として存在していたなら
世界中が平和になったのかもしれない。

誰とでも仲良くできるし、怒らないし。

そのポリバレントな力を誇る事なく
素朴な味と朴訥さで食卓にいつも鎮座している味噌汁。

まだまだ味噌汁マスターへの道は果てしないが
その称号にふさわしい人物になるために
まだまだ精進していきたいと思う。

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