大人になって乗った観覧車は穏やかだった。
彼が観覧車に誘ってくれた。
正直に言うと
私は観覧車に乗ることに
あまり魅力を感じていなかった。
だってただ景色を観ているだけでしょう?
子供の頃は辺りが開けて
どんどん地上に昇っていくことにワクワクしていた。
ティーンの頃は好きな人と
二人きりの時間に胸を高鳴らせドキドキときめいていた。
だけど大人になると
何もせず外を眺めることが
なんだか時間を無駄にしているような気になってしまう。
それよりも次に何をするか、
無駄なく要領よく…そんな事ばかり考えてしまうんだよね。
「絶対に観覧車に乗ろう!」
彼がそう言ってくれたのは
私に教えたかったからかもしれない。
何もしないことの豊かさを。
ぼーっと外を見て
鳥が飛んでるね、とか
あれスカイツリーかな?とか
なんでもない会話をする。
それって相手に心を開いてリラックスしていることと
自分の中に"余裕"という時間を楽しむ空白がなければ
絶対に出来ないこと。
だけど生きるうえでなくちゃならないもの。
なんだよね。
大人になるとそういうものを忘れてしまう。
つい目先のやらなきゃなことに囚われてしまう。
彼のおかげで私は私を取り戻せた。
大人にこそ「観覧車」は必要な乗り物。
足を止め心をゆるめて
何もしない贅沢な時間を
私はこれから少しでも多く
過ごせる生き方をしていきたい。
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