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マキネマ〜私的映画感想文〜

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映画好きライターによる、私的な映画レビュー。観た映画のメモがわりにも使います。
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#邦画

「銀嶺の果て」監督:谷口千吉/1947

「銀嶺の果て」監督:谷口千吉/1947

こんなお話

野尻、江島、高杉の3人は銀行強盗を働き、冬の北アルプスに逃げ込む。しかし、捜索隊が追いかける中、高杉は雪崩に巻き込まれて姿を消してしまう。運良く助かった2人はスキー小屋に辿り着くが、そこには老人と、その孫娘の春坊、登山家の本田がいた。次第に野尻は彼らの温かな人情に心を動かされるが、世間との接触を極度に恐れた江島は…。

レビュー

「世界のミフネ」がデビューを飾った作品。
端正なお顔

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「しとやかな獣」監督:川島雄三/1962

「しとやかな獣」監督:川島雄三/1962

こんなお話

パートが立ち並ぶ郊外の団地、前田家はその四階の一角を占めている。前田時造は元海軍中佐、戦後どん底の生活を経験した彼は自分の殻にとじこもり、子供たちを踊らせるあやつり師になった。息子の実には芸能プロの使い込みをやらせ、娘の友子は小説家吉沢の二号である。

レビュー

とある団地の一室に住む家族。・・・が、この家族がどうもおかしい。

伊藤雄之助が演じる父、山岡久乃が演じる母、どちらも恐

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可愛い顔して実は...!? 「私は二歳」監督:市川崑/1962

可愛い顔して実は...!? 「私は二歳」監督:市川崑/1962

こんなお話

小児科医で育児評論家の松田道雄の随筆をベースに、和田夏十が脚本化した作品。当時、市川・和田夫妻にも同じような子供がいたということが、映画化の動機になったんだとか。

一人息子の子育てに悪戦苦闘する家族を、赤ちゃん目線で描いているのですが、ベタベタな愛情ではなくシニカル目線が市川崑らしい。

赤ちゃんはカワイイ顔して、こんなこと考えているのか・・・と少々複雑な気持ちにすらなりますw

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キャストだけ豪華な群像劇。「グラスホッパー」監督:瀧本智行/2015

キャストだけ豪華な群像劇。「グラスホッパー」監督:瀧本智行/2015

こんなお話

愛する恋人・百合子を事故で失った鈴木は、この事故が意図的に仕組まれたものであったことを知り、裏社会の組織に潜入して復讐の機会をうかがっていた。しかしその犯人は“押し屋”と呼ばれる殺し屋の手により、鈴木の目の前で死んでしまう。

レビュー

この作品は伊坂幸太郎原作。

生田斗真が主演ですが、山田涼介・浅野忠信の三者をメインとした群像劇のような仕上がりになっています。

渋谷のスクラン

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「さがす」監督:片山慎三/2022

「さがす」監督:片山慎三/2022

こんなお話

大阪の下町に暮らす原田智と中学生の娘・楓。「指名手配中の連続殺人犯見たんや。捕まえたら300万もらえるで」と言う智の言葉を、楓はいつもの冗談だと聞き流していた。しかし、その翌朝、智が忽然と姿を消す。警察からも「大人の失踪は結末が決まっている」と相手にされない中、必死に父親の行方を捜す楓。やがて、とある日雇い現場の作業員に父の名前を見つけた楓だったが、その人物は父とは違う、まったく知ら

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「ドライブ・マイ・カー」監督:濱口竜介/2021

「ドライブ・マイ・カー」監督:濱口竜介/2021

〜 こんなお話 〜
家福悠介と音、夫婦の間には、長くつづく二人だけの習慣があった。ひとつは家福が舞台の台詞を覚えるときの方法で、家福は、相手役の台詞部分だけを音がカセットテープに録音し、それに自分の台詞で答えながら台本を覚えてゆくという手法を好んでいた。家福は愛車「サーブ900ターボ」を運転するときにこのテープを流し、自分の台詞をそらで繰り返しながら台本を身に染みこませた。そんなある日、音が急死す

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「女は二度生まれる」監督:川島雄三/1961

「女は二度生まれる」監督:川島雄三/1961

こんなお話

芸者小えんは建築家の筒井の胸にいだかれていた。売春禁止法も彼女にとってはなんのこうそくも感じさせなかった。
そんな彼女にも心をときめかすことがあった。それはお風呂屋への行きかえりに顔を合わせる大学生牧純一郎に行きあう時であった。
しかし彼女の毎日は、相かわらず男から男へと渡り歩く生活だった。そんな時知りあった寿司屋の板前、野崎にふとふれあうものを感じるが、野崎も将来のことを考え、子ど

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ほっこり心温まる時代劇。
「かあちゃん」監督:市川崑/2001

ほっこり心温まる時代劇。 「かあちゃん」監督:市川崑/2001

<こんなお話>

不景気、失業、相次ぐ暗い事件。現代の世相を思わせる天保末期。老中・水野忠邦の改革の効なく、江戸の庶民の生活は困窮を極めていた。ある貧乏長屋で5人の子供を育てる、おかつ(岸惠子)もその例外ではなかった。そんな生活の中、おかつの家では一家6人が総出で金を貯めこんでいると噂になっていたが、それには理由があった。

<レビュー>

市川崑監督が2001年に手掛けた晩年の作品。あまり期待し

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55年前、人工授精を考える。
「炎と女」監督:吉田喜重/1967

55年前、人工授精を考える。 「炎と女」監督:吉田喜重/1967

こんなお話

造船技師・伊吹真五と立子の間には一年七ヵ月のひとり息子鷹士があり、家庭は一見したところ幸福そうに見えた。だが鷹士は人工受精によって生れた子供で、それが夫婦の間を微妙なものにしていた。この家には、真五の友人の医師で、人工授精の施術者だった藤木田と、かつてその弟子だった坂口と妻のシナが出入りしていたが、真五は当時、貧しい医学生だった坂口が精子の提供者なのを知っていながら交友関係を結んでい

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「愛がなんだ」監督:今泉力哉/2019

「愛がなんだ」監督:今泉力哉/2019

こんなお話

28歳のOL山田テルコ。マモルに一目ぼれした5カ月前から、テルコの生活はマモル中心となってしまった。仕事中、真夜中と、どんな状況でもマモルが最優先。仕事を失いかけても、友だちから冷ややかな目で見られても、とにかくマモル一筋の毎日を送っていた。しかし、そんなテルコの熱い思いとは裏腹に、マモルはテルコにまったく恋愛感情がなく、マモルにとってテルコは単なる都合のいい女でしかなかった。

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「祇園囃子」監督:溝口健二/1953

「祇園囃子」監督:溝口健二/1953

こんなお話

祇園の芸妓・美代春の屋形に、上七軒で芸妓をしていた母を亡くしたばかりの少女・栄子が舞妓志願に訪れる。栄子の父は美代春の昔からの馴染み客だったが、メリヤス問屋の商売が零落し、体調もすぐれずに細々とした日々を過ごしている。美代春の使いとして訪れた男衆に向かって、栄子の保証人にはならないと言う。しかし、栄子の熱意に負けた美代春は彼女を仕込む決心をした。

★レビュー★

1953年と、溝口

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角川映画祭「犬神家の一族」

角川映画祭「犬神家の一族」

ただいまシネリーブル梅田で開催中の「角川映画祭」。

今回の目玉作品である「犬神家の一族」、ようやく観に行けました!

とは言っても、その目玉である"4Kリマスター版”は、上映劇場が限られており、残念ながらシネリーブル梅田は"2K”でしたが・・・。

ですが、角川映画の名作を映画館で観られる貴重な体験。
DVD鑑賞とは、やっぱり違うな〜♪

美麗で鮮やかな色彩

映画館で見応えのあった点といえば、

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「きのう何食べた?」監督:中江和仁/2021

「きのう何食べた?」監督:中江和仁/2021

<こんなお話>

雇われ弁護士の筧史朗(シロさん)とその恋人で美容師の矢吹賢二(ケンジ)にとって、2人でとる夕食の時間が日々の大切なひとときとなっている。ある日、史朗の提案で、賢二の誕生日プレゼントとして京都旅行に行くことに。賢二は京都を満喫していたが、道中に史朗からショックな話を切り出されてしまう。この京都旅行をきっかけに、2人はお互いの心の内を明かすことができなくなってしまい……。

<レビュ

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「雁の寺」監督:川島雄三/1962

「雁の寺」監督:川島雄三/1962

こんなお話

京都の孤峯庵と呼ばれる塔頭の和尚、北見慈海は、愛人里子を密かに囲っている。寺の小僧である13歳の慈念は和尚から厳しくあたられる。そんな慈念に里子は次第に同情し歩み寄る。ある日、慈海が碁を打ちに出かけた間に檀家が亡くなり葬儀を行なわなくてはならなくなったが、慈海が帰ってこない。

レビュー

禅寺を舞台に、色欲に溺れた坊主と、その愛人、虐められる小坊主の3人の関係を描いた作品です。

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