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55年前、人工授精を考える。 「炎と女」監督:吉田喜重/1967

こんなお話

造船技師・伊吹真五と立子の間には一年七ヵ月のひとり息子鷹士があり、家庭は一見したところ幸福そうに見えた。だが鷹士は人工受精によって生れた子供で、それが夫婦の間を微妙なものにしていた。この家には、真五の友人の医師で、人工授精の施術者だった藤木田と、かつてその弟子だった坂口と妻のシナが出入りしていたが、真五は当時、貧しい医学生だった坂口が精子の提供者なのを知っていながら交友関係を結んでいたのだった。


★レビュー★

人工授精がテーマになっている本作。

当時はセンセーショナルな話題だったんだとは思いますが、不妊治療が一般化して久しい現代においては、かなりリアリティのある内容でもあります。

とはいえ、人工授精そのものがどうのこうの、っていうよりは、子を産む母、そこにおける父の不在、血における親子関係など、それぞれの関係性の揺らぎが鍵になっていて、「あなたの父親はいないの。わかるわね。」と子供に執拗に語りかける岡田茉莉子扮する母が、なんとも恐ろしくも見えます。

時間軸が解体され、再構築されている無時間性が、登場人物の心の所在をより複雑に見せているよう。

多彩なキャラクター、それぞれの個性が際立っているので、きっと色々な人が見て共感できるところがある一本なんじゃないかと思います。

吉田喜重らしい画面の作りで、子目線で回転するカメラなんてのも面白い。

木村功の、静かでいながらも内に燃え、時に焦る感じが、すごく良かったです。

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炎と女
1967/松竹

<スタッフ>
監督:吉田喜重
脚本:山田正弘 、 田村孟 、 吉田喜重
製作:織田明
撮影:奥村祐治
美術:佐藤公信
音楽:松村禎三
<キャスト>
木村功
岡田茉莉子
小川出
日下武史
小川真由美
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