マガジンのカバー画像

小説「北の街に春風が吹く〜ある町の鉄道存廃の話〜」

33
北海道中央部に位置する小さな町に降りかかる鉄道ローカル線の廃線問題。街の衰退を危惧する役場では鉄道会社との交渉に追われる。そんな中、役場に勤める職員から語られた鉄道再興のアイディ…
運営しているクリエイター

#小説

小説「北の街に春風が吹く~ある町の鉄道存廃の話~」第1話ー①

第一話 列車に乗ってでかけよう 「明日のことなんだけど、十時に沼太駅前で待ち合わせでいい…

ともひろ
1年前
4

小説「北の街に春風が吹く~ある町の鉄道存廃の話~」第2話-①

・第二話 列車のふたり  北海道の沼太町は朝日川市から西に車で一時間ほどの山あいにある小…

ともひろ
1年前
1

小説「北の街に春風が吹く~ある町の鉄道存廃の話~」第2話-②

・第二話 列車のふたり  僕が喜ぶそのテンションの高さに吉田さんの目じりが少しあがったこ…

ともひろ
1年前

小説「北の街に春風が吹く~ある町の鉄道存廃の話~」第2話-③

・第二話 列車のふたり 「どうしてこっちに帰ってらっしゃったの? 東京や札幌には楽しいこ…

ともひろ
1年前

小説「北の街に春風が吹く~ある町の鉄道存廃の話~」第2話-④

・第二話 列車のふたり  僕が落ち込んでいる傍らで彼女は老夫婦と話を続けている。列車につ…

ともひろ
1年前
2

小説「北の街に春風が吹く~ある町の鉄道存廃の話~」第2話-⑤

・第二話 列車のふたり 「春待食堂…」僕はもう一度チラシを眺めながら読み返した。北海道の…

ともひろ
1年前
1

小説「北の街に春風が吹く~ある町の鉄道存廃の話~」第3話-①

第三話 動物園でデートしよう  深河駅で降りて、朝日川行きの特急ルピナスに乗り換える。ここでも久しぶりに乗ったルピナス号の車両が十両もあることに驚かされる。 「私、よく考えたら乗車券しかもってないけど、これ特急だから特急券もいるんじゃないの?」 沼太駅で買った切符を見ながら吉田さんが僕に尋ねる。 「あ、それね、特急券は要らなくなったって親父が言ってた。自由席だったら、この定期だけで乗れるって。特急券はなくなって、どうしても座りたい人が指定席の指定券を別に買えばいいんだ

小説「北の街に春風が吹く~ある町の鉄道存廃の話~」第3話-②

第三話 動物園でデートしよう 「ありがとう、大吾。試しに北曙駅からレンタサイクルに乗って…

ともひろ
1年前
1

小説「北の街に春風が吹く~ある町の鉄道存廃の話~」第3話-③

第三話 動物園でデートしよう 僕たちは朝日山動物園の最寄り駅である北曙(あけぼの)駅で初…

ともひろ
1年前
1

小説「北の街に春風が吹く~ある町の鉄道存廃の話~」第3話-④

第三話 動物園でデートしよう  色々な旗を確認しながら走ったこともあり、退屈もせずあっと…

ともひろ
1年前

小説「北の街に春風が吹く~ある町の鉄道存廃の話~」第3話-⑤

第三話 動物園でデートしよう                 * 「デートはどうだったの…

ともひろ
1年前

小説「北の街に春風が吹く~ある町の鉄道存廃の話~」第4話-①

第四話 存続協議会 その1 「以前はここらへんにも鉄道が走ってたんですよね」  吉田さん…

ともひろ
1年前
3

小説「北の街に春風が吹く~ある町の鉄道存廃の話~」第4話-②

第四話 存続協議会 その1 「ところで、あかりさんはどうして地元に帰ってきたの? 少し前…

ともひろ
1年前
2

小説「北の街に春風が吹く~ある町の鉄道存廃の話~」第4話-③

第四話 存続協議会 その1                 *  会議は沼太町役場で行われた。すでに五月だというのに、三月末に降った大雪の影響で役場の敷地には、まだ残雪が残っている。  役場の会議室には瑠萌線沿線の首長と北海道鉄道の幹部が一同に会した。ただし、今回の会議では瑠萌市長が前回の会議を最後に協議会から抜けたために沿線自治体の席がひとつ減り結束が弱くなったように見える。  まず、主催者である北海道鉄道からのあいさつ。担当者から瑠萌線の廃止を決めた経緯、現在の路