心の栄養「ストローク」とは
心理学に「ストローク」という言葉があるらしい。
もともとは「撫でる」とか「さする」という意味の言葉だが、心理学的な「ストローク」とは、言語・非言語全て含めて「存在を認める行為」のことを指すそうだ。
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私は以前勤めていた病院で、同じ診療科にいた看護師Aさんに、1年以上にわたり過度の嫌がらせを受けていたことがあった。
初めは仲良くしていたつもりだったが、時間が経つに連れ私への態度が徐々におかしいと感じるようになっていったのだ。
元はと言えば、途中で入ってきた同じ診療科の新しい受付さんに対しての態度がきつかったことが始まりだった。
確かにその受付さんは少しおっとりとした方だった。
それがイライラするんだと私には分かったが、次第に受付さんは態度の悪い看護師Aにビクビクするようになっていった。
私はそんな受付さんをフォローした。
きっとそれがまた気に入らなかったのだろう。
次第に私に対しても同じような扱いをするようになっていったのだ。
その看護師Aは、当たりがキツいと院内でも有名な人で、自分が気に入らない相手にはとことん嫌がらせをする人だった。
確かに仕事はできる。
患者さんに対しても丁寧。
しかし、医療はチームプレイだ。
特に私が所属していた診療科はとても忙しく、午前だけでも60人程(多い時は100人以上)と多くの患者さんが来院される。
その中でテキパキと診療するには、受付さん・看護師さん・私のような医師事務、そして医師の全てのスタッフが一丸となって臨まなければ、時間の遅れも出るし、うまく回らずぐちゃぐちゃになってしまうのだ。
そんなバタバタの外来の中でも看護師Aは、私や受付さんに嫌がらせをしてくるのだ。
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それはまさに「存在を認めない行為」だった。
私の人生において、看護師Aは初めて出会った〝モンスター〟であった。
昔勤めていたブラック会社の社長も相当なブラックだったが、彼女はまた種類の違う『得体の知れない生き物』のようだった。
下に着く看護師さんを片っ端からいじめていたし、彼女のせいで辞めた看護師さんも何人もいた。
部長先生が看護師Aに対し、再三注意を促していたにも関わらず、彼女は態度を改めなかった。
と言うより、無理だったのだと思う。
それが彼女なのだから。
私は1年以上にわたり看護師Aの嫌がらせに耐え続け、とうとうもう限界を超えたと思い、異動願いを上司に申し出たことを部長先生に伝えた。
すると部長先生は看護部長の元へ行き、戻ってくると私にこう言ったのだった。
「看護師Aを出禁にしました。だからあなたはここにいて下さい。もちろんAには、ただの異動ということにすると看護部長と相談して決めました」
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「お疲れ様」と言う。
「お疲れ様」と返す。
相手が分からなかったら教えてあげる。
教えてもらったら感謝する。
仲間が大変だったらフォローする。
助けてもらったらお礼を言う。
そんな当たり前のことが全てなくなってしまった世界があるとしたら、人は果たして生きていけるのだろうか。
これらのことを看護師Aは全くもってしなかった。
同じような人間が他にもいた。
別の診療科の看護師Bと、私と同じ業種のサブリーダーCだ。
ふたりもまた〝モンスター〟だった。
彼女達にも散々な目にあわされた。
ーー類は友を呼ぶ。
彼女達は気があった。
嫌がらせが得意で、気に入らない人物に対してはそれがたとえ医師であっても容赦ない。また人の悪口を言うのが趣味という共通点がある。
そのくせ部長クラスの医師や看護師長さんには、いつもニコニコ接しているのを目の当たりにしてきた。
自分の嫌なものは全て排除しようとする。
自分の周りには自分が気に入った物や人だけを置いておきたいのだ。
そうやってずっと生きてきたのかと思うと、〝嫌い〟を通り越して〝哀れ〟に思う。
***
私が辞めたあとも、3人の〝モンスター〟達はまだ病院で勤務している。
自身の診察の際、院内でチラッと顔を見てしまった時などは、今でもやはり嫌な気持ちになる。
人はそんな簡単には、過去の嫌な出来事を頭から消し去ることは出来ない。
当時一緒に闘った受付さんは、今でもその病院でずっと頑張っている。
モンスター達とは真逆で、彼女は見かけるとホッとする存在だ。
看護師Aとはほとんど関わらない部署で、生き生きと逞しく成長し、今ではなくてはならない存在となっている。
【ストロークとは】
ストロークとは、心理学の上では「自己および他者の存在を認める働きかけ」と定義づけされている。
ストロークを与えられると、心が満ち足りて、本来の自分らしさや人間らしさを取り戻すことができる。
ストロークが多ければ多いほど、心も表情も豊かになり、イキイキとしてくる。
人はストロークという〝心の栄養〟なしには、決して幸せに生きることはできない。
ストロークを得て、満足感や充足感や喜びを体験することができる。
人間は他人からその存在を認められることにより、喜びを感じ、やる気を出すことができるのである。
〝モンスター〟達はきっと「ストローク」不足なのだろう。
彼女達が心から幸せそうに笑っている顔を見たことがない。
いつも常にどこか怒っているような、不機嫌な顔をしている。
〝負のオーラ〟が漂っているのだ。
ストロークを人に与えないから、自分も与えられないのか。
ストロークを貰えないから、ストロークを与える人間になれないのか。
どちらにせよ、私にはもう関係のない人達だ。
彼女達と出会って、ひとつだけ良かったことがある。
それは、
〝いじめられる立場の気持ちが分かった〟
ということだ。
私はこの事を決して忘れない。
人を幸せにすることが、自分の幸せに繋がるんだということを、ひとりでも多くの人に伝わればいいなと思う。
そんな気持ちでこの記事を書いた。
あなたの心が「ストローク」で満ち溢れた毎日でありますように…。
※最後まで読んでいただき有難うございます!
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