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御朱印GIRLS

24
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#オリジナル小説

vol.21 八坂神社

vol.21 八坂神社

 私たちは八坂神社の能舞台の前。ちょっとした人だかりの中に居た。

「なんか、気持ち悪くなってきた」
「なんで!?」

 さっきより青白くなった絵里加の顔に、驚きが隠せない。
 屋台で食べたのは鶏皮餃子のみ。しかも一カップを半分ずつに分けて食べた。お昼に惣菜も食べたが、胸焼けを起こしたなんてことはないだろう。お腹が減ったわけでもなし。鶏皮餃子を食べてから、一時間も経っていないのだから。
 気持ち悪

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vol.20 大阪・豊国神社

vol.20 大阪・豊国神社

「どうして、いつも裏口にたどり着いてしまうんだろうね」
「いつも同じ方向から来てるからやん。そら、同じところにしかたどり着かんやろ」
「なぜ違う道を行こうとしないんだろうか」
「お喋りに夢中やから違う?」

 行き慣れてしまうと、足が勝手に向かう。喋っているとその慣れに気づかないまま進んで、当初の思惑とは別の道を進んでしまっている。なんて、ざらにあるものだ。 

「なんやったら、ここから表門行ける

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vol.19 神護寺

vol.19 神護寺

 おばちゃんと二人、どれだけの間、バスに揺られていただろう。とうとう二人っきりになった。

「かわら投げ?」
「そう。素焼きのこれくらいのお皿を投げて、厄除けするのよ」

 さっきよりも声を大きくして、話を続けた。おばちゃんは人差し指と親指で円を象って、笑いながら楽しげに返してくれる。
 神護寺は高雄山の中腹にあるお寺で、ここまで来るのにそれなりの時間を要した。それでも話が途切れることなく、お互い

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vol.18 摩耶山天上寺

vol.18 摩耶山天上寺

 六甲山牧場に向かう途中で、時間が空いた。
 月に一度の日帰り旅行。一分一秒も無駄にしたくなくて、二人で近場の観光地を探し歩くことにした。
 スマホ片手にブラブラと歩きながら風景を眺め、時折、手のひらの中のリストをスクロールする。

「お寺があるって! 行って良い?」
「どこ?」
「多分、近く」
「多分って」

 横から呆れ声が返ってきた。だから私は必死でスマホを傾け、地図を指す。

「分かったか

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vol.18 安井金比羅宮

vol.18 安井金比羅宮

 白い短冊・形代を持って並ぶ。こんなに緊張するなんて思わなかった。
 小さな穴を潜る人たちを見ながら、何度も間違えないようにとじっくり観察する。
 潜って、帰ってくる。潜って、帰ってくる。
 悪縁を切り良縁を結んでくれるその行いを、何人も見守る。私だけじゃない。列に並ぶ参拝客の多くの目が、たった一人を見ている。それがまた、私の緊張を増幅させた。
 形代を所狭しと貼りつけられた巨石には、人々の怨念が

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vol.17 橿原神宮

vol.17 橿原神宮

 白い砂利の広がりに、思わず声をあげそうになった。
 白く大きな鳥居は改修中で見れなくて残念だったけど、境内でこんな広がりを目にできるなんて。知らなかった風景に、一気にテンションが上がった。

「まるで平安神宮みたいだね」
「確かに。あそこも真っ白だったね」
「何? その幼稚園児みたいな感想」
「素直に感動してるの!」

 曇り空の下でも白砂利は、ここが聖域であるこを明示している。
 私と愛奈は白

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vol.16 四宮神社

vol.16 四宮神社

「あ、暑い……」

 汗が滴る。真夏日は過ぎ去った、九月八日。まだ、真夏日だった。
 生田神社から歩いて大通りに出たら、影が一つもなくて夏日に曝された。大通りの向こうの、スーツ姿の団体が目に入った。

「ランチか……! 羨ましい!」

 私よりはるかに暑そうな格好をした一団に、羨ましさは募る。湿気臭い視線に気づいたか、そのうちの一人と目があった。とっさに、目を反らした。おもむろに近くにあった、地図

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vol.12 地主神社

vol.12 地主神社

 清水寺に来た、本当の目的。それは。

「地主神社、こっちだ!」
「そうそう! 階段上った上った!」

 縁結び!
 恋人いない! 新しい友達ができない! という悩みが未久にはあるそうで、いや、私にもあるけど。
 階段を上った先の小さな広間で、親子とすれ違う。軽くお辞儀をした先で、やっと境内に着いた。

「本堂、どこ?」
「さあ?」
「まだ階段あるね」

 一先ず階段を上らず、奥に進む。横並びでは

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vol.10 大阪天満宮

vol.10 大阪天満宮

 「久しぶり」なんて挨拶は、合流できない事件で流された。

「今、どこ?」
「2階? の、改札でたところです」
「え? なに出ちゃってんの?」
「も一回入ってきて」

 新年早々のあわあわな事態に、テンパる。横にいる元・バイト仲間は、”仕方ない”というより”なにしてんだ”という口ぶりで、私と電話越しの元・後輩を先導した。やっとおちあって、環状線にのりこんで、天満駅にたどり着いた。

「え? これ、

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vol.9 大神神社

vol.9 大神神社

 大きな鳥居を前に、足がすくむ。

「なんか緊張する」
「はじめてなんだっけ?」
「私は二回目~」

 私を挟んで、友達2人は実に楽しそうだ。

「そうだけど、霊験あらかたっていうじゃん!」
「霊感ないじゃん」
「関係ない、関係ない」

 右そして左から聞こえてくる声に、不安は掻き消された。そのかわり、気分が落ち込む。
 何ヵ月も前から計画していた大神神社参拝。1時間半かけてたどり着いた場所は、思

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vol.8 六波羅蜜寺

vol.8 六波羅蜜寺

 子育飴とかかれたのぼり旗を曲がると、右手に大きな門が見えた。入り口かと思い柵に手をかけると、「そこやないよ」と、おばちゃんに制された。おばちゃんは「あっち」と言って指差しながら、歩を進める。
 私とおばちゃんが一緒に寺社仏閣に行くようになって、おおよそ一年。私はこの小旅行が大好きだった。
 秋も終わる少し前。長袖一枚では寒い季節。半年ぶりの小旅行に心を弾ませていた。

「神社みたいなお寺ですね」

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vol.7 湊川神社

vol.7 湊川神社

 神戸駅を降りて徒歩で約10分。いや、そんなにかかっていないかもしれない。
 秋口だというのに日射しは半端なく、少し歩いただけでどっと汗が吹きでた。暑さのせいで、たった数分をいつもより長く感じている。一人で寺社巡りを始めてそれほど経っていないが、今後、9月の参拝は控えようと思った。焼けるような日差しに対抗しうる体力は、私にはない。

 信号を待っていると、僅差で信号を渡りきった中学生のグループが神

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vol.3 サムハラ神社

vol.3 サムハラ神社

※『サムハラ神社』を読んでいただくにあたり※
参拝に伺ったとき、
指輪守りは授与されていましたので、
授与されていた当時の話に終始しております。
ご理解のほど、よろしくお願いいたします。

***

 スマホを覗く。 お昼も間近。いつの間にかサイレントにしてしまっていたスマホが、光っていた。

「なに?」

 不機嫌に近い声音にも、

《あ、ごめん。起こした?》

 結子が動揺した様子はない。「ご

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vol.2 満足稲荷神社

vol.2 満足稲荷神社

 阪急河原町から平安神宮に歩いて向かう途中で、満足稲荷神社を見つけた。

「満足で稲荷って、すごく縁起良さそうじゃない?」
「稲荷って悪い話も聞くけど?」
「でも、私、氏神さまがお稲荷様なんだよ」
「それは縁起良さそうだわ」

  とりあえず、目的地であった平安神宮を先に参拝することにして、私たちは満足稲荷神社を眺めながら歩を進めた。
 道を忘れないよう、なるべく分かりやすい道順で進む。そのおかげ

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