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忽然と人間が消滅した世界で

もし世界に忽然と自分意外の人間が消えたら
主人公のように世界を旅するとか、自由になるとか、したいことするとか
そんなこと起きるはずなく。実際は迷わずSAN値チェックのダイスが振られる。



家に人が帰ってこず、やけに静かな外。
若干の恐怖を感じ不安になりながらも朝を迎える。
朝になっても人は帰ってこなかった。
焦りを感じメッセージを人に送る。
返ってこない。
電話も出ない。
とりあえず学校だと思い外に出れば人の気配ひとつない。
車も走ってなけりゃ、電車も動いてない。
そんな世界になれば自分は恐怖で崩れ落ち、嫌な静寂の音を聞こえないように耳を押しつぶすだろう。
自分の血の流れる音と心臓の音が聞こえる。
しかし止まぬ静寂。
静寂が大きくなっていく。
押さえても押えても押さえてもうるさいうるさいうるさい…!
鈍く頭痛が起きる。
呼吸が乱れ過呼吸になり、身体中から冷たい大粒の汗が垂れてくる。
きもちわるい。
視界が揺れる。
意識が朦朧とし目の裏の赤がチラリチラリと見え隠れする。
辺りが暗く掠め、視界が狭まり暗転する。


こんな世界じゃもう死にたくても死ねない。
独りで死ぬ怖さを思い知る。
死ぬことがさらに怖くなるんだ。
自分はずっと死にたいと思っていた。
しかし自分を大切にしてくれている人が1人でもいる。
それが歯止めをかけた。
正直死ぬ勇気もなかった。
でもいつ死んでもいいと思っていたし、今でなくても早死したいと思っていた。
生きづらい世の中で生き延びるのは御免なのだ。
最近の若者なんてそんなものだろう。
まあできるなら自分を大切にしてくれる人を見送ってから自分も死のうと、そう思っていたんだが。
今はちがう。
死ねない。
おかしくなるほど死にたいのに、死ねるのに。
死ねないのだ。
怖い。
人がいない広大なこの世界で独りで死ぬ恐怖。
独り取り残されて屍になる恐怖が自分を邪魔する。
なぜ人は自殺をする。
その理由は様々だ。
なぜ人は自殺できる。
それは本当の意味で独りじゃないからだ。
自殺は誰かに先を委ねることができる。
自分がいなくても世界は回る
自分が死んでもいいと思い
逃げるように
許しを乞うように死んでいく。
死は罰で救済なのだ。
自殺ができるのは独りじゃないからである。
誰かに許しを乞い
誰かに追われ
誰かと自分を天秤にかけ
誰かに全てを任せ死ねるのだ。
結局人は独りじゃ生きることも死ぬことも出来ないということだ。


孤独死
一体その孤独はどれほどの孤独で死ねるのだろうか。
本当に孤独で死ねたのか?
自分が孤独だと思い死んだのか?
何故死ねた。
恐怖を感じてもなお死ぬのか。
自分も孤独死するのだろうか…。
現状、孤独死であろうと死ねるのなら本望だ。
しかし餓死も衰弱死も孤独死も突然死も、あまり期待したくない死に方だ。
時間がかかる。
自分は今すぐ死にたいのだ。
だが、すぐ死ねたら世の中そう苦労しない。
今でさえ地獄のような拷問を受けているんだ。
弱るのを待ち死ぬなど、更なる地獄である。
じくじく辛い思いをしながら死を待つなど、希望もクソもない。
いつかの死を気長に待つほど耐えられる自信もない。
自殺もできない。
しかし自分はいつしか命尽きるのだ。
それなら
この先、人が名付けた『孤独死』という孤独で死ねるのならば、それはきっと本望なのだろう。

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