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シリーズ かくれ念仏

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2023年2月の記事一覧

【連載】かくれ念仏/No.9~鹿児島の真宗民語その1~

【連載】かくれ念仏/No.9~鹿児島の真宗民語その1~

鹿児島の真宗民語

鹿児島の開教使がもっとも痛感した障害は言語の壁であったという。
現代においても薩隅方言がむずかしいというのはよく聞く話。
訳の分からない言葉を浴び続ける日々に辟易しただろうことは想像だに難くない。それはさながら国外開教である。

しかし、鹿児島には、真宗との邂逅によってうまれた独特の真宗民語(門徒ことば)もある。

土徳の籠るそれらの言葉は、〝真宗〟と〝鹿児島〟という、形而上下

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【連載】かくれ念仏/No.8~甑島の「花見」~

【連載】かくれ念仏/No.8~甑島の「花見」~

甑島の「花見」

甑島の手打には禁制の昔から伝わる花見という行事があったという。

4月20日前後、慶良間つつじの花盛りの頃、一同寄り集まって酒肴と語らいをも楽しむ一日の行楽である。

この行事のメインは『中祖伝勧録』なる、蓮如の御一代記を30座に分けた書き物を、上手な読み手に読ませて、一同熱心に聴聞することであり、この由来は御出張を装った法座であったと思われる。

郷土史家の松田利文氏の著書『ふ

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【連載】かくれ念仏/No.6~谷山の食い逃げ~

【連載】かくれ念仏/No.6~谷山の食い逃げ~

谷山の食い逃げ

2017年、縁あって、鹿屋市花岡の或る古老に郷土史にまつわるお話を伺った。

氏の出自は、大川内という御家であり、古くは熊本の細川家の家臣であった。島津貴久が人吉を攻めた折、細川は、豪傑で知られる大川内一門約1000人を人吉に遣わした。これに対し貴久は、大川内の島津方への引き抜きを企む。これは大川内にしてみれば、一家の命運をかけた選択を迫られたわけで、喧喧囂囂あったが、ほとんどが

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