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アート思考の実用化方法

こちらの記事で新しい思考法、「アート思考」が取り上げられています。

このアート思考については確立された定義はありませんが、記事によると以下のような定義に集約されるだろうとあります。

・アートの創造プロセスから学び、ビジネスに活用する
・課題解決ではなく、自己動機から出発する
・既成概念を超えたイノベーションを目指す
・不確実性の時代に求められる

本日はこのアート思考の実用化方法についてです。

既存のサービスやプロダクトがコモディティ化し、Facebook、Uber、Airbnbに代表されるように限界費用がほぼゼロに近いところで巨額の利益を生み出している現状を踏まえると、今までの思考法では通用しないというのも納得できます。かく言う私のいるIT業界もGAFAの台頭によりあっという間に勢力図が塗り替わりました。自社内においても高い危機感から従来のInnovativeというう単語に合わせて、Disruptive(破壊的な)もよく見かけるようになり、会社やサービスの破壊的な変革を推し進めるようとするダイナミズムも少なからず実感しています。いずれにしてもInnovativeにしても、Disruptiveにしてもそれが実現された世界が早くやって来ないと白けてしまいます。

そこで改めてアート思考ですが、恐らくは、もはやInnovativeもDisruptiveも超越して「イっちゃってる」アイデアを生み出し、可視化をサポートする思考法と考えています。思えば私がAmazonを初めて利用したのが2002年、あの頃から送料が破格でクレイジーなサービスでした。更にその裏では後にクラウドサービスを席巻するAWSの開発と実証が進んでいたのですから、更に輪をかけてぶっ飛んでいたわけです。AppleについてもiPhoneはいわずもがなですが、iMac、iPod、Macbook Air、iTunes、市中のApple Store等など、次々に新しいものを生み出し業態が製造業なのかサービス業なのかもはや定義不要の、唯一無二の絶対的な企業となりました。ビジネス面でのアーティスティックな成功体験はこの辺が引用されてくるかと思います。一方でアートそのものと言えばわかりやすいところで、変幻自在のパブロ・ピカソの作品であったり、安藤忠雄の圧倒的なコンクリートの建造物であったり、人に「感動」を与えて人を突き動かすきっかけを与えるようなもの、この辺もアート思考を定義し、考える上では参考になるではないかと考えています。

しかしいずれにしてもビジネスは一人では成立しないので、どうしても他者を動かす必要があります。私はこの「アート思考」の記事を読んだ時に、私が昔から大切にしている「力」と掛け合わせることによって、強大なパワーを持ちうると直感的に思いました。その力とは「メディア力」です。

メディア力とは、「何を言うかより、だれが言うか?」
自分の発言がとどく、影響力や信頼性だ。

まったく同じ「宇宙人発見」の5文字のニュースを流しても、東スポの1面が言うのと、NHKの7時のニュースが言うのとでは、人に与える印象がまったく違う。同じ5文字を言っているのに、場合によっては、信じるか信じないかさえ違ってくる。
人間も同じ、何を言うかより、だれが言うか。相手から疑われているときは、何を言ってもどう言ってもだめ。それは、自分というメディアの信頼性が落ちているからだ。その状態は、壊れたスピーカーで叫んでいるように、まったく相手に届かない。言葉をとどけるには、まず、スピーカーを直す、つまり、自分という人間への信頼回復が必要だ。
先にメディア力を直し、それから言葉がとどく。社会という海原に漕ぎ出すにあたって、私が、いちばん大事だと思うのが、この「メディア力」だ。
(『ほぼ日刊イトイ新聞-おとなの小論文教室。』2006年11月8日刊「Lesson324 人を動かすということ」より引用)

「この人の言う事ならやってやる」とみんなを納得させて、人を上手に動かせる人がいます。同じことをAさんと、Bさんが言っても、BさんではダメだけどAさんが言うと周りが動いてくれるということもよくあります。それはAさんに「メディア力」が備わっているからだと思います。長く仕事をやっていると、一時的にそういう無双状態に入ることがありますよね。実績を買われ周りからの信頼が最高に高まり、仕事が何でも回せてしまう状態。

アート思考はこういう無双状態にある人が備えると最高に効果を発揮すると思います。この状態にあると、言葉足らずでも周りは動いてくれます。漠然としたイメージを伝えるだけでも右腕が動いてくれます。この言葉足らずを、アート思考が補い、その人の「動機」「理想」を具現化し、可視化することができれば、大きな、新しい仕事を生み出すことができると思います。しかし! 残念ながら、人が変わるなど外部環境が変わることで、無双状態はスーパーマリオのスターのようにいつか終わりが来ます。無双状態が長く続かないが故に、アート思考によってプロセスをショートカットする、つまり早く具体化し成果を急ぐ必要があると思うのです。AIなどによって可視化をサポートすることで(「俺のイメージはこう!」みたいなものをすぐにアウトプットとして出してくれるもの)、ますますアート思考は実用性を帯びてきます。

またアート思考の対極にロジカルシンキングやクリティカルシンキングが位置づけられていますが、メディア力を獲得するにはこうした論理思考が必要になりますので、つまるところそれぞれは相互補完の関係にあり、一方が欠けると期待する成果が得られないと思います。

結論
・アート思考はロジカルシンキングと相互補完関係にある
・アート思考はメディア力を持った人が最大効果を得られる
・思考法も良いですが、実際のアートに触れる機会も増やしましょう

最後に蛇足ですが、一日中「イシューは何か?」と誰かを問い質している人よりは、アートや右脳的思考に造形が深くて、何を言い出すか分からない面白味を含んだ人の方が、一緒にやりたいなという気持ちになりますよね。ロジカルに説明できてしまうと答えありきになってしまい、テンションが下がります。単純に、純粋に、面白そうなものに関わりたいという欲求は多くの人にあると思いますので、アート思考がその面白そうなものを可視化できるサポートとなるならば、実用化は加速します。

いつも読んでいただいて大変ありがとうございます。