リブリオーレ

皆様初めまして。私はしがない物書きのリブリオーレという者です。 私の手掛ける物語をどう…

リブリオーレ

皆様初めまして。私はしがない物書きのリブリオーレという者です。 私の手掛ける物語をどうぞご観覧ください。 XやYouTubeでも活動しておりますので、そちらも見ていただけると幸いです。

記事一覧

御伽噺

遥か昔、月が最も近づく国があった。 ーーーー年の14番目の星の日、一人の子供が産まれた。数年後、子供は星の輝きを瞳に宿した少年に育った。 少年は物語が好きだった。…

リブリオーレ
1か月前

笑顔

ここは笑顔の国。 国民みんなが笑顔を絶やさない素敵な国です。 男の子も女の子も毎日笑顔です。 パパもママも先生も近所のお爺さんもお婆さんもみーんな笑っています。…

リブリオーレ
2か月前
2

唸り声

僕の家には入れない部屋がある。 隠し部屋というわけじゃない。玄関からリビングまでの廊下の真ん中、左側の壁に扉がついている。板が打ちつけてあったり、お札が貼ってあ…

300
リブリオーレ
2か月前

異界酒

夜ってのは縁起が良くて好きだ。 どいつもこいつも酔っ払ってバカやってる。笑って泣いて怒鳴って、お祭り騒ぎを毎日やってるんだから。 そういう訳で、俺はいつものように…

300
リブリオーレ
3か月前
2

私は幼い頃から蟻が嫌いでした。 小さく蠢く、黒光りする粒を見ると鳥肌が立ち、それは本当に不愉快なものでした。 地に落ちた甘い菓子に群がり、生き絶えた虫の骸を運び、…

リブリオーレ
3か月前
7

電脳書斎にて、

 ある夜に、星空を眺めていた。そして、電子の宇宙に飛び込んで、沢山の星を集めて、無限に広い小さな書斎を作った。  数多の星が持つ夢幻の物語を眺めながら、なんて面…

リブリオーレ
3か月前

御伽噺

遥か昔、月が最も近づく国があった。

ーーーー年の14番目の星の日、一人の子供が産まれた。数年後、子供は星の輝きを瞳に宿した少年に育った。

少年は物語が好きだった。

家族や村の人から沢山の物語を聞くのが少年の日課だった。

とある国の王子と姫の物語
竜と戦う聖者の話
王国の騎士団の盛衰
妖精と少年の冒険
森に住む小人の小噺
悪魔と博士の悲劇
古い神々が語られる神話
そして、近所のちょっとした噂

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笑顔

ここは笑顔の国。

国民みんなが笑顔を絶やさない素敵な国です。

男の子も女の子も毎日笑顔です。

パパもママも先生も近所のお爺さんもお婆さんもみーんな笑っています。

朝も昼も夜も、どんな時間でも笑顔なのです。

王様も大臣も、店主も店員も、みんな等しく笑顔を欠かしません。

警察官も犯罪者もいつでも笑っていますし、消防士やお医者さんも仕事中でも笑顔のままです。

火の中にいる子供も、手術中の患

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唸り声

僕の家には入れない部屋がある。
隠し部屋というわけじゃない。玄関からリビングまでの廊下の真ん中、左側の壁に扉がついている。板が打ちつけてあったり、お札が貼ってあったり…なんて事はなく、ごくごく普通にドアノブが付いていて、しかも鍵だってついていない。

だけど、なのに。その扉を開ける事はできない。僕だけじゃない。家族のみんなも、外から来たお客さんも、誰も開ける事はできない。もう二度と開けられない。

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異界酒

夜ってのは縁起が良くて好きだ。
どいつもこいつも酔っ払ってバカやってる。笑って泣いて怒鳴って、お祭り騒ぎを毎日やってるんだから。
そういう訳で、俺はいつものように職場の連中と何軒もハシゴしてた訳なんだが、ついにみんな帰って俺一人になっちまった。で、仕方がないから俺も渋々帰る事にしたんだ。
カツカツ、カツカツ。
明るくて賑やかな繁華街を抜けて、街灯の少ない夜道を歩く。暗がりには誰もいやしない。

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私は幼い頃から蟻が嫌いでした。
小さく蠢く、黒光りする粒を見ると鳥肌が立ち、それは本当に不愉快なものでした。
地に落ちた甘い菓子に群がり、生き絶えた虫の骸を運び、暗闇の虚へと誘う様が、私は不気味でたまりませんでした。

ある年の夏のはじめ頃の事です。私は小学校から歩いて一人で帰っていました。私が暮らしていた田舎町はどこもかしこも田畑があるばかりで、畦道には雑草が青々と茂っていました。
少し涼しさは

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電脳書斎にて、

 ある夜に、星空を眺めていた。そして、電子の宇宙に飛び込んで、沢山の星を集めて、無限に広い小さな書斎を作った。
 数多の星が持つ夢幻の物語を眺めながら、なんて面白い世界なのだろうと、一人でつぶやいた。

 どこか遠くの街角に、ある噂が立っていた。
「見覚えのないURLが知らない誰かから送られてくる。リンクを踏むと《電脳書斎》というページに飛ぶらしい。その書斎には眼鏡をかけた若い男がいて、一人で淡々

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