リブリオーレ

皆様初めまして。私はしがない物書きのリブリオーレという者です。 私の手掛ける物語をどう…

リブリオーレ

皆様初めまして。私はしがない物書きのリブリオーレという者です。 私の手掛ける物語をどうぞご観覧ください。 XやYouTubeでも活動しておりますので、そちらも見ていただけると幸いです。

最近の記事

御伽噺

遥か昔、月が最も近づく国があった。 ーーーー年の14番目の星の日、一人の子供が産まれた。数年後、子供は星の輝きを瞳に宿した少年に育った。 少年は物語が好きだった。 家族や村の人から沢山の物語を聞くのが少年の日課だった。 とある国の王子と姫の物語 竜と戦う聖者の話 王国の騎士団の盛衰 妖精と少年の冒険 森に住む小人の小噺 悪魔と博士の悲劇 古い神々が語られる神話 そして、近所のちょっとした噂話。 いくつもの話を聞いた少年の頭の中はあっという間に物語でいっぱいになった。

    • 笑顔

      ここは笑顔の国。 国民みんなが笑顔を絶やさない素敵な国です。 男の子も女の子も毎日笑顔です。 パパもママも先生も近所のお爺さんもお婆さんもみーんな笑っています。 朝も昼も夜も、どんな時間でも笑顔なのです。 王様も大臣も、店主も店員も、みんな等しく笑顔を欠かしません。 警察官も犯罪者もいつでも笑っていますし、消防士やお医者さんも仕事中でも笑顔のままです。 火の中にいる子供も、手術中の患者さんも、ずーっと笑顔のまんまです。 パパとママは喧嘩をしててもずっと笑ってま

      • 唸り声

        僕の家には入れない部屋がある。 隠し部屋というわけじゃない。玄関からリビングまでの廊下の真ん中、左側の壁に扉がついている。板が打ちつけてあったり、お札が貼ってあったり…なんて事はなく、ごくごく普通にドアノブが付いていて、しかも鍵だってついていない。 だけど、なのに。その扉を開ける事はできない。僕だけじゃない。家族のみんなも、外から来たお客さんも、誰も開ける事はできない。もう二度と開けられない。 無視する事はできなかった。 何故なら、扉から唸り声が聞こえるからだ。 僕の家

        ¥300
        • 異界酒

          夜ってのは縁起が良くて好きだ。 どいつもこいつも酔っ払ってバカやってる。笑って泣いて怒鳴って、お祭り騒ぎを毎日やってるんだから。 そういう訳で、俺はいつものように職場の連中と何軒もハシゴしてた訳なんだが、ついにみんな帰って俺一人になっちまった。で、仕方がないから俺も渋々帰る事にしたんだ。 カツカツ、カツカツ。 明るくて賑やかな繁華街を抜けて、街灯の少ない夜道を歩く。暗がりには誰もいやしない。 俺は酒を呑むのが好きだ。 酔ってる間は嫌な事を忘れられるから、なんて言う奴もいるが

          ¥300

          私は幼い頃から蟻が嫌いでした。 小さく蠢く、黒光りする粒を見ると鳥肌が立ち、それは本当に不愉快なものでした。 地に落ちた甘い菓子に群がり、生き絶えた虫の骸を運び、暗闇の虚へと誘う様が、私は不気味でたまりませんでした。 ある年の夏のはじめ頃の事です。私は小学校から歩いて一人で帰っていました。私が暮らしていた田舎町はどこもかしこも田畑があるばかりで、畦道には雑草が青々と茂っていました。 少し涼しさは残るが日差しは強く、日陰なども近くにはありませんでした。 家までの道を半分過ぎた

          電脳書斎にて、

           ある夜に、星空を眺めていた。そして、電子の宇宙に飛び込んで、沢山の星を集めて、無限に広い小さな書斎を作った。  数多の星が持つ夢幻の物語を眺めながら、なんて面白い世界なのだろうと、一人でつぶやいた。  どこか遠くの街角に、ある噂が立っていた。 「見覚えのないURLが知らない誰かから送られてくる。リンクを踏むと《電脳書斎》というページに飛ぶらしい。その書斎には眼鏡をかけた若い男がいて、一人で淡々と物語を読んでいるらしい」と。  名はリブリオーレ。  しがない物書きのリブリ

          電脳書斎にて、