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Aemilia.Arsとわたしたち
イタリア、ボローニャにあるAemilia.Arsというレースの教室に通い始めた年だった。ヴェネツィアのサンマルコ寺院裏の趣あるレース店で、初老の店主とレース談義をしたことがある。習うレースの名を問われAemilia.Arsと答えると、10代からレース店で働きレースには詳しい店主であるにもかかわらず、それは知らない名だ、どこのレースだと再び訊かれた。
誰もが知るヴェネツィアレース以外にも、数多
A Bird Without Wings 翼のない鳥
As I sit here by the fireside
I'm turning back the years
I can hear my mother singing in the morning
ソングライター、フィル・コールターの『Gold & Silver Days』には、おそらく万人の幸せの根幹が綴られているのではないだろうか。
『ダニーボーイ』という歌
糸とともに生きることって
月曜の夕方だった。沖縄からやってきた友人と私はまだAemilia Arsの図案と格闘していた。疲れてステッチも間違ってばかりだから、そろそろ今日の分は締めようかと話していた頃、ボローニャの教室仲間のグループメッセージの着信がドキリとするほど続いた。
明日の教室はあるのですか?
えっ!あるの?それって舟で行くということ?
飛び交う会話の全容がよく理解できない。フィレンツェからボ
わたしには自分の頬を愛撫する手がない
「輪舞」と呼ぶ図案へのステッチを4度も試みてしまった。これだけ同じ図案を刺したのは久しぶり、終えた直後の徒労感というか性根尽きたというか、手筋が強ばりアイロンが上手くつかめなかった。
図案を読むというのだろうか、ステッチを始める前に何度も糸の動線を目でシュミレーションする。
陽光のなかで19枚の葉が踊っている。葉っぱがおしゃべりする声も聞えた。あぁ、なんて楽しげなんだろう。ところがいざ刺し始