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本のこと

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2018年4月の記事一覧

分断

分断

「社会」って、何だと思います?

大学の頃、ゼミの担当教授から問われたことがある。当時、社会学部の学生であった僕は、恥ずかしながらちゃんと答えることができなかった。

「社会」とは元々、人々の共同体を指した言葉です。だから、人間が3人以上集まれば、そこは社会になるんですよ。

ほぉ、なるほど。教授の言葉にもっともらしく頷いてみたものの、具体的なイメージはなかなかピンとこなかった。ただ、社会につ

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拝啓、本が売れません。

拝啓、本が売れません。

Fluctuat nec mergitur.

フランス・パリの街の紋章に刻まれている言葉だ。日本語では「たゆたえども沈まず」と訳される。強い風が吹いても揺れるだけで沈むことはない、という意味だ。もともとパリの船乗りたちが使った言葉だったそうだが、歴史を重ねるなかで戦乱や革命を生き抜いたパリ市民を象徴する言葉へと育っていった。

新進気鋭の作家・額賀澪さんが上梓した『拝啓、本が売れません』は、嵐の

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17歳

17歳

勉強よりも素敵で大切なことがいっぱいある。

直木賞作家・山田詠美が25年前に描いた17歳の少年が、あまり良くない自分の成績を見てこぼした言葉だ。ちょっと論点がずれている気もするが、これはこれで正論である。この少年・秀美くんは、同級生に比べてちょっと大人びた一面を持つ。斜に構えていながら言いたいことをはっきりと言ってしまえる姿は、同世代でこの本を初めて読んだときになんだかカッコよく見えたものだ。

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