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「ゲイであることにはかわりないけど結婚も考える」

「今年で23歳になったよ。まわりの友達は、結婚したり、自分の家を建てている人が多い。でも、僕はゲイだから結婚は難しいし、家族のために送金しなければいけないから、自分の家も建てられない。あまり考えないようにはしているけど、正直かなり焦りを感じる」そう話してくれたのは、いつものオンライン英会話の先生。2年前まで歩き方も話し方も女子っぽかった先生は、普通の成人男性のようになっていました。その理由は……。

ゲイであることには変わりない

毎日同じ先生のオンライン英会話を受講して早3年。2年前、セブ島留学の際に初めて会った時、先生は歩き方も話し方もメイクも、女子っぽい感じでした。でも、先日再会したときは、服装も話し方も歩き方も、一般の成人男性のようでした。

「オンライン英会話で話している時は男性っぽいけど、会うと女子っぽいんだよね」と思っていた私は、そのことについて本人に聞いてみることに。

「なぜ歩き方を変えたかって? 前は、かわいくなりたかったし、女性へのあこがれもあった。でも、今はもう24歳だし、年を取った分お父さんみたいな外見になってきたでしょ? だからもうかわいいのは似合わないと思ってやめたんだよ」とのこと。

「ただ、歩き方や外見は変わったけど、中身はなにも変わってない。僕は以前も今もゲイだよ。なにも変わらない。フィリピンはLGBTQに寛容な国だというけど、女装したり、女性のようなふるまいをする人たちをバカにする人たちもいっぱいいる。僕自身も学生の頃、そんな感じだったから笑われたり、からかわれたりした」

子どもの頃想像した理想の自分と現在のギャップ

最近、彼はよく将来の話をします。

「今年で24歳になった。中学や高校の頃は、24歳になったら自分の家を建てて、彼もいて、やりたい仕事について理想の生活を送れていると思っていた。でも、実際は家族に送金しなければいけないから自分の家を建てる余裕なんてない。音楽で成功して有名になりたいと思っていたけど、それも叶えられていない。

まわりの友達は、22歳か23歳で家を建てたり、結婚したりして、次のステージに進んでいるのに、自分だけ取り残されたまま。今の仕事は好きだし、やりがいもある。英語教師でありながら、プロデューサー的なことも任せてもらえることも誇りに思っている。2年前に比べて収入も増えた。

ただ、海外に行ってチャレンジすることはまだできていない。家族も十分に養えているとは言いきれない。
友達は、家族を支える必要がない人が多いから、みんな旅行に行ったり、自分の家を建てたりと、自分のためにお金を使える。でも、僕はそうじゃない。でも、家族を支えることが僕にとって一番大切なことだから、送金をやめることもできない」

自分もいつか好きな人と幸せな家庭を築きたい

結婚についても思うところがあるようで、最近、何回もその話を繰り返します。妹が結婚し、子どもが生まれたことで、さらに結婚について考えることが増えたのかもしれません。

「僕はゲイだから、結婚するのは難しい。もちろん男だから女性と結婚することはできるし、子どもも作れる。女性のことを好きにならないわけじゃない。ただ、本当に稀なんだよ。もし僕が女性と結婚したとしても気持ちは男性に向くから浮気をすることになるんじゃないかと思う。そしたら奥さんになる女性は悲しむでしょ。僕は、妹がいるからそんなふうに女性を悲しませたくない。

ゲイの友達には、女性と結婚した人もいる。僕よりも女性っぽかったのに、女性と結婚したんだ。もちろん相手は彼がゲイであることは知っているし、それを承知のうえで結婚したんだよ。ゲイであっても人間的魅力がある人なら、その人と結婚したいと思う女性もいるからね」

彼は、男女問わず非常にモテるし、女性を好きにならないわけではないから、女性と結婚しようと思えば可能。ゲイであることは隠していないから、相手の女性も納得した上での結婚になるでしょう。ただ、そうなった場合、一時的に奥さんとなる女性と恋愛関係になれても、長い目で見たらやはり好きな男性が別にできるだろうから、結婚を悩むというもの。

結婚を「切望」する本当の気持ち

私は、なぜ彼がそこまで結婚したいのか、正直わかりませんでした。でも、よく考えてみると、彼は結婚をしたいというよりも「自分自身の家族が欲しい」ということなのだと思います。結婚して、人生を一緒に過ごす人がいて、子どもがいて、将来的には孫もできてにぎやかになる。そんな家族をつくりたいのでしょう。そのためには女性と結婚する必要がある、と。

ただ、結婚相手を生涯愛せるかといったら、きっとそれは無理な話で、どこかで本当に好きな男性ができてしまうかもしれない。その場合、女性を裏切ることになるから、結婚できない。もしも、日本でパートナーシップ制度を使えば、家族になることは可能かもしれない。でも、フィリピンではそれが認められない。また、宗教的な観点から、フィリピンで同性同士の結婚が認められる可能性はかなり低い。

好きな人と一緒に暮らし、家族になりたいけど、できない。自分自身の家族を作りたい場合は、女性と結婚しなければいけない。
もしかしたら、自分は一生ひとりきりでいきていかなければいけないのかもしれない。それを思うと、とても気持ちが沈むのでしょう。

「話を聞いてくれてありがとう。今は、仕事や夢にフォーカスするよ」

ひとりで生きるか、家族を持つか

人生で、先の見通しが立たないことは非常に不安だと思います。とくに、家族について人一倍愛情を注いでいて、いつかは自分自身の家族を持ちたいと思っている彼にとっては。

結婚するかしないかを選択できる立場の私からしたら、「なぜそんなに結婚にこだわるの?」と思ってしまうところもありましたが、結婚を選択できない、できるけどかなり難しい選択となる彼からしたら、非常に難しい問題。

フィリピンでは、一度結婚したら離婚の手続き(結婚を無効化する)はすごく大変で、そのため籍を入れず生活する夫婦もいます。実際に、私の友達は子どもがいるけどそのような夫婦生活を送っています。
男性同士で一緒に住むこともできるし、孤児院の子どもをひき取ったり、養子を育てることも可能なのかもしれません。その方法も考えてはいるでしょう。ただ、やはり自分自身の血がつながった子どもが欲しいという気持ちもあるでしょうし、本当に難しいなと思います。

彼がこの先どういう選択をするのかわかりませんが、もう少し見守っていこうと思います。





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