教材編集という仕事

社員2名の数学・理科教材の編集プロダクションで代表兼高校物理・化学・情報Ⅰ担当兼経理担…

教材編集という仕事

社員2名の数学・理科教材の編集プロダクションで代表兼高校物理・化学・情報Ⅰ担当兼経理担当の中村が投稿していきます。教材の編集・執筆・校正の仕事に興味や関心を持っている人向けに,情報を発信していければいいですね。

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ライターの紹介

みなさん,こんにちは。このたびnoteで「教材編集という仕事」を開設しました。今回はライター(中村)についての紹介です。 私は現在,社員2名(私を含む)の教材編集プロダクションで代表兼高校物理・化学担当をしています。私以外には数学担当者がいます。 私は大学時代には物性物理学を専攻していました。大学で教員免許を取り損ねたこともあって,大阪の学習塾に就職して高校生に数学と物理を教えていました。その後,岡山の教育出版社の子会社に転職して,通信教育教材の高校物理担当として教材編集

    • 教材の誤りをなくすときの誤解の話

      教材には内容の誤りがあってはいけないので,版元(出版社などのこと)や教材編集者は誤りをなくすために労力をかけます。ただ,労力のかけ方に誤解があると思うときがあります。そこで今回は,教材編集者が教材の誤りをなくそうとするときの誤解について書いていきます。なお,制作を進行する教材編集者の立場からの話であり,「こうすれば校正能力が高まる」といった内容ではありません。 真面目に一生懸命校正する 教材に内容の誤りが発覚したとき,「ちゃんと校正していないからだ」という意見を見かけるこ

      • 著作権侵害を理解してもらえない話

        さまざまな言い訳を耳にした 小中学生向け教材は教材専門のライターが原稿を執筆しますが,高校生向け教材の場合,学校や予備校の先生が原稿を執筆することがほとんどです。学校や予備校の先生の中には,著作権に対する意識が低い人もいます。 私(中村)が知っている話で言えば,原稿執筆を依頼したことはないですが, 「市販教材の『~だ。』を『~である。』に書き換えれば,オリジナル原稿になる」 と大まじめに言った先生がいました。もちろんアウトです。 「2冊の参考書の原稿をそのままくっつけれ

        • 教材編集の業界でのハロー効果の話

          ハロー効果とは マーケティング用語でハロー効果と呼ばれるものがあります。例えば,インフルエンサーがSNSで「これはいい商品だから使っている」と紹介すると,使っていないのにその商品の品質が高いと認識したり,たくさんの有名人が通っている飲食店は,行ったことがなくても料理がおいしいと認識したりすることを指します。 本来は「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」のようなネガティブなケースもハロー効果と言うようですが,マーケティングでは上記のようなポジティブな印象を与えるケースで使われること

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        ライターの紹介

          独立して20年間生き残れた話

          私(中村)が2004年4月に独立して,2024年4月で20年になります。独立直後は3年やってうまく行かなかったら会社員に戻るつもりでいましたから,20年続けられたことは感慨深いです。今回は,独立して20年間生き残れた理由について,振り返ってみます。 高校物理の人手不足が大きかった 独立して20年間生き残れたのは,私が高校物理の仕事ができることが大きかったと考えています。 高校物理は理工系学部への進学を目指す人たちにとって重要な科目です。ただ,複数の取引先の物理担当者から

          独立して20年間生き残れた話

          発売が大きく遅れた教材の仕事の話

          発売が1年以上遅れたことが何度かある 会社員時代,私(中村)がかかわった通信教育教材(通教)や予備校のテキストは,高校生の手元に教材が届く日が決まっているので,いくら制作スケジュールが遅れてもリリースがずれることはありませんでした。 独立後,学校採用教材や模擬試験の仕事を受注するようになりました。学校採用教材は新年度に間に合わせないといけませんし,模試は実施日が決まっているため,やはりリリースが大きくずれることはありません。 一方,書店販売の高校生向け教材や公務員試験

          発売が大きく遅れた教材の仕事の話

          出身大学が重要な人たちの話

          少し前に「高学歴難民」という書籍を読みました。いろいろと思うことがありましたが,ここでは出身大学に焦点を当てて,私(中村)が経験した話を書いていきます。 出身大学を知らない同僚や上司もいた 1996年に私が教材編集者のキャリアをスタートさせたのは通教出版社の子会社で,当時,岡山と東京に編集部があった編集プロダクション(編プロ)でした。編プロでは,出身地や大学時代の専攻についての話になっても,出身大学を聞いたり聞かれたりすることはほぼなかったです。いろいろと話をしているうち

          出身大学が重要な人たちの話

          取引先に送る年賀状の話

          毎年「年賀状を出すかはどうかわからない」 12月といえば,年賀状の準備をする時期です。近年はLINEなどのメッセージアプリやメールで手軽に年始の挨拶ができるため,年賀状を出す人が大きく減ったと聞きます。 私(中村)の場合,毎年「年賀状を出すかどうかわからない」です。出版業界には,年末進行というものがあります。これは,出版社や印刷会社が年末年始の休みに入るため,12月は制作スケジュールが前倒しになることを指します。したがって,12月は仕事が立て込みがちだからです。 取引

          取引先に送る年賀状の話

          ある取引先の派遣社員と仕事をしたときの話

          2023年10月にNTT西日本が,子会社で元派遣社員による個人情報の大量流出があったことを発表しました。さらに11月の報道によると,元派遣社員は逮捕されたのこと。今回は古い話ですが,20年近く前に私(中村)がある取引先の派遣社員の人たちと仕事をしたときの内容です。 版元側の担当者は派遣社員だった 私が独立して編集プロダクションを立ち上げた直後の20年近く前,通教出版社の東京の編集部から仕事を受注しました。この通教出版社は,もともと私が在籍した編集プロダクション(編プロ)の

          ある取引先の派遣社員と仕事をしたときの話

          書店販売教材への違和感の話

          初回に書いたように,会社員時代は通信教育教材(通教)と現役予備校のテキスト・テスト制作の仕事をしていて,独立後に初めて書店で販売されている教材の仕事を担当しました。今回は書店販売教材への違和感について,いくつか書いていきます。 たくさん売れることが目標 携帯電話業界では,新規申込数を増やすだけでなく他社に転出することなく継続して利用してもらわないと,十分な利益が出ません。通教や予備校も同じで,たくさん入ってもらうだけでなく継続受講してもらわないと,十分な学習効果も利益も見

          書店販売教材への違和感の話

          教材編集者になる直前の半年間の話

          1996年10月という実に中途半端な時期に,私は教材編集者としてのキャリアをスタートさせ,2023年10月で27年になります。今回は教材編集者になる直前の約半年間について書いていきます。以前投稿した「遅れてきたバブルを経験したときの話」の間に起こったことです。 最初に就職した会社で経理課へ異動 初回にも書いた通り,最初に就職したのは大阪の学習塾の運営会社で,社員講師をしていました。高校生を教えていましたが,異動で小中学生を教えることになりました。ただ,私がダメ社員だったこ

          教材編集者になる直前の半年間の話

          高校地学の教材編集者の話

          地学教材の需要は大きくない 高校理科の科目には,物理基礎・化学基礎・生物基礎・地学基礎・科学と人間生活・物理・化学・生物・地学があります。 地学基礎は高校でそれなりに開講されていますが,地学基礎の上位科目である地学を開講している高校は少ないです。小規模の高校で理科の先生の人数が少ない場合,地学基礎さえ開講されないこともあるようです。このため,(科学と人間生活を除いた)理科の他科目に比べると,地学教材は需要が大きくないです。 余談ですが,2023年度の信州大学の入試で物

          高校地学の教材編集者の話

          情報Ⅰの共通テスト対策教材を制作する準備の話

          情報Ⅰと大学入学共通テスト 2025年に実施される大学入学共通テストから情報Ⅰが出題されることになり,話題になっています。弊社でも,情報Ⅰの共通テスト対策教材の制作を受注できるように,準備を進めています。仕事のご相談やお問い合わせはこちらから。 実は,現状でも共通テストでは数学の1科目として「情報関係基礎」が出題されています。ただ,2023年1月実施の共通テストの本試験では「情報関係基礎」の受験者数は410名でした。 では,なぜ情報Ⅰが話題になっているかというと,20

          情報Ⅰの共通テスト対策教材を制作する準備の話

          私と教材の校正の話

          校正はいちおう新人研修で教わった 私(中村)が教材編集者のキャリアをスタートしたのは,通信教育出版社の子会社である編集プロダクション(編プロ)でした。中途採用で高校物理の編集担当として入社して,岡山の編集部に配属された後,東京で親会社の中途採用の社員たちと一緒に4日間の編集者研修を受けました。 このとき,紙面の校正に関する研修もありました。見落としやすい誤りや間違いやすい漢字,商品名に対する注意,配慮が必要な表現などを教わりました。ただし,一緒に研修を受けた人たちは,ほと

          私と教材の校正の話

          教材編集がいちばん楽な科目は高校物理と思う話

          私(中村)は,教材編集者としてのキャリアのスタートが高校物理担当で,現在も高校物理の仕事をしています。高校物理だけでなく高校化学や高校数学の仕事もしますし,会社員時代に小中学生向け教材の仕事をさせられたこともあります。 これらの経験から言えることは, 「教材編集でいちばん仕事が楽な科目は高校物理だと思う」 です。この意見の根拠を以下に書いていきます。 小中教材のように教科書の表記や配当漢字を気にしない 小学生向け教材や中学生向け教材では,学校の勉強のサポートのための教材

          教材編集がいちばん楽な科目は高校物理と思う話

          結果的に単価が高い仕事を選んでいた話

          教材の執筆・編集・校正で,ものすごく単価の安い仕事の話をときどき聞きます。ただ,弊社の取引先に関して言えば,とんでもなく安い単価の仕事を打診されることはまずありません。今回はその理由について考えてみました。 小中教材の仕事をしていない 以前書いた理由で,私(中村)は小中学生向け教材の仕事をしていません。たまに打診があっても,「お役に立てなくて申し訳ないです」とお断りしています。とりあえず高校生向け教材を中心に,大学生向けリメディアル(学び直し)教材,公務員試験対策教材など

          結果的に単価が高い仕事を選んでいた話