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出身大学が重要な人たちの話

少し前に「高学歴難民」という書籍を読みました。いろいろと思うことがありましたが,ここでは出身大学に焦点を当てて,私(中村)が経験した話を書いていきます。


出身大学を知らない同僚や上司もいた

1996年に私が教材編集者のキャリアをスタートさせたのは通教出版社の子会社で,当時,岡山と東京に編集部があった編集プロダクション(編プロ)でした。編プロでは,出身地や大学時代の専攻についての話になっても,出身大学を聞いたり聞かれたりすることはほぼなかったです。いろいろと話をしているうちに大学時代の話題になり,なんとなく出身大学を知ることが多かったです。

私が編プロを退職後,元同僚とFacebookでつながって元同僚の出身大学を知ったケースもあります。また,入社直後の直属の編集長は通教出版社から出向の人でしたが,帰任して10年以上たって通教出版社の社長になったとき,公開されたプロフィールを見て出身大学を知りました。

岡山大出身者が多いのは知っていた

ただし,最初に配属になった岡山の編集部では,当時,岡山大出身者が多いのは知っていました。私が配属されたときの高校理科セクションは,私以外のメンバー5名がみんな岡山大出身でした。理科以外でも岡山大出身者が多かったようです。

岡山大出身者の関心は,新入社員が岡山大出身か否かだったようで,中途採用の私が岡山大出身でないのがわかると,私の出身大学には特に関心を示さなかったです。

なお,社内に岡山大の学閥や岡山大出身者だけで集まる飲み会などはなく,ときどき大学トークで盛り上がるだけの人たちでした。早稲田や慶應などの出身者にありがちな強い仲間意識は感じず,「同じ中学校出身」の大学版といったところでしょうか。

出身大学が重要なプロフィールの版元

ここからは独立後の話です。仕事の声をかけてもらった版元を訪問したとき,会議室に通されると,声をかけてもらった社員だけでなく,上司が2人いました。上司の1人から最初に聞かれたのは,
「失礼ですが,出身大学はどちらですか?」
仕事の話をしに行ったのに,中途採用の面接のようでした。

その後も先方の3人は,私に他の社員を紹介するときには「彼は〇〇大学出身で…」と,いちいち出身大学を説明するのでした。私は興味がなかったので適当に聞き流していましたが,この版元の人たちにとって出身大学は重要なプロフィールのようでした。この版元以外にも,やたらと社員の出身大学の話をする版元がいくつかありました。

出身大学だけで新人を優秀と言う上司

さらに別の版元の話です。弊社が仕事を受注する部署に新人が配属され,挨拶のために版元を訪問しました。この新人の社員は名刺交換の後,
「学部と修士課程は〇〇大で,博士課程は□□大でした」
と,聞いてもいないのに日本を代表する難関大の名前を並べて,自己紹介を始めました。経験則で言うと,こういう社員はヤバい場合があり,少し不安になりました。

で,やっぱりこの社員とは何度もトラブルになり,最終的にこの社員の上司と私との話し合いになりました。すると,上司からは,
「彼は優秀な社員だ」
と言われたのでした。

この版元は創業者が一代で大きくした会社で実力主義と思っていたのですが,どうやら出身大学で上司が新人を優秀と言い切る会社のようでした。「本当に優秀な社員なら,私だけでなくページレイアウト業者からも苦情が出るわけないやん」と思いつつ,ものすごくがっかりしたのを覚えています。

結局,トラブルになった社員は弊社の担当から外れ,この取引先の仕事は半分に減ったのでした。なお,この取引先の仕事自体はいまも続いていて,トラブルになった社員はこの件から数年後に退職したと聞きました。

勉強ができる人と勉強しかできない人

ある大企業で新卒採用のときに大学名を不問にしたところ,新入社員が難関大出身者ばかりになった話を聞いたことがあります。私の知るかぎり,仕事ができる人は難関大出身者が多かったです。ただし,難関大出身者というだけでみんな仕事ができたかというと,もちろんそんなことはなかったです。

社会では「勉強ができる人」は必要とされますが,「勉強しかできない人」はそんなに必要とされないのが現実のようです。勉強ができる能力を土台として,より高い能力を身につけられるかどうかが長い人生では重要なのでしょう。「高学歴難民」の書籍を読んで,改めて感じたのでした。

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