見出し画像

私と教材の校正の話

校正はいちおう新人研修で教わった

私(中村)が教材編集者のキャリアをスタートしたのは,通信教育出版社の子会社である編集プロダクション(編プロ)でした。中途採用で高校物理の編集担当として入社して,岡山の編集部に配属された後,東京で親会社の中途採用の社員たちと一緒に4日間の編集者研修を受けました。

このとき,紙面の校正に関する研修もありました。見落としやすい誤りや間違いやすい漢字,商品名に対する注意,配慮が必要な表現などを教わりました。ただし,一緒に研修を受けた人たちは,ほとんどが理系教材の編集担当ではなかったようで,理系教材特有の誤りや校正・校閲の注意点などを教わることはなかったです。

教材校正のスキルは仕事で身につけた

研修から戻って高校物理教材の仕事を始めると,まず先輩が編集を担当した紙面の校正(+校閲)からスタートしました。先輩は自分の仕事がありますから,先輩から初めに校正のポイントの説明を受けて,あとは我流で校正をしていました。

やがて,自分でも編集を担当すると,複数の外部校正者に校正を依頼するようになりました。外部校正者による指摘を確認して,修正が必要な内容は自分の校正紙に転記し,ページレイアウト業者に校正紙を渡して修正を依頼します。このとき,外部校正者と自分の校正内容を比較して,自分が誤りを見落とす傾向を学びました。このように,OJT(On the Job Training)で校正のスキルを身につけていきました。

校正のスキルをOJTで身につけたため,校正の知識が体系化していませんし,高校物理・数学など専門分野が偏っています。そのため,校正を何から教えればいいのかわからないので,他人に校正を教える能力は低いと思います。

教材の校正チェックシートを作ったことがある

教材編集者は自分で校正するだけでなく,校正者の能力を引き出して誤りのない紙面に仕上げることが求められます。高校物理の教材編集を担当していたころ,校正チェックシートを作成することになり,起こりやすい誤りや見落としやすい誤りなどを1枚の紙にまとめました。

ちなみに,校正者に校正チェックシートを渡すとき,
「チェックシートを見ながら校正をすると,かえって誤りを見落とします。まず校正前にチェックシートのチェック項目を読んで頭に入れ,ふだんどおりに校正してください。校正が終わった後にもう一度チェック項目を確認して,チェックを忘れていた項目があれば,その項目を最後にチェックしなおしてください」
と,使い方を説明していました。

親会社の校正講座を修了した人から編集部への電話

私が岡山の編集部で働いていた当時,親会社では社会人向けにも通信教育講座を開講していて,校正講座もありました。あるとき,編集部にかかってきた電話をたまたま私がとると,この校正講座を修了した人でした。
「校正の仕事をしたいと(親会社に)連絡したところ,こちらの編集部の電話番号を教えられた」
とのこと。

親会社から回ってきた問い合わせなので,適当にあしらうわけにもいかず,
「校正を担当できる教科と学年を教えてください」
と聞いたところ,先方はしばらく考えていました。それもそのはずで,教育系出版社が開講しているとはいえ,校正講座は教材の校正を想定しているわけではなく,どの教科・学年の校正ができるかと聞かれても,すぐには答えられないからです。

結局,先方は中学社会ならできるだろうということになり,中学社会の担当者に回したのでした。その後,どうなったかは知りませんが,中学社会は地理・歴史・公民と幅広い分野を扱いますし,地理と公民は時事改訂が多く,実は校正が簡単ではない教科です。

独立直後に物理の校正を受注したとき

私は編プロ勤務から現役予備校の本社勤務を経て独立しました。独立直後,編プロ時代の親会社から高校物理の校正を請け負いました。

このとき,校正紙とともに校正チェックシートを渡されました。上記のように,編プロ時代にチェックシートを制作したので,どのような内容なのか興味がありました。

チェックシートは見覚えがあるものでした。というのも,編プロ時代に私が制作して上司が部分改訂をしたチェックシートそのままだったからです。どうやら私が編プロを離れた後,チェックシートのデータがなぜか親会社にわたっていたようです。

この記事が参加している募集

#編集の仕事

1,189件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?