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小中学生向け教材の仕事はしないと決心した話

小中学生向け教材の仕事はしていない

私(中村)は,高校物理・化学教材の編集者です。現在,弊社には数学担当者がいますが,過去には私自身も高校数学の教材編集をしていて,いまもヘルプで高校数学の仕事をすることがあります。また,2025年度から大学入学共通テストで情報Ⅰが出題されますので,取引先の力になれるように情報Ⅰの仕事の準備を進めています。

私は高校生向け教材の仕事はしていても,小中学生向け教材の仕事はしないです。ただし,過去には小中教材の仕事をさせられたことがあります。

教科書と配当漢字が絶対

教材の編集プロダクション(編プロ)に勤務していたころ,最初は岡山で高校物理教材の編集を担当していました。東京に転勤後,しばらくして前回書いた校閲組織立ち上げプロジェクトを経て,小中教材の編集部に異動になりました。

小中教材の編集部に異動して初めて編集会議に参加したとき,こんな話が出てきました。
「この用語は教科書5社のうち4社でしか扱われていないから,紙面で使わないように」。

もちろん,高校教材でも教科書を参考にすることはよくありますが,小中教材では教科書が絶対でした。ベテランの編集担当者は,各社から発行されている教科書の内容に精通していました。また,小学教材担当の場合,各学年の配当漢字を知っておく必要があります。

教育現場との接点がない

高校教材は,学校や予備校など教育現場の先生が原稿を執筆することがほとんどです。一方,小中教材は教科書や配当漢字へ確実に対応する必要があり,教材専門のライターが原稿を執筆することが多いです。そのため,編プロで小中教材の編集をしていたときは,教育現場の人たちとの接点がまったくなかったです。

あるとき,別の部署から小中教材の編集部のメンバーに対して,塾の授業見学のお誘いがありました。このとき,小中教材の編集部から参加したのは私だけでした。小中教材の編集部では,教科書と高校入試の内容に関心をもっていれば,教育現場に関心を示さなくても仕事ができるからなのでしょう。

編集者ではなく編集作業員

またあるとき,編集部内で仕事でのミスが続き,当時,私が所属していた編集部のメンバー全員が,発注元の親会社から呼び出されました。いろいろとやりとりをしているうち,親会社の編集長が私たちに,
「編集の仕事は好きですか?」
と問いかけたのでした。

このとき「はい」と即答したのは,私だけでした。みんな編集の仕事が好きと思っていたので,ものすごく驚かされたものです。

いま思えば,当時の編集部のメンバーは教材編集者とは名ばかりで,決められたことを決められたとおりにやっているだけの編集作業員のようでした。そんな人たちが編集の仕事が好きかと問われても,何も答えられなかったのかもしれません。

少なくとも私は,編集作業員ではなく教材編集者です。最終的にこんな仕事をするために教材編集者になったのではないと,転職先も決めずに編プロを退職しました。これ以降,二度と小中教材の仕事はしないと心に決めたのでした。

高校教材より小学教材のほうが大変?

ここからは独立後の話です。10年以上前,弊社への売り込みをきっかけに交流が始まったフリーランスの人がいました。高校教材の仕事もできると聞いていたので,ある高校教材の仕事を紹介したところ,
「その仕事は,教科内容が難しくてできそうにない」
と断られました。できない仕事を断るのは,決して悪いことではないです。

やがてこの人との交流はなくなりましたが,あるときこの人がSNSで,
「高校教材の仕事よりも,小学教材の仕事のほうが大変」
と投稿しているのを,たまたま見かけました。できない高校教材の仕事を断れば,小学教材のほうが大変なのは当たり前なんですけどね。この人以外にも,似たようなことを投稿する人をたまに見かけます。



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