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高校地学の教材編集者の話


地学教材の需要は大きくない

高校理科の科目には,物理基礎・化学基礎・生物基礎・地学基礎・科学と人間生活・物理・化学・生物・地学があります。

地学基礎は高校でそれなりに開講されていますが,地学基礎の上位科目である地学を開講している高校は少ないです。小規模の高校で理科の先生の人数が少ない場合,地学基礎さえ開講されないこともあるようです。このため,(科学と人間生活を除いた)理科の他科目に比べると,地学教材は需要が大きくないです。

余談ですが,2023年度の信州大学の入試で物理と地学に出題ミスが発覚したとき,大学側の発表によると,物理(物理基礎+物理)の受験者は1,017名だったのに対して,地学(地学基礎+地学)の受験者は1名だったとのこと。

地学教材は大きく分けて2種類

高校理科の他科目に比べて需要は多くないものの,地学の教材はもちろんあります。大きく分けて2種類です。

一つは,高校の授業で使う副教材です。地学基礎の授業を行う高校はそれなりにありますから,高校向けに授業の演習や復習などに使う教材があります。地学基礎の検定教科書を発行する教科書会社のものが多いですが,教科書を発行していない出版社のものもあります。

もう一つは,大学入学共通テスト対策教材です。2023年度の共通テストの本試験では地学基礎の受験者が43,070名で,物理基礎の17,978名よりも多いです。そのため,書店に行くと地学基礎の対策問題集が並んでいます。また,共通テスト対策模試では,共通テスト本番に合わせて地学基礎だけでなく上位科目の地学も出題されることが多いです。

地学専任の担当者がいない版元が多い

高校理科の担当者が,高校数学の担当者より人数が少ない編集部の話をときどき聞きます。高校理科の教材を一人で制作している編集部も知っています。私が現役予備校で勤務していたころは,数学がメインの担当で理科(物理・化学・生物)担当も兼任していました。ちなみに,地学は予備校で授業を開講していなかったです。

教材の編集部によっては,物理・化学・生物は専任の担当者がいても,地学は専任の担当者がいない場合が多いです。地学教材を制作するときは,理科担当のだれかが兼任するようです。地学専任の担当者がいるのは,地学の検定教科書を発行する教科書会社くらいでしょうか。

フリーランスで地学の仕事ができる教材編集者は意外にいる

理科の他科目に比べて地学の仕事は少ないため,地学の仕事ができるフリーランスの教材編集者はほとんどいないと思われがちです。しかし,私の知り合いには複数います。地学の仕事ができるフリーランスの教材編集者には,大きく分けて2種類います。

まず,上記のように会社員時代に高校理科の他科目との兼任で地学を担当していた教材編集者が,独立後にその経験を生かしたたケースです。弊社数学担当者がこれにあてはまります。弊社数学担当者は,会社員時代に高校理科の模試編集をしていたころ,大学時代の専攻は地学とは関連がなかったのに,兼任で地学の模試編集を担当していました。この経験を生かして,現在は裏メニューで地学の仕事をしています。

次に,大学時代に地球科学や宇宙物理学などを専攻していた教材編集者が,会社員時代には地学の仕事をしていなかったものの,独立後に地学の仕事も担当するようになったケースです。以前書いたように,理系科目の教材編集者自体が人手不足のため,地球科学や宇宙物理学などを専攻していると数学や物理の担当になり,地学を担当することはまずないです。独立後,初めて地学教材の編集をする人もいました。

地学の教材編集の注意点とは

地学は気象・地質・天文といったさまざまな分野を扱う科目です。ときどき聞くのが,全分野に精通している執筆者の先生が少ないという話です。例えば,大学時代に地質について専攻していた先生が,天文に関する原稿を執筆すると,内容があやしい場合があるなどです。

地学の教材編集者は,各先生方が気象・地質・天文のうちどの分野に精通しているのかを正しく把握したうえで,適材適所で執筆者と校閲者を配置して教材を制作していきます。

また,地学は新しい発見や学説などによって,教科書の内容が変わってきました。ただ,先生によっては,昔の知識がアップデートされていないケースもあります。地学の教材編集者は,教科書のアップデートについて頭に入れておく必要があります。

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