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独立して20年間生き残れた話

私(中村)が2004年4月に独立して,2024年4月で20年になります。独立直後は3年やってうまく行かなかったら会社員に戻るつもりでいましたから,20年続けられたことは感慨深いです。今回は,独立して20年間生き残れた理由について,振り返ってみます。


高校物理の人手不足が大きかった

独立して20年間生き残れたのは,私が高校物理の仕事ができることが大きかったと考えています。

高校物理は理工系学部への進学を目指す人たちにとって重要な科目です。ただ,複数の取引先の物理担当者から話を聞くかぎりでは,弊社以外の編集プロダクション(編プロ)は高校物理の教材編集にはあまり対応できていないようです。

教材出版の業界には,大学時代に物理学や工学を専攻していた人がなかなか入ってきません。それに編プロでは,理科よりも教材の制作量が多い数学への人員配置が優先されますし,高校生向け教材よりも小中学生向け教材のほうがかなり制作量が多いです。そのため,大学時代に物理学や工学を専攻していた人が編プロに入社したとしても数学担当になり,中学数学の仕事がメインになるみたいです。

一方,理科担当は大学時代に生物学や農学を専攻していた人や理系以外の専攻だった人が中心みたいです。知るかぎりでは,生物学や農学を専攻していた人や理系以外の専攻だった人は,物理に対して苦手意識が強い印象があります。

そうなると,規模が大きめの編プロであっても,社内に高校物理の仕事ができる人材が不足して制作ノウハウの蓄積ができず,版元が求めるレベルの高校物理の仕事にはなかなか対応できないようです。このような背景もあって,20年間生き残れたのかもしれません。

インターネットでつながりが広がった

2004年に独立したとき,無料のエディタを使って簡易なホームページを作りました。また,SNSはほとんど普及しておらず,もちろんnoteもなく,教材編集に関するブログを書いていました。

当時はインターネット上でメールアドレスを公開していました。このころの私はメールアドレスを個人情報と考えず,いまでいうSNSのアカウントのように公開しても問題ないとの認識でしたし,当時はPCに迷惑メールがほぼ来なかったです。すると,教材編集のブログが珍しかったからか,それとも高校物理の仕事ができる外注先が少なかったからか,複数の版元から教材の仕事の打診がありました。

この数年後,世間ではツイッターが注目されるようになりました。アカウントを作って教材編集に関するツイートを始めたところ,しばらく続けていると,ツイッター経由でも版元から仕事の打診がありました。ツイッターでは教材の執筆・校正を行っている人たちとも交流するようになり,ツイッターをきっかけに複数の外部協力者と知り合えました。インターネットの恩恵を受けて,20年間生き残れたのかもしれません。

少しずつ仕事の幅を広げていった

独立して2年後の2006年から,大学入試センター試験(現大学入学共通テスト)で理科総合Aという新科目が実施されました(2014年まで実施)。このとき私は「数学や物理が専門の教材編集者はいても,理科総合Aが専門の教材編集者はいないはず」と考え,理科総合Aの仕事も受注できるように準備しました。

その後,各取引先に送る年賀状に「理科総合Aの仕事もできます」と載せたところ,複数の取引先から理科総合Aの仕事を受注できたのでした。理科総合Aがきっかけで,当時投稿していたブログを通じて取引が始まった版元もあります。

理科総合Aには化学分野も含まれます。事前にいくつかのツテをたどって高校化学の執筆者や校正者を紹介してもらい,この方々に化学分野の執筆・校正を依頼しました。理科総合Aをきっかけに,高校化学の外部協力者がそろいましたし,私は独立前に勤務していた現役予備校では高校化学の教材編集も担当していたので,高校化学の仕事を受注するようになりました。

また,2025年から大学入学共通テストで情報Ⅰが実施されることになりました。そこで,日本情報科教育学会の全国大会に参加したり,データサイエンスやアルゴリズムなどの書籍を読んで予想問題に使えそうな素材をさがしたりするなどして,情報Ⅰの共通テスト対策教材の仕事が受注できるように準備してきました。なお,情報Ⅰの仕事の準備に関するnoteの投稿はこちらです。

過去問集と模試を積極的に受注

多くの教材は,一度制作すると何年も同じものが発行され続けます。教材が新規制作されないと,弊社の売上にはつながりません。ただし,毎年新規で制作される教材もあります。

ひとつは,大学入試で出題された問題と解答解説を収録した過去問集です。大学入試では毎年新しい問題が出題されますから,過去問集は毎年新規で制作されます。もうひとつは模擬試験です。模試は流用するわけにはいきませんから,毎年新規で制作されます。

毎年の売上を安定させるため,過去問集と模試の仕事を積極的に受注するようにしていました。現在,私と数学担当者(高校地学担当も兼任)の2名で,数学・物理の大学入試過去問集と物理・地学の大学受験模試の仕事を受注しています。

過去問集や模試にかぎらず,高校数学・物理・化学・地学・情報Ⅰの仕事に関するご相談やお問い合わせは,こちらからご連絡ください。

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