情報Ⅰの共通テスト対策教材を制作する準備の話
情報Ⅰと大学入学共通テスト
2025年に実施される大学入学共通テストから情報Ⅰが出題されることになり,話題になっています。弊社でも,情報Ⅰの共通テスト対策教材の制作を受注できるように,準備を進めています。仕事のご相談やお問い合わせはこちらから。
実は,現状でも共通テストでは数学の1科目として「情報関係基礎」が出題されています。ただ,2023年1月実施の共通テストの本試験では「情報関係基礎」の受験者数は410名でした。
では,なぜ情報Ⅰが話題になっているかというと,2022年1月に国立大学協会(国大協)が,基本方針として2024年度の共通テスト(2025年1月実施予定)から情報Ⅰを課すことを発表したからです。これによって,現在の高2生からは,国立大学を志望する場合,原則として共通テストで情報Ⅰを受験することになりました。
情報Ⅰの教科書と大学入学共通テスト
国大協の発表によって,情報Ⅰは受験科目になりました。そこで私の知人のうち数人は,情報Ⅰの教科内容をより詳しく知るために教科書を何冊か入手して読み込んだそうです。読み込んだ人たちから聞いたのは,
「教科書によって書かれていることがバラバラ」
との話です。
現在,出回っている情報Ⅰの教科書は,2021年3月に教科書検定の結果が出ました。一方,国大協が共通テストで情報Ⅰを課すと発表したのが,2022年1月です。教科書の制作には3~4年かかりますから,情報Ⅰの教科書は共通テストで出題されることを想定せずに制作されて,教科書検定に合格したものです。高校での採択を増やすために,教科書会社によって内容に個性を出すのは当然で,教科書によって書いてあることがバラバラになってしまいがちです。
情報科の先生に執筆を依頼すればいい?
教材出版社や編集プロダクションの中には,情報Ⅰの教材を制作するときに高校の情報科の先生方に原稿執筆を依頼すればいいと,単純に考えているケースもあるみたいです。
一方,高校の情報科の先生方は,これまで受験対策をしたことがなく,受験対策のノウハウもありません。情報科の先生方は,教材出版社が発行する情報Ⅰの共通テスト対策教材をあてにしているみたいです。
教材出版社と情報科の先生方はお互いにあてにしあっているものの,情報Ⅰの共通テストがまだ一度も実施されていないこともあり,どこにも受験対策のノウハウがないのが現実のようです。
大学入試センターから公表された資料
一般に,共通テストの対策教材を制作するとき,過去に出題された問題(過去問)を分析して出題形式や出題傾向などを知り,形式や傾向に沿った教材にしていきます。しかし,まだ情報Ⅰの共通テストが実施されていないので,過去問はありません。ただし,過去問の代わりに,大学入試センターからは情報Ⅰの試作問題が公表されています。
また,大学入試センターから「令和7年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト問題作成方針」という文章も公表されています。これによると,情報Ⅰは,
となっています。特にプログラミングとデータの活用の問題では,初見の事例や事象が出題されることが予想されます。共通テスト対策教材制作の準備として,プログラミングとデータの活用に関連する一般書を読み,事例や事象の素材をさがしておく必要があると考え,少しずつ進めています。
学習指導要領から考えられること
情報Ⅰの学習指導要領(の解説)によると,
とのことです。2022年4月以降に入学した高校生の教育課程では数学Ⅰが必修ですから,義務教育で学ぶ統計の内容はもちろん,数学Ⅰの「データの分析」の単元の知識を用いたデータの活用に関する問題が出題される可能性を想定しています。
また,公民科との関連についても書かれています。特に情報Ⅰの「情報社会の問題解決」の単元では,公民教材の仕事をする人たちに力を借りるのがいいかもしれないと考えています。
情報Ⅰの共通テスト対策教材は売れるか
国公立大志望の場合,文系学部を志望していても原則として共通テストで理科を受験する必要がありますし,理系学部を志望していても地歴か公民を受験する必要があります。
しかし,国公立大志望者にとって学習の優先順位が高いのは,共通テスト後の2次試験でも受験する教科・科目です。高1,2生のうちから,共通テストでのみ受験する教科・科目の入試対策を行っている話は聞いたことがないです。共通テストでのみ受験する科目の入試対策を始めるのは,高3の夏休み以降でしょうか。
情報Ⅰも共通テスト本番が近くならないと,本格的な入試対策を行わない気がします。情報Ⅰの教材は,理科や地歴公民の共通テスト対策教材よりは売れると思いますが,それでも本格的な対策を始める高3の夏休みくらいまで,なかなか売れないかもしれません。
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