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ある取引先の派遣社員と仕事をしたときの話

2023年10月にNTT西日本が,子会社で元派遣社員による個人情報の大量流出があったことを発表しました。さらに11月の報道によると,元派遣社員は逮捕されたのこと。今回は古い話ですが,20年近く前に私(中村)がある取引先の派遣社員の人たちと仕事をしたときの内容です。


版元側の担当者は派遣社員だった

私が独立して編集プロダクションを立ち上げた直後の20年近く前,通教出版社の東京の編集部から仕事を受注しました。この通教出版社は,もともと私が在籍した編集プロダクション(編プロ)の親会社です。

通教出版社側の担当者は派遣社員でした。派遣社員といっても,東京には出版社が数多くあるため,編集派遣社員という編集専門の派遣社員がいました。

派遣社員に丸投げでブラックボックス化

担当の派遣社員から仕事の進め方を聞くと,原稿・初校・再校で同じ校正者3名に3回校正させるとのこと。この出版社では,原稿・初校・再校で別々の校正者に校正を依頼するのが通例だったので,担当の派遣社員に確認すると,
「校正者に責任を持たせるためです」
「子会社(私が独立前に在籍した編プロ)と親会社(通教出版社)とで,制作の進め方が違うようですね」
との返答。

念のため親会社の知人に確認してみると,同じ校正者が何度も同じ紙面を校正すると,紙面を見慣れてしまってミスを見落としかねないので,各工程で異なる校正者に校正を依頼しているとのことでした。

保身ばかりを考える派遣社員

この仕事は正社員が派遣社員に丸投げしていて,この派遣社員が独断で制作フローを変え,私が関わるまでブラックボックス化していたようでした。

もちろん仕事の最適化のために制作フローを変えるのならいいですが,どうやら校正者に責任を持たせるためではなく,紙面のミスが発覚したときに「同じ校正者に3回校正させたのにミスを見落とした」と,ミスの責任を校正者に押しつけるためだったようです。仕事を進めていくうち,校正者だけでなく編集担当の私にも,ミスが発覚したときに責任を押しつけるつもりのように感じました。

この派遣社員は,他にもいろいろとおかしな仕事の進め方をしました。あるとき,私は我慢の限界が来て,
「あなたと仕事を続けるのは無理なので,この仕事を降ります!」
と宣言したところ,派遣社員からは,
「いま降りられると困ります。降りられると私がクビになります」
と,教材制作のことよりも自分のクビを心配しだしたのでした。

あきれながらも,仕事の進め方の問題点を伝えると,派遣社員からは,
「わかりました。正社員に伝えます」
との返答。
「正社員にではなく,あなたに言っているんです!」
と,話がさらにこじれたのでした。自分がトラブルの原因であることを認めると,クビになると思ったのかもしれません。

結局,この派遣社員は担当から外れて,正社員が担当するようになりました。ただ,派遣社員に丸投げしていたせいで,仕事の進め方がわかっていなさそうな正社員とはさらにモメて,最終的に仕事を降ろされたのでした。

仕事が発注されていたことを正社員は知らなかった

また,同じ編集部の別の部署から校正の仕事を受注したときも,担当者が派遣社員でした。上記とは別の派遣社員でしたが,この派遣社員もおかしな仕事の発注のしかたをしてきました。正社員に抗議したところ,仕事の発注書には正社員のハンコが押されていたにもかかわらず,この正社員は弊社に仕事が発注されていたことを知らなかったようでした。

なぜ発注書に正社員のハンコが押されていたのかはわかりませんが,少なくとも派遣社員がその気になれば,架空の発注先を作って会社のお金を着服するのも難しくない環境でした。

ちなみに,この件に関して正社員からは平謝りされたものの,「派遣社員だから」というよくわからない理由で,おかしなことをした派遣社員本人からは謝罪を受けることはなかったです。

なお,この派遣社員が悪いと言いたいのではなく,派遣社員に対するガバナンスがまったく機能していないことに単純に驚いたのと,おかしなことをしても謝罪しないなど仕事の責任を負わせないなら,そもそも派遣社員に社外とのやりとりをさせるべきではないと思ったのでした。

このように,私は通教の編集部とは相性がものすごく悪いようで,その後,現在に至るまで通教の編集部とは仕事のご縁がありません。

通教会員の個人情報流出を聞いたとき

そして月日が流れ,2014年6月にこの出版社の通教を受講する会員の個人情報が大量に流失したことが発覚して,大問題になりました。報道によると,子会社に勤務する業務委託先の社員が個人情報を持ち出して,名簿業者に売ったとのこと。

この件についての詳細は,報道や通教出版社からの発表(「事故」だそうです)でしか知らないものの,上記のように通教出版社で派遣社員へのガバナンスがまったく機能していないのを目の当たりにしてきたので,子会社で業務委託先の社員による不祥事が起こっても,全然不思議ではなかったです。かつて私が見たのと同じように,業務委託先の社員に仕事を丸投げしていて,ブラックボックス化していたのかもしれません。

ところで,最初の話にもどると,NTT西日本の発表によれば今回発覚した個人情報流出は2014年4月から始まったそうです。近い時期に始まった個人情報の流出は,通教出版社ではすぐ発覚して流出させた人間が逮捕され,NTT西日本では2023年まで発覚しなかったようです。


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