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掌編小説

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記事一覧

掌編小説 私の住む街には

 私の住む街には大きな浄水場があって、そこには巨大な白い建物がどっしりと構えている。街の…

京
4か月前
13

掌編小説 遠野の残像

 そこはだだ草っぱらが広がり、手前にやたらと新しい小さな案内看板が据え付けてあるだけだっ…

京
5か月前
14

掌編小説 伊吹おろし

 買い物帰りに、自転車を漕ぐ。市街地を抜けると、のどかな田園風景が広がっていた。稲を刈り…

京
7か月前
13

掌編小説 雨上がりのふたり

 その日は朝から雨が降っていて、漠然とした不安が幼い心を曇らせた。  知世は、ふいに教室…

京
8か月前
10

掌編小説 コバルトブルーの背中

 近くのため池に、カワセミがいるらしい――。  その話を聞いたとき、私は半信半疑だった。…

京
8か月前
7

掌編小説 湖畔の記憶

 夏、無機質な都会を離れ、この別荘で過ごす時間は、とてもゆったりとしていた。それでも飽き…

京
8か月前
12

掌編小説 報われない子

 あの宏香が結婚したらしい、と風の便りに聞いたのは、私が五年勤めた省庁をうつ病で退職したその日だった。  私は、言葉が出なかった。宏香が晴れ晴れしく新たなスタートを切った一方で、私は日々の激務から体調を崩し、本日をもって退職するまでに至ったのだ。  同じ中学校に通っていた宏香は、「報われない子」だった。真面目に授業を受け、課題も毎日かかさず提出していたのに、成績はいつまで経ってもパッとしなかった。一度教科書を読めばその内容のほとんどを理解し、勉強した分だけ良い結果を残すこと

掌編小説 天気雨

 すでに葉桜となったそれを見上げると、風に吹かれざわめく葉の隙間から日の光がちらちらと見…

京
9か月前
6

掌編小説 ロックスター

 両親は共働きで、家にいないことの方が多かった。  今日も、家にひとり。夜、塾から帰って…

京
9か月前
16

掌編小説 今

「ひとつあげる」  部活帰り、音楽室を出ると、廊下で待っていた萌々香が飴をくれた。夕日を…

京
9か月前
13

掌編小説 なわとび

 毎日、休み時間に練習するんだけども、全然うまくいかん。勢いづくために数回跳んで、その後…

京
9か月前
12

掌編小説 喰う

 クイーンズタウンのハンバーガーはとても大きくて、食べ終えるのに何時間もかかってしまった…

京
10か月前
9

掌編小説 僕と花

 得体の知れない黒の中。気づいたら、僕はここにいた。自分がどこの誰なのか、どこから来たの…

京
10か月前
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掌編小説 ひとみのなかみ

 昔、僕がまだ小さかった頃、お兄ちゃんはよく僕の顔を覗き込んだ。僕の目をまっすぐ見て、ニカッと笑ってこう言った。 「お前の目には、まだ何も映っていないんだね。まっさらで、とてもきれいだ。でもね、この世界には、もっときれいな目がたくさんあるんだよ」  それがどういうことなのかよく分からなかったけど、どうしても忘れられなかった。  こうして僕は今、きれいな目を探しに旅に出ようとしている――。  僕の名前は、コリン。ももいろはりねずみの、コリン。僕は自分のことを、立派なはりねずみ