掌編小説 喰う

 クイーンズタウンのハンバーガーはとても大きくて、食べ終えるのに何時間もかかってしまった。

 途中から苦しかった。食べ残そうかな、なんて考えがちらつきながらも、その苦しさを我慢しながら食べていると、この感覚が久しぶりのことのように感じた。
 明確なゴールが見えるのは、いつぶりだろうか。食べ終える、という明確なゴール。
 すっかり忘れていたが、私にだって願望も理想も情熱もある。ただひたすらハンバーガーを食べる行為に、意味を見出し始める自分がいた。全てが曖昧に思えて漠然としていた気持ちに、少しだけ輪郭が浮かび上がってきた。

「も、もう無理……」
 同じようにハンバーガーを食べていた友人が、ギブアップをする。
 私は構わずハンバーガーに食らいついた。あともう少し。頑張れ、私。