掌編小説 なわとび

 毎日、休み時間に練習するんだけども、全然うまくいかん。勢いづくために数回跳んで、その後強く大きく飛び跳ねる。――また、失敗。

 跳んでるつもりなのに、縄が足に絡まる。この縄が、愛おしくて憎いんだわ。人間以外にこんな感情を抱くのは、特異なことなんかな。
 自由自在に縄を操ってぴょんぴょんと軽快に跳ぶ未来の自分を、想像する。それはとてもおぼろげで、本当に実現するのかどうか怪しいんだけども、失敗するたんびに自分自身を小さく鼓舞して再び挑戦するんだて。

 あれから何日経ったか、分からん。毎日練習しても変わらんから、やっぱり意味ないんかな、とか思ったりしとった。
 あきらめたくないけど、あきらめたくなる。その狭間で、一人で戦っとったわ。

 上達を実感する瞬間っていうのはいつも唐突にやって来るんだと、そのとき初めて知った。いつも通りに跳んだだけだったんだけども、そのときは何かが違っとったみたいだわ。
 手足の動きがぴったりと連動して、最初から最後まで無駄がなかったのが自分で分かったもんだで、着地したときにはえらく感激したわ。
 びっくりしてその場で立ち尽くしてたら友達が拍手してくれたで、できたんだっていう実感が湧いてきた。でらうれしかった。

 できた! 二重跳び! 頑張ったで褒めて!