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#170 「株、選別進んだ1年」 〜10年前と比べる時価総額ランキング〜

大晦日。日経新聞を眺めていたら、マーケットの記事に興味深い記事があったので、メモ。


1、記事の概要

11面、いわゆる「マーケット総合」という面の、「株、選別進んだ1年」という見出しの記事です。小見出しとして「東証1部 上昇銘柄4割どまり」とあります。

概要としては今年の相場を振り返り、31年ぶりの高値で引けたものの、「東証1部の値上がりは4割と優勝劣敗が進んだ」という内容です。

経済の構造的な変化を受け、時価総額トップ10の顔ぶれも大きく変わった。昨年末に比べ5社が入れ替わっている。任天堂のほか、中国での成長が見込めるファーストリテイリングや、電気自動車(EV)向けのモーターを手掛ける日本電産などが新たにランクインした。携帯料金の値下げが逆風となった通信では、KDDIやソフトバンクが10位以内から外れ、NTTドコモはNTTによる完全子会社化で上場廃止となった。

時価総額トップ10は以下の通りです。

1位 トヨタ自動車
2位 ソフトバンクグループ
3位 キーエンス
4位 ソニー
5位 NTT
6位 ファーストリテイリング
7位 中外製薬
8位 任天堂
9位 日本電産
10位 第一三共

ちなみに昨年末(2019年12月末)は以下の通り。

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また、株価が振るわなかった業界として、利鞘縮小への懸念が台頭した銀行株、感染症による行動制限の影響を受けた、JR東海、ANAなどの運輸株が3割から4割の下落となったことが述べられています。


2、銀行という業態にのしかかる変化

私が個人的に興味を持ったのは「銀行株」です(元いたところなので…)。
記事の中では、以下のように述べられています。

資金流出が目立ったのが銀行株だ。利ざや縮小への懸念が台頭し、三菱UFJフィナンシャル・グループは2割下落し時価総額はトップ10圏外に脱落した。三井住友フィナンシャルグループとみずほフィナンシャルグループの3メガバンク合計の時価総額は2割減の約14兆円と1年で4兆円減った。

確かに感染症ということで影響は受けたでしょうが、銀行については、そもそも利ざやの縮小は続くマイナス金利下による感染症とは無関係の構造的な問題です。

菅首相の「地方銀行多すぎ」発言もある通り、もともと収益的には厳しい状況です。

そのためメガバンクは海外に活路を見出していますが、感染症による金融緩和でアメリカをはじめ諸外国も急激に金利低下が起こっています。

つまり、「預金を集めてそれをまとめて企業に貸出す、その利ざやで稼ぐ」というビジネスモデルそのものが揺らいでいるのです。

ちょっとデータを見てみましょう。

メガバンクの代表として三菱UFJのここ10年の株価の動きです(出典:Yahooファイナンス)。

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比較のために、同じ期間の日経平均の動きです。

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改めてみると厳しいですね。
(三井住友、みずほ、もほぼ同じです)

ちなみに、時価総額ランキングですが、以下が昨年末(再掲)。

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そして、こちらがほぼ10年前の2011年1月末。

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いかがでしょう?

3メガバンク、全てトップ10に入っていたのです。

他にも自動車がトヨタ以外にホンダも日産も入っているのが目立ちますね(というかトヨタすごいですね)。

ちなみに、2011年1月のトップ10、今年末の時価総額順位では、

三菱UFJ   18位
ホンダ 23位
三井住友フィナンシャルグループ 27位
三菱商事 33位
みずほフィナンシャルグループ 38位
キャノン 56位
日産 64位

となっています。


3、ではアメリカの銀行も同じ?

今後は同じ期間のアメリカ銀行株を見てみると、

JPモルガン(ただ、投資銀行業務も半分ぐらいあるのでちょっと違いますが)

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バンク・オブ・アメリカ

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ウェルズ・ファーゴ(支店も多く持ちいわゆる銀行業務がメインの銀行です)

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やはり銀行はアメリカも辛いんだ、と言いたくなりますが、ウェルズ・ファーゴは2016年に顧客に無断でクレジットカードを発行したりという不祥事が発覚して今年の2月には30億ドルもの制裁金を課せられているという特殊事情があります。


アメリカ、ビジネス環境が異なりますので単純な比較はできませんが、早くから企業の資金調達が証券市場にシフト(直接金融)したことで銀行は早くから単純な融資業務から別の収益源を探すことに迫られたことも一因と言えるでしょう。


4、まとめ

年末の振り返り、株式市場で見てみました。

さらに10年単位で見ますと、日本の大きな流れも見えるように思います。

銀行は、
☑️ 融資業務は利ざやの縮小
☑️ 決済業務は、なんちゃらPayが急成長で、奪われつつある状況
☑️ 中小企業向け小口融資は、フィンテック企業が膨大なデータから融資可否、金額、金利を自動で判定する低コストで提供しつつあり、伝統的な決算書をもらってスコアを算出して、というような高コストでは採算が厳しい
と、本業がことごとく厳しい状況です。

加えて、さまざまな規制で他業態への参入も容易ではなく、兼業の範囲も厳しく規制されており、業態の変換というのも難しいと、まさに八方塞がりの状況とも言えます。

ここからどう舵取りするか、大変な興味があります。

銀行に限らず、10年後、2030年末の時価総額ランキング、考えてみるのも年末年始に良い「頭の体操」ではないでしょうか?


最後までお読みいただきありがとうございました。

よいお年をお迎えください。


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