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小さな図書館

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ほかの人の好きな「note」を集めている。言葉、絵や写真、映像や音楽。読み返したり、もう一度見たり、聴いたりすることはあまりないと思う。じゃあなぜ集めているのかと問われると、なん…
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#エッセイ

自分の言葉①   小林康夫先生

自分の言葉① 小林康夫先生

二〇一八年暮れのことです。
フリーランス校正者として通っている出版社の大理石の床の上に、十五センチくらいの一本糞が落ちていました。目を疑いましたが、どう見ても人糞でした。一階の奥の図書室につづく廊下を歩いていくと、トイレの手前に落ちていたのです。
大理石のビルにはもう十五年余り通っていますが、人糞に遭遇したのは初めてのことでした。あまりにも思いがけない景色だったせいか、たちまち動悸がしてきました。

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おばけについて

おばけについて


私はなぜ おばけなのか気付いたときから私は、自分の存在というものに違和感を持っていた。
自分はこの社会という場所では価値の無い異物であり、ここに関わる事はできない。そんな風に感じていた。普通の人とは違い、決定的な何かが欠けている。自分に魂というものが無いような気がする。みんなと同じ場所に居るのに自分はそこには居ない、という感覚を、なんだかおばけみたいだなと思ったら、とても腑に落ちた。私はおばけだ

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私が「直感」を信じられるようになった夜

私が「直感」を信じられるようになった夜

「娘さんですか?」

五反田のとある居酒屋。赤提灯がぶら下がっている、いかにもサラリーマンが好きそうなお店で、私は出張に来ていた父とカウンター席で飲んでいた。

「あ、はい。そうです」

ほんのりと顔が赤くなった父が答える。

父の隣に座っていたサラリーマン風の男性が声をかけてきた。父よりだいぶ若く40代前半くらいに見えるその人は、一人飲みのようだ。

「そうですか。娘さんとこうやって一緒に飲める

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男社会で負けて男をやめた話

男社会で負けて男をやめた話

まず、私は男社会で完全敗北した男です。
もう2度と社会に戻ることはないでしょう。

『強い男』になりたかった男でした。

警察官。現場作業員。前科者だらけのブラック企業。
・・・これまで私が勤めてきた会社はどれも、過剰なほど『男らしさ』を求められる男の職場ばかりでした。

男は男らしさを求められるあまり、
苦しんだり、苦しめたりしてしまうことがある。

最近では「男は弱くても良い」という意見をたび

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