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本のおすすめ:『14歳から考えたいレイシズム』

コラム696:本のおすすめ『14歳から考えたいレイシズム』

 このシリーズは、オックスフォード大学出版から出ている「ベリー・ショート・イントロダクション」という本だそうです。ぜんぜんショートではなく、歴史、概念、近史まで網羅的に(私の知る限りですが)まとめられていて、しかも参考書やさらなる読書ガイドまでついており、読み応えのある本でした。

 レイシズムを真っ先に読もうと思ったのは、以前書いたように、私自身がイタリア旅行で、まぎれもないアフリカ系差別をしてしまったからです。黒人男性のことを「気をつけなさいよ!」と子どもに言ってしまったのです。自分はレイシストではないと自認していただけに、ショックが大きくて、情けないエピソードです。

 この本で、一番印象に残る箇所は、「白人は目に見えない(in-visible)存在である」、「白人はレイシズムは過去の遺物だという感覚をいだく傾向がある」、という部分でした。日本における日本人に置き換えてみると、日本的外見の人々は「目に見えない」けれども、外見が異なるひとは「ガイジン」となってしまう。見える景色が違うのだ、ということに気づきます。私も、スコットランドで子どもに指をさされて(東洋人を見たことがなかった様子)、はじめて自分が「見える・目立つ」のだと気づきました。

 マイクロアグレッション、と言うとのことですが、良かれと思って言ったり、何気ない会話の中に差別が入り込むこともあるのが理解できます。「黒人だから足が速いでしょう」とか「ガイジンだから英語がうまいでしょう」などでしょうか。

 この本で、近史として語られているのは、現代ヨーロッパをはじめとする右翼・移民排除政党の台頭です。「ガス抜き」として、ポピュリズム的に、ナショナル・レイシズムをかざすことが、民主的な国家でも大きな存在となっています。

 日本でも、移民、外国人、ルーツの異なる人々への差別を煽ることが中心的主張である議員まで出現しています。

 「私は差別しないし、関係ないや」と思っていた自分を心の底から反省します。先月の私に戻って、グーで殴ってやりたいくらいです。

 ちなみに、この本のシリーズは他には「アメリカの奴隷制度」、「セクシュアリティ」、「貧困」などがあり、なんとKindle Unlimitedで読むことができます。(2023年11月29日現在)大変におすすめです。

2023年11月29日

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