球美

自分が生きている今この場所で、感じていることを言葉にしていきます。 エッセイ、読書感想…

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自分が生きている今この場所で、感じていることを言葉にしていきます。 エッセイ、読書感想文、日記など。 前を向いていたいです。 [好き] 読む、書く、写真、海 [性格] 空想にふけりがち

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記憶の断片が持つ意味

* 出発間際の電車から飛び出して、父親は目の前にある売店でプリッツを買ってきてくれた。 ジリジリという発車の合図が鳴っていて、私としては、プリッツなんてどうでもいいから早く戻ってこい父親と思っていた。 だってドア閉まっちゃったらどうすんの。私とお兄ちゃん2人っきりだよ。 確か私は幼稚園生くらいで、そんなことを思いながら不安で仕方なかった。 でも私は何も言わなかった。電車出ちゃうよ、とも、お菓子いらないからそれよりも早く戻ってきて、とも。 なぜだろう。あの時の光景は、

    • 雨が好き。

      明日の朝は、雨が降るかもしれない。 そんなことを思いながら、ベッドにもぐりこむ。 うつ伏せになって目をとじた。 夏なのに少しだけ冷えた足先をかさね、静かに指を遊ばせる。 羽を休める鳥のように、ゆっくりと力が抜けていく。足先もしだいに温まる。 * 窓をたたきつける雨音で目が覚めた。 カーテンの下からは柔らかい光がもれている。漆黒の夜は通り過ぎたようだ。 時計の短針は、あと少しで数字の5を指すところだった。 夏の朝は始まっている。 * カーテンを開けると、雨

      • 自分にしかできないことを見つけられたら

        「今日、休みます」 朝起きて、会社に連絡を入れた。 病欠ではなく、ただ、他にやりたいことがあるからという理由で。 今まで、こんなふうに仕事を休んだことはなかった。 でも、どちらが自分の人生において大切かと自問したとき、仕事を選ぶことはできなかった。 * Schroeder-Headzの渡辺シュンスケさんと、絵描きの近藤康平さんのライブイベントに足を運んだ。 前日の夜になっても仕事を休む決心が付かずにいたせいで、前売り券は買っていない。 当日、会場の受付で購入し

        • うたかた

           君がこの世を去ってから、3度目の夏が訪れようとしていた。僕は相変わらず君のことを想い、時にその名を口にしている。 記憶という、いつ消えてしまうか分からない脆さをはらんだあやふやなものの中に、君の存在を少しでも長く留めておきたくて、日々、出来る限り多くのことを思い出そうとしていた。 それでも僕は、既にたくさんのことを忘れてしまっている。 僕の頭の中には、撮りっぱなしにした写真をとりあえず放り込んでおくハードディスクのようなものが存在していて、

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          傷つけたかったんじゃない。自分を守りたかっただけ。

          みんな断ってるよ。やりたくないし。 彼女は私の目をじっと見つめて、いつものあの言い方でそう放った。 * その朝早く、会社から電話があった。 フライトが数時間遅延している為、出勤時間をずらしてくれる人を探しているとのこと。 正直に言えば遅延便の担当なんてしたくないけれど、仕方がない。夜に予定があるわけでもないし、断る理由がなかった。 それに、遅出出勤の職員が集まらなかったら仕事が回らない。誰かがやらなければならない。 * なぜ彼女はあんな冷たい言い方をしたのだろう

          傷つけたかったんじゃない。自分を守りたかっただけ。

          自分をさらけ出せたら、もっと楽になれるかもしれない

          自分の過去について語ることが苦手で、私生活ではなるべく(というかほとんど)触れないようにしている。 理由は、自分はこれだけ苦しんできたという不幸自慢のようになってしまいそうだからだ。 そして私は、とにかく自己開示が苦手だ。 何かを聞かれても、本当のところを知られたくなくて思わず嘘をついてしまうことさえある。 悪気はないのだけれど。 ここは、私が好きなことを発信していい場所だと信じている。だから、少しだけ話してみる。 * 先日、10年ぶりに心療内科を訪れた。 高校の

          自分をさらけ出せたら、もっと楽になれるかもしれない

          yomyom『これはただの夏』

          yomyomに連載されていた、燃え殻さんの『これはただの夏』が7月に単行本で発売されるらしい。 彼の書く、飾り気のないごく平凡な日常風景が好きだ。 自分が今生活している日々とつながっている錯覚を起こす心地よさ。 無理をしなくても入り込める世界。 * 家庭に事情を抱えた小学生の明菜と、同じマンションに住む主人公のやりとりが心地よい。 明菜はませていて、口調や行動が大人びている。主導権を握っているのはだいたいにおいて彼女であり、時に振り回される主人公。 ちょっとした事情

          yomyom『これはただの夏』

          許せばよかった、そう思う日が来るとわかっているから

          人は最期に、「許せばよかった」と後悔すると聞いたことがある。 和解をしたい。そう思うのだそうだ。 例えそれがどんなに憎く、天と地がひっくり返っても許すことはないと思っていた相手でも。 * 何かにつけておとしいれようとしてくる、意地悪な先輩がいる。 要領と外面ばかりがいい、ずる賢い同僚がいる。 彼らをどう受け入れ、落ちるところに落ち着かせればいいのだろう。 必要最低限のこと以外は関わらないと決めた、苦手な人たち。 負の感情しか湧かない相手。 でも、そんな彼らも、誰か

          許せばよかった、そう思う日が来るとわかっているから

          だって恋をした。【TULLY’S 桃のフロマージュミルクティー】

          これは恋だ。 ふわっふわの生クリームが淡い桃色に覆われ、西陽の薄ピンクに染まる雪山のようなミルクティー。 さらにその上に薄く削られたホワイトチョコのトッピング。 ホイップの雪山、桃色シロップ、粉雪。 最高。正義。 ごろごろと角切りにされた桃の歯応えを感じた瞬間、その果肉感に一人でニマニマ… 今のタリーズでメインなのはあのポップコーンラテなのだと分かっている。 カウンター頭上にある看板のメニューでもトムとジェリーが踊っている。今の主役は僕達だよ、と。 一方このピー

          だって恋をした。【TULLY’S 桃のフロマージュミルクティー】

          人目を気にしない訓練をするために、ブックカバーをかけないでいる

          頭痛が続いたのでMRIの予約を入れた。 当日受付を済ませ、読みかけの本をカバンから取り出した時のこと。 ※写真はMRI後に撮ったもの “DIE WITH ZERO”鮮やかな青に、貼りついた黄色。警告を与えるかのような原色on原色。 帯には直訳の “ゼロで死ね” 大きい病院のロビーで読むにはふさわしくない。気がする。読みかけのタイミングが悪い。 内容は、老後のためにひたすら貯め続けるのではなく、今だからこそ出来る経験のためにお金を使おうというもの。 よりよく生きる

          人目を気にしない訓練をするために、ブックカバーをかけないでいる

          叶わなかった夢は、叶わなくて大丈夫なようにできていた

          叶わなかった夢がある。 就きたかった仕事。 受からなかった第一志望校。 どうやらその夢、叶わなくても大丈夫だったらしい。 望んでいたことの代わりにしてきたことを振り返ってみる。 例えば、昔からの夢だった仕事とは別の仕事をしている場合。(私はそう) 今の職場に、気の合う大切な同僚はいないだろうか。 具体的に顔を思い浮かべてみる。 もし昔からの夢が叶っていたら、その人は自分の人生に存在していなかったのではないだろうか。 そう考えた時、人はどんな気持ちになるだろう。

          叶わなかった夢は、叶わなくて大丈夫なようにできていた

          あの人だったらどうするかな、と基準にできる人がいる

          迷った時、自分に聞いてみる。 あの人ならどう判断するだろう。 自ずと答えは出る。 先日、その方と話をする時間が取れた。 「人生、これで良かったと思いますか」 受け方によっては失礼とも取れる質問をしていた。(相手はかなり年上) ただ、その答えが肯定的なものであることを確信していたため、頭に浮かぶと同時に言葉にしてしまっていた。 「この人生で良かったと思っている。でも満足はしていない」 良かったと思っている、で終わりにしないところが、その人らしいと

          あの人だったらどうするかな、と基準にできる人がいる

          『14歳の栞』に救われる過去の自分がいた

          ただの日常なのに、その全てが特別だったことに今なら気付ける。甘くて、酸っぱくて、みずみずしいオレンジを絞ったような日々。 また明日、なんて約束がいらなかった頃の記憶が蘇る。 『14歳の栞』を観た。 とある中学校のひとクラス全員を密着したドキュメンタリー映画。 それぞれに悩み、もがきながら自分を模索していく35人の姿を映し出している。 特に印象に残る子がいた。 小学生の頃、仲間から孤立してしまった経験を語る女の子。 「人間なんて裏表あるし、心から

          『14歳の栞』に救われる過去の自分がいた

          のどこしの良いうどんのような文章がつづられている本に出会った

          『夢に迷って、タクシーを呼んだ』 燃え殻さんの最新刊を私なりに一言で表してみると、このようなタイトルになった。 使われている言い回しやリズムが心地よく、するすると入ってくる。消化がよい。 内容は、不条理な世の中で這いつくばって日々なんとか生きてます感であふれている。 (たぶん比喩になることなく本当に這いつくばっていると思う) 表面をなぞる文章ののどごしの良さと、実となる内容部分に漂っている悲壮感のギャップが芸術的。 読んでいるうちに、まるで神様のような視点になってく

          のどこしの良いうどんのような文章がつづられている本に出会った