『14歳の栞』に救われる過去の自分がいた
ただの日常なのに、その全てが特別だったことに今なら気付ける。甘くて、酸っぱくて、みずみずしいオレンジを絞ったような日々。
また明日、なんて約束がいらなかった頃の記憶が蘇る。
『14歳の栞』を観た。
とある中学校のひとクラス全員を密着したドキュメンタリー映画。
それぞれに悩み、もがきながら自分を模索していく35人の姿を映し出している。
特に印象に残る子がいた。
小学生の頃、仲間から孤立してしまった経験を語る女の子。
「人間なんて裏表あるし、心からの信頼なんて出来ない」という内容を、ごまかしを含めたような笑顔で語る。
それでも、放課後の帰り道や球技祭ではみんなと仲良くしているように見えた。
「本当はみんなと友だちになりたい?」
インタビュアーからの直球な質問に一瞬ためらう。
どうだろう…。そんな感じで答えていた。
そこでインタビュアーがさらに押す。
「でも、もし出来たら本当はもっと心を通わせて、みんなと友達になりたい?」という具合に。(曖昧です。ただ、重ねて同じ質問していたことは覚えています。)
すると彼女は、またあの少しごまかそうとする照れ笑いのような表情を浮かべて答えた。
「うん。本当は、友だちになりたい」
このドキュメンタリーの企画がなかったら、一生言葉にしていなかったかもしれない。
表現する機会にめぐり会えなかったかもしれない、奥底にある強い願望。
この一言を引き出したインタビュアーに、自分が救われるような気持ちになった。たとえそれが少しばかり強引な誘導であっても。
きっと彼女は求めていたから。そう導いてくれる大人を。
120分を通して、35人ひとりひとりの中に、自分だったかもしれない小さなかけらを見つけていく。
自身に重ね合わせることで、どんな過去の自分も認めてあげられる気がした。今日、それが出来た。
長年の月日を経て、こんな日が来るなんて思ってもいなかった。
ありがとう。
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