『存在の耐えられない軽さ』恋愛小説の名手・島本理生が推す、世界で愛される哲学的傑作
重さは本当に恐ろしいことで、軽さは素晴らしいことであろうか?
結婚したりしなかったり。
人生には、いろんな選択肢がありますが。
何に重きをおくか、何処に身をおくか。
その思想と現実が重ならないと、本人にとっては悩み多き人生になるんだな。そんな風に考えさせられた本のご紹介です。
1984年、チェコの作家ミラン・クンデラが発表した『存在の耐えられない軽さ』。恋愛小説の傑作と言われていますが、その頭で読むと、ぜったい完走できない!
なんか「プラハの春」とか歴史的な要素も入っていて、全体的に難解すぎるもん。
……って書くと、「は?おすすめじゃないの?」って思いますよね。
「難解=つまらない」ではないのです。個人的には、愛だけでなく、人生についても新しい価値観をもらえた1冊だったので、おすすめしようかなと。
「愛についての哲学本」として読むと、とっても楽しいよ。
『ファーストラヴ』や『ナラタージュ』で知られる恋愛小説の名手、島本理生さんが、テレビ番組「王様のブランチ」でおすすめしてました。2年位前だけど。
関係ないけど、この表紙おしゃれですよね。好き。
読む前に抑えておくべきポイント
『存在の耐えられない軽さ』、小説のかたちをとっていますが、ちょっと構成が変わっていて。Amazonのレビューを見たら「とっつきにくくて離脱した!」的なコメントがいくつかあったので、説明しておきます。裸一貫で突撃すると、こんらんするよ!
まずページをめくると、「私」がとつぜん、存在の「軽さ」と「重さ」についての考察をし始めます。
もっとも重い荷物というものはすなわち、同時にもっとも充実した人生の姿なのである。重荷が重ければ重いほど、われわれの人生は地面に近くなり、いっそう現実的なものとなり、より現実味を帯びてくる。
徳川家康みたいなこと言ってる。「人の一生は、重き荷を負うて遠き道をゆくがごとし」。
で、その考察をより身近に想像しやすくするため、物語がはじまるの。でも、この「私」は物語に一切関与しません。物語の途中で現れては、「ここでこの2人はね……」と解説する人。著者ですね。
物語の主人公は、トマーシュという男性。
恋人のテレザ、そして愛人のサビナ。この3人の三角関係から、どんどんお話が進んでいきます。
この構成さえ頭に入っていれば、物語に入り込めるはず!
「とっつきにくいなー」で、気になっていた本を読むのをやめちゃうのはもったいないと思うので。本は、「一か所でも心に残る文章があれば、自分の糧になった!」と思う派。
わたしが印象に残った文章を載せて終わりにします。ぜひぜひ。
人間というものはあらゆることをいきなり、しかも準備なしに生きるのである。それはまるで俳優がなんらの稽古なしに出演するようなものである。しかし、もし人生への最初の稽古が人生そのものであるなら、人生は何の価値があるのであろうか?
■この本が気に入った方には、こちらもオススメ
愛は技術であり、知力と努力で手に入れるもの!
愛についての教科書的1冊。長年愛されるベストセラーです。
紹介記事も書いているので、ぜひ読んでみてください~。ではでは。
■他にも、おすすめ揃ってます!
・『実存主義とは何か』J・P・サルトル――戦後、若者から絶大な支持を得た実存主義を説いた名講演が収録された1冊
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