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『実存主義とは何か』不安との向き合い方を学べる哲学読本!哲学者サルトルの名講演を収録した1冊

表紙からあふれ出る教科書感。
その表紙の印象を裏切らない、小難しい内容。

しかし、だからこそ、サクッと読めるよう大衆化された哲学読本では得られない、心に根差すような気づきがあると思うのです。

わかりやすくて好きだけどね、「ニーチェに学ぶ!生き方のヒント」みたいな本。わたしもよく読む。でも、できればその出典になっている本を、自分でかみ砕きながら理解したくないですか。誰かが介在しているということは、多かれ少なかれ、その人の解釈が入るだろうし。

ということで、ちょっと小難しい本ですが、お時間のある方はぜひ読んでみてほしい。今日の1冊は、フランスの哲学者サルトルによる『実存主義とは何か』です。


戦後、自由と不安に揺れる若者に響いた、サルトルの言葉


「実存主義」には後ほど触れるとして、まずは、著者のサルトルが活躍した時代背景のお話を。

サルトルの思想が一躍脚光を浴びたのは、第二次世界大戦が終結した1945年のことでした。

当時の若者は、終戦による自由を感じる一方、次第に明るみに出てきた戦争の惨劇に、不安も感じていました。ナチス・ドイツによるユダヤ人の大量虐殺。アメリカ軍による、広島・長崎への原爆投下。

若者たちは、人類が自らの手で破滅できることを知り、未来に対する希望が持てなくなっていたのです。

そこに響いたのが、サルトルの言葉。

もしも人類が生存し続けていくとするなら、それは単に生まれてきたからというのではなく、その生命を存続させようという決意をするがゆえに存続しうるということになるだろう(1945年『対戦の終末』より)

「未来は決定されたものではなく、自分の決意で変えられるもの」

そう感じさせるこのメッセージは、未来が見えない若者たちの心をグッとつかんだのです。

この本には、1945年、終戦直後に行われた『実存主義とはヒューマニズムである』という講演が収録されています。会場に入りきらないほどの人が集まったこの講演は、フランスのメディアに「文化的な事件」として取り上げられました。

世界的に不安が漂う今だからこそ読みたい1冊


さて、内容は読んで自分なりに解釈してもらうとして、実存主義のポイントとなる考え方は、「実存は本質に先立つ」というもの。

実存、つまりこの世に生まれた瞬間に、本質(性質)が決まっている人間なんていないよね、って考えに基づいています。例えば、医者の家系だからといって、医者として生まれてくる子どもはいない、っていう。

本質は、実存したあとに自分が選び取っていくもの。「人間はおのれの運命の主人である」から、主体性を持って、未来に自分を投げ出そう。それゆえ、言い訳は無用だけど、自由ってことだよ!というのが、サルトルの実存主義に対する、わたしなりの解釈です。

厳しいけれど、実は底抜けに楽観的なこの考え方、わたしは好きです。

いろいろ不安がつきない毎日ですが、世界がどんなにコロナに侵されようと、どう生きるかは自由って思えると、不安な気持ちは軽くなるかも。



「はぁ?!もっとわかりやすく言ってよ!」とプンスカしつつ、スマホ片手に用語を調べつつ、小難しい本を読むのも、たまにはいいものです。

ぜひ、一緒にプンスカしましょう!



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