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アンビバレンス

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どんな形容詞も邪魔だ。
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2017年1月の記事一覧

初めて自動販売機でコーヒーを買った。本当はあの人と行きたかった、映画のお供に。自販機にお世話になった受験生時代は美味しいと思っていなかったんだ。あれから時が経って、好きなものが増えた。あたたかくて甘くて苦いコーヒーとか。あの人みたいだ。ブラックだったらもっと理性で離れられるのに

喉仏の一寸上に小隕石があるように喉が痛くて、言葉が出せない理由がそこにある、と処理できたらどんなにいいだろう。健康体、といったとき、僕の体と心は鮮やかに分断されているに違いないんだ。

自身の不甲斐なさについて

扉を開けた途端絶対逃さないぞと笑顔満載のパキスタン人から無言で必死の圧力を受け諸々の事情を把握した後、パキスタン料理食べ放題980円では生活が回るはずのないことを悟り渇望したわけではなくとも勧められたドリンクも追加料金で頼むくらいの決断は倫理や正義や善を持ち出すまでもなく可能であるのに、しかもそれがさり気ないお洒落で充満した世田谷区下北沢で起こり得るというのに、
星空ほどありふれた彼女の言葉に対し

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不在が色濃い。

理性の二律背反を実感する瞬間とは、好きな人に 君はいい友達だね、と告げられるときではないでしょうか。

#短文 #恋

この詩集、言葉で表すには難しくて雲の上で宙返りするみたいな感覚になるよ、と言いかけたのがすべて引っ込んでしまった。お気に入りの詩集をプレゼントした瞬間、じゃあ今度感想言うわ、と笑顔で見つめ返されたら、今度を楽しみに待つしかないじゃないか。

#短文 #恋 #詩

透明人間になれるなら成人式に行ってもいいと片隅で思う程度の私は、惹かれる相手も当時成人式に行かなかったと聞いて嬉しい。着付けで人に身体を触られるのが嫌だからとの理由を知って、自分もその人に触れてはいけない気がするのは哀しい。

おめでたくなくてもいい。

誕生日おめでとう、と素直に言えない。

それは私自身が言ってほしいと思って育ってこなかったからだろうけれど。
なぜなら、誕生日が夏休み真っ只中だから。日にちも曜日も忘却の彼方にいる頃、自分ですら知らなかった誕生日のお告げを他人からくらうと、只々驚き、不信感にも似た緊張を得る。今日がその日だという感覚は、まるでない。

自分がそんなであるから、誕生日は祝うものだ、という概念がない。きれいに絞り出

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愛が旅であるから

愛が旅であるから

東京なのか神奈川なのかわからないな、と二年前にセンター直前対策で塾へ通っていた当時も思っていた。蒲田は、東京都大田区であるらしい。駅で降り立ったときの、鋭い曲線を描くモニュメントと思わず入り浸りたくなる商店街は、見覚えがあった。忙しい受験生の記憶にも残っていたのだ。

もつ刺しが人気の居酒屋で女子大生らしき人物が一人で生ビールとポテサラしか頼まない光景は、滑舌が悪いといちいち叱られている新人店員に

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彼女に気持ちを伝えたい

#Google

僕の隣に君がいてくれたら至上の幸福だ、なんて、嘘じゃなかったんだけどなあ。だけどやっぱ、隣にいるだけでも足りないって贅沢過ぎるよ、玉ねぎみたいだ。どれだけ触れても皮を剥いていっても、これが本物だ本質だなんて見つけられない。空っぽになる前に妥協してみたいね、そんなことができるなら。